内航海運の活性化による海上物流システムの高度化について(答申)

交通政策審議会,内航海運の活性化による海上物流システムの高度化について(答申),平成15年12月11日

目次

目 次
○ はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
1. 内航海運の役割と社会的意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
(1)物流の効率化
(2)環境負荷の低減
(3)労働の効率化
2. 内航海運を巡る課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
(1)物流効率化の要請の高まり
(2)環境保全に対する要請の高まり
① 地球温暖化の防止(CO2 の排出抑制)
② シングルハルタンカーに対する規制強化
③ 船舶からの排出ガス規制
(3)競争制限的な市場構造
(4)船舶建造の困難化と老朽船比率の上昇
(5)船員の減少と高齢化の進展等
3. 内航海運活性化方策の基本的考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
(1)競争的市場環境の整備
(2)社会的規制の見直し
(3)適切な事業基盤の形成
(4)新技術の開発・普及
4. 具体的な施策の展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
(1)競争的市場環境の整備
① 参入規制の緩和等
② 公正かつ透明性の高い市場機能の整備
(2)社会的規制の見直し
① 運航管理制度の導入
② 船員の乗組み体制の見直し
③ 海上労働力に適性かつ円滑な移動の確保
(3)適切な事業基盤の形成
① 船舶共有制度を活用した物流高度化船の建造促進
(4)新技術の開発・普及
① 次世代内航船(スーパーエコシップ)
② 高度船舶安全管理システム
③ 環境対応型の新技術
○ おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

以下、管理人用

〇 はじめに
内航海運は、国内貨物輸送の約4割を担う基幹的輸送モードとして、我が国の経済活動と国民生活に重要な役割を果たしている。
バブル経済崩壊後の長引く景気の低迷、経済のグローバル化による国際競争の激化等の中で、国内物流についてもその効率化が強く要請され、我が国経済の活性化や産業競争力の向上を図る重要な課題の一つとなっている。また、「京都議定書」の温室効果ガス削減目標を達成すべく地球温暖化対策の推進が急務となっており、市街地等における大気汚染問題への対応を図る上からも、自動車から海運・鉄道へのモーダルシフトを促進する等環境対策の強化がこれまでにも増して強く求められている。
物流システムは、各輸送モードが連携を図りつつ、こうした経済・社会の要請に的確に応えていく必要があるが、内航海運は、環境負荷が小さく、輸送効率に優れた特性を持つ輸送モードであり、多様化する物流ニーズに対応した高度かつ効率的な輸送サービスを構築し、その競争力を高めることによって、物流効率化、環境保全等の要請に積極的に貢献し、我が国経済・社会の発
展に一層大きな役割を果たしていくことが期待される。
こうした状況の中、平成15年5月29日に国土交通大臣から交通政策審議会に対し「内航海運の活性化による海上物流システムの高度化について」(諮問第21号)の諮問が行われた。当審議会では、このような大きな役割が期待される内航海運を活性化させるための方策について幅広く検討し、①競争的市場環境の整備、②社会的規制の見直し、③適切な事業基盤の形成及び④新技術の開発・普及の4つを柱として今後総合的にとりくむべき施策の展開について、以下のとおり審議の結果をとりまとめた。
1.内航海運の役割と社会的意義
内航海運は、国内貨物輸送量(トンキロベース)の約4割を担うとともに、とりわけ鉄鋼、石油、セメント等の産業基礎物資の輸送の約8割を支える基幹的輸送モードとして、四方を海に囲まれた我が国における経済活動及び国民生活に重要な役割を果たしている。
その社会的意義について整理すれば、以下のとおりである。

(1)物流の効率化
船舶は、本来「大量の物資を長距離にわたり低廉な価格で輸送することができる」といった特質を持つ交通手段であり、内航海運が、高度化・多様化する物流ニーズへの対応を図りつつ、その特質を十分に発揮して、国内物資の幹線輸送を担い、また、自動車輸送からの転換を促進することによって、物流を効率化し、物流コストの低減を図ることができる。
なお、内航海運は、自動車交通量の抑制により、道路交通渋滞の緩和や

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自動車事故の低減に寄与する。また、陸上交通機関が遮断されるような大規模災害発生時等における緊急輸送手段としても大きな役割を果たすことが期待される。

(2)環境負荷の低減
内航海運の二酸化炭素(CO2)排出原単位(1トンの貨物を1km 運んだ場合の CO2排出量を炭素換算した重さ)は、営業用普通トラックの約5分の1にとどまっている。このため、内航海運へのモーダルシフトを促進することにより、我が国の CO2 排出量を削減し、地球温暖化の防止に貢献する。
また、自動車走行量の削減と交通渋滞の緩和により、市街地等における自動車からの窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、粒子状物質(PM)等の大気汚染物質の排出抑制に寄与する。

(3)労働の効率化
内航海運の従業員1人当たりの輸送トンキロは、自動車を大幅に上回り、約37倍の輸送効率となっている。このため、内航海運を輸送手段として用いることにより、労働力を大幅に節約することが可能であり、少子高齢化の一層の進展がもたらす将来の労働力不足に対する有力な解決策の一つとなる。
物流システムは、各輸送モードが連携を図りつつ、経済・社会の要請に的確かつ柔軟に対応していく必要があるが、内航海運は、このように環境負荷が小さく、輸送効率に優れた特性を持つ輸送モードであり、引き続き物流の大動脈として21世紀の我が国経済・社会の発展に寄与していくことが求められている。

2.内航海運を巡る課題
今後とも内航海運が我が国経済・社会に果たすべき役割は大きいが、現在、内航海運を巡っては、以下のような課題が存在している。

(1)物流効率化の要請の高まり
長引く景気の低迷、経済のグローバル化の進展に伴う国際競争の激化等を受けて、内航海運の主要荷主である鉄鋼、石油、セメント等の産業基礎物資の製造企業においても、近年、合併や事業提携による事業再編の動きが活発化している。こうした中で、産業界からの物流効率化の要請が一層高まっており、我が国経済の活性化や産業競争力の向上を図る上で重要な
課題の一つとなっている。

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(2)環境保全に対する要請の高まり
①地球温暖化の防止(CO2の排出抑制)
地球温暖化の防止を図るため、平成9年12月に採択された「京都議定書」では、我が国は、2008年から2012年までの温室効果ガスの平均排出量を、1990年比で6%削減することとされている。しかし、2001年現在、我が国の温室効果ガスの排出量は、1990年比5%増となっており、中でも23%増の運輸部門における CO2 の排出量削減が大きな課題となっている。
このような状況を踏まえ、地球温暖化対策推進本部において平成14年3月に決定された「地球温暖化対策推進大綱」では、内航海運分野について370万トンの CO2 排出削減が求められており(内航海運の輸送分担率:1998年41%→2010年44%、モーダルシフト化率
(500km 以上の国内雑貨輸送に占める鉄道・内航海運の割合):1998年43%→2010年50%超)、今後5年から10年の間にこの目標を達成するための対策を強力に推進することが必要となっている。
②シングルハルタンカーに対する規制強化
タンカーによる油流出事故を防止し、海洋環境保全を図るため、平成13年4月、MARPOL条約附属書Ⅰが改正され、シングルハルタンカーのダブルハル化、いわゆるフェーズアウト(段階的排除)を促進することとされたところである。
さらに、平成14年11月に発生したプレスティージ号事故を契機に、IMO(国際海事機関)においては、シングルハルタンカーのフェーズアウトの更なる促進について、本年12月に条約の再改正が行われたところであり、内航海運においても、このような動向を踏まえ、的確な対応を図ることが必要となっている。

③船舶からの排出ガス規制
船舶からのNOX、SOX等の大気汚染物質の排出を規制するMARPOL条約附属書Ⅵの発効が迫ってきており、国土交通省においても、次期通常国会において同附属書の批准・国内法制化を行うべく準備を開始したところである。さらに、本附属書を検討してきたIMO(国際海事機関)では、附属書発効後5年を目途に更なる規制値の見直しを行うことが決議されており、船舶自体に係る環境対策についても着実に推進することが求められている。
(3)競争制限的な市場構造
内航海運、とりわけ産業基礎物資輸送の市場構造は、特定荷主への系列

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化、元請・下請の多重的な取引関係等ピラミッド型となっている。こうし た市場構造は、市場の閉塞性・硬直性を高め、新規参入や事業拡大等事業 者の多様な事業展開による市場の活性化や様々な輸送ニーズに対する迅 速・柔軟な対応を困難にしている面があり、今後、内航海運が物流効率化 等の社会の要請に応え、全体として活性化していくためには、自由で多様 な事業活動を促すより競争的な市場構造へと転換を進めることが大きな 課題となっている。

(4)船舶建造の困難化と老朽船比率の上昇

内航海運事業者のほとんどが中小企業である一方、船舶の建造には多額 の資金を要し、事業遂行のための投資負担は、極めて重いものとなってい る。(内航海運事業者のうち中小企業の占める割合(平成14年度末)は、 99.3%であり、全産業平均の中小企業比率 99.7%と大差はないが、内航船 舶貸渡事業者の固定資産比率及び負債比率(平成13年度)は、全産業平 均の5倍、トラック事業者の4倍と大きい。) このような投資負担の重さに現下の厳しい経済情勢という悪条件が重 なり、物流効率化等の要請に的確に応え得る近代化・高度化された船舶の 建造は行われにくい状況となっている。また、償却期間を超えて長期間船 舶が使用される傾向となっており、内航船舶全体に占める老朽船(船齢 14年以上の船舶)の比率は、近年上昇に転じている(隻数ベース:平成 11年度末44%→14年度末48%、総トン数ベース:平成12年度末 25%→14年度末27%)。 このような状況が続くとすれば、内航海運の活性化による物流の効率化 や環境の改善が阻害されるばかりでなく、船舶事故とこれによる海洋汚染 の発生も懸念されるところであり、内航船舶の着実な代替建造を促進する ことが必要である。

(5)船員の減少と高齢化の進展等

内航船員数は、平成14年現在約3万3千人であり、過去10年で約 40%減少している。その年齢構成も40歳以上の船員が全体の72%を 占める逆ピラミッド型となっており、将来的な船員不足が懸念される。加 えて、物流効率化や技術革新の進展に伴い、優良な船員を安定的に確保す ることが求められている。 このため、若年船員の雇用の促進をはじめとする雇用対策、船員の質を 向上させるための教育・育成、さらには適正な労働環境の整備に一層の取 組を行うことが必要である。

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3.内航海運活性化方策の基本的考え方
内航海運を活性化し、その社会的役割の十分な発揮を促進するためには、内航海運を巡る現下の情勢や課題を踏まえ、以下の4つを柱として総合的な取組を行う必要がある。
なお、モーダルシフトの促進のためには、港での積替えや端末輸送を含む全体の輸送時間、輸送コスト、利便性等を視野に入れた競争力の向上が必要であり、各事業分野の高度化・効率化と連携の強化について、それぞれ取組を推進することが期待される。
(1)競争的市場環境の整備
内航海運活性化のためには、営業戦略や情報化戦略、他の輸送モードとの連携、新たな市場の開拓等、事業全般にわたる民間活力の一層の発揮が不可欠であり、公正かつ透明性の高い競争的な市場環境を整備することによって、各事業者の創意工夫に基づく多様な事業展開を促進し、輸送コストの低減、輸送サービスの質の高度化や革新的サービスの創出等を図ることが必要である。
このため、参入規制の緩和等の事業規制の見直しを行うとともに、取引関係や契約関係の適正化・明確化等により公正かつ透明性の高い市場機能を整備していくことが必要である。
(2)社会的規制の見直し
輸送サービス高度化等の基礎的条件は、安全かつ安定的なサービスの提供であり、参入規制の緩和等により事業者間の競争を活性化することと併せ、的確な安全確保のための仕組みを構築することが必要である。
また、近年の技術革新の進展、経済社会情勢の変化等に対応して、安全運航の確保を前提としつつ、船舶の性能・構造要件や船員の乗組み体制等に関する規制について、柔軟かつ適切に見直しを行っていくことが必要である。
さらに、良質な輸送サービスの提供には優良な船員の安定的確保が必要であり、船員の労働の保護とその雇用の安定を図りつつ、海上労働力の適正かつ円滑な移動を確保するため、船員の労務供給事業等に関する規制の見直しを行っていくことが必要である。
(3)適切な事業基盤の形成
内航海運が、物流の効率化や安全性の向上、環境負荷の低減等の荷主をはじめとする社会の要請に的確に応えるためには、事業の基本である船舶について、これら要請に対応し得る近代化・高度化された船舶へと適切に代替を進めることが必要である。
このため、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の船舶共有建造制度等を活

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用し、事業者規模に比し資本費負担の過大な内航海運事業者の船舶建造を積極的に支援することによって、内航海運の適切な事業基盤を形成していくことが必要である。

(4)新技術の開発・普及
内航海運活性化に求められる低コストで質の高い輸送サービス、安全で環境に優しい輸送サービスを実現させるためには、これらの諸課題をブレイクスルーする新技術の開発・普及が肝要である。
このような新技術の開発には相応の技術力と初期投資を必要とすることから、経済的な効果や安全・環境への影響等を明確にしつつ、官民が協力して推進するとともに、その普及に当たっては、導入のインセンティブとなるような支援スキームと技術革新に対応した規制の見直し等の環境整備を行うことが必要である。

4.具体的な施策の展開
内航海運の活性化を図るため、内航海運活性化方策の基本的考え方に基づき、以下の施策の実施に早急に取り組むべきであり、その着実な推進が期待される。
(1)競争的市場環境の整備
①参入規制の緩和等
ⅰ)参入規制の許可制から登録制への緩和
内航海運業への参入については、これまで、業界秩序の維持・安定に重点を置き、一般の需要への適合性、基準船腹量(3隻以上等)等を要件とする許可制が行われてきた。これにより事業者数の大幅な減少(許可制が導入された昭和41年当時と比較して約7割減少)や船舶の大型化(許可船舶の平均総トン数が昭和46年度末と比較して約400総トン増加)など一定の成果を上げ、内航海運市場の状況は大きく変化してきている。一方、このような施策の長期の実施は、自由な新規参入や規模拡大の障害となり、競争制限的な市場構造が長期にわたって温存されることとなった結果、かえって業界の活性化や中小零細性の解消の支障となってきた面がある。
こうした状況を踏まえ、事業意欲のある事業者の新規参入等による内航海運の活性化を図るため、参入規制を現行の許可制から適切な資金計画、確実な船員配乗計画を有すること及び船舶を1隻以上所有することを要件とする登録制に緩和することが適当である。
ⅱ)事業区分の廃止
これまでは、小規模オペレーターの乱立による過当競争、安定輸送

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の阻害等を防止するため、内航運送業(オペレーター)と内航船舶貸渡業(オーナー)の区分を行い、内航運送業者のみが荷主と運送契約を締結できる(貸渡業者は船舶を運送業者に貸し渡すのみ)こととされてきた。しかし、現在の内航海運の競争制限的な市場構造に鑑みると、内航海運の活性化のためには、このような事業区分にとらわれず、意欲ある事業者の創意工夫による多様かつ活力ある事業展開を促進することが必要であり、オペレーター・オーナーの事業区分を廃止し、全ての内航海運業者に荷主との運送契約締結を認めることとすることが適当である。
ⅲ)適正船腹量・最高限度量制度、標準運賃・貸渡料制度の廃止
現在、国土交通大臣は、毎年度適正船腹量を定め、これに照らして著しく船腹量が過大になるおそれがある場合には船腹量の最高限度を設定できるとされているが、競争的な市場環境の整備を図るため、これを廃止することが適当である。また、同様に、標準運賃・貸渡料の設定ができる制度も廃止することが適当である。
②公正かつ透明性の高い市場機能の整備
ⅰ)適正な取引環境の整備
本年6月の下請代金支払遅延等防止法(下請法)の改正(平成16年4月施行予定)により、オペレーター・オーナー間の取引については下請法の適用対象となることとされており、公正かつ透明性の高い市場の構築を図る観点から、契約に関する書面の作成・交付等取引の適正化に資することが期待される。
また、荷主・オペレーター間の取引については、公正取引委員会において、独占禁止法の運用強化(特殊指定の活用等)が検討されており、内航海運業界の取引実態も踏まえ、公正・透明な市場機能を整備するため適切な措置が講じられるよう、国土交通省と公正取引委員会との間で十分な調整を行うことが必要である。
ⅱ)運送約款規制の導入
内航海運市場の透明性の向上及び利用者保護を図るため、不特定の者を荷主とする船種(RORO船、コンテナ船)の運航事業者に対し、運送約款の作成・届出を義務付けることが適当である。
ⅲ)営業報告書の提出
行政庁の適切な政策判断と説明責任の確保に資するため、内航海運業者に対し営業報告書の提出を義務付けることが適当である。
なお、営業報告書の具体的内容については、事業者の負担軽減のため必要最低限の内容とする必要がある。
(2)社会的規制の見直し

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①運航管理制度の導入
現在、内航海運業法上、輸送の安全に関する規制は一切行われていないが、参入許可制の下、新規参入事業者について、厳しく事業者としての適格性の審査が行われてきたところである。しかし、今後、許可制を登録制に緩和し、必要最低限の事項のみを審査することとするに当たっては、安全かつ安定的な輸送サービスの提供の観点から、運航管理体制の明確化等輸送の安全確保のための事後チェックの仕組みを構築することが必要である。
このため、船舶の運航を行う事業者に対し、運航管理規程(仮称)の作成・届出、運航管理者(仮称)の選任・届出を義務付けるとともに、輸送の安全確保のための事業活動の是正措置命令制度を導入することが適当である。

②船員の乗組み体制の見直し
船員の乗組み体制は、船員法における労働時間規制を満たす定員や航海の安全の確保のために必要な員数、船舶職員法における船舶職員配乗基準等を考慮して定められている。
近年における内航海運を取り巻く状況の変化に的確に対応し、内航海運の持続的発展と活性化を図るため、次のような見直しを行うことが適当である。

ⅰ)労働時間規制等の見直し
労働時間規制の合理化・弾力化を図るとともに、多くの船舶に見られる船員の恒常的な長時間労働の実態を是正するため、1日8時間労働、週平均40時間労働という現行規制は維持しつつ、新たに労使合意による時間外労働を認めることとし、総労働時間は、時間内労働と合わせて1日当たり最大14時間及び1週間当たり最大72時間までとする(ただし、船舶の安全航行を確保するための臨時の労働は、この枠外とする。)。
また、安全運航の確保のため必ず船舶に乗り組ますべき安全最少定員に加え、労働時間規制の遵守を確保するため、船員労務官の監査の目安として通常船舶に乗り組む総人員に関して標準定員を設定し、標準定員を割り込む乗組み体制の船舶については、必要に応じ、頻繁な監査を行う。さらに、監査情報照会システムの活用等により、労働時間の遵守状況等についての船員労務官の事後チェック体制を強化する。
このほか、雇入契約の公認制について、申請者の負担軽減を図るため、これを届出制に緩和するとともに、電子申請化を推進する。

ⅱ)配乗基準の弾力化等
航海当直を担当する乗組員の海事に係る知識・能力を向上させ、船舶の航行の安全を確保するため、船橋の航海当直を担当する乗組員は、

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最低1名を海技免状受有者とする。
また、船舶技術や業務実態を踏まえて配乗基準を弾力化するため、航海当直体制の維持等の航海の安全の確保に関して支障が生じず、労働時間規制についても遵守できると認められる船舶については、甲板部乗組員と機関部乗組員の兼務を認めることとする。
さらに、船舶職員に係る配乗基準につき、沿海区域と近海区域の間に船舶安全法上の限定近海に相当する航行区域(沖縄関係は除く。)に係る配乗表を新たに設け、資格要件等を緩和する。

③海上労働力の適正かつ円滑な移動の確保
ⅰ)常用雇用型船員派遣事業の制度化
近年の内航海運をはじめとする海上運送事業者においては、物流効率化の要請等が高まる中、予備船員まで含めた船員を自社で雇用、訓練することが経営的に困難な状況にあることから、需給に応じて必要な乗組員を確保する場合には、事業者間において一々船員を転籍させる等の煩雑な対応が行われており、船員にとっても雇用の安定を確保することが困難な事態となっている。また、船舶の航行の安全のためには、船員に対する技能の向上等のための教育訓練が不可欠であるが、企業間を船員が移動する状況にあっては、教育訓練を行うべき企業が分散することにより、結果として船員にとって十分かつ体系的な教育訓練を受けることができないということも懸念される。
こうした問題点を解決するためには、船員の労働保護を図りつつ船員の移動を適正かつ円滑に実施できることを可能とすることが適当である。したがって、具体的には、船員の雇用の安定の確保と教育訓練を適切に実施する観点から、船員の雇用関係が常時雇用の形態であって供給元に一元的にある場合にのみ派遣事業として認めることとし、あわせて、労働保護を図るために、派遣船員の労働に係る派遣元と派遣先の責任関係、労働条件等を明確にすること等を内容とする船員職業安定法の改正を行い、船員派遣事業を新たに制度化することが適切
である。

ⅱ)無料船員職業紹介事業の拡充
我が国の海上運送事業者が厳しい経営環境に直面している中、海上運送事業における新規学卒者等の若年船員の雇用は減少してきており、将来的な船員不足が懸念されている。船員教育を行う学校等については、その目的が船員を養成し海運界に送り出すことにあることに鑑みれば、自ら船員職業紹介事業を実施できるよう措置することは、新規学卒者等の就職の促進により将来の船員不足の解消に資する観点から、極めて有効である。
そのため、船員職業安定法の改正を行い、現在、国以外には船員や

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船舶所有者を代表する団体等に限られている無料船員職業紹介事業を行うことができる者として、これらの学校等を含めることが適当である。

(3)適切な事業基盤の形成
①船舶共有建造制度を活用した物流高度化船の建造促進
長引く景気の低迷等により船舶の建造が困難化する一方、内航海運に対する物流効率化、環境保全等の社会的要請はより一層高まっており、現状のままでは、これらの課題に十分応えることは困難である。このような状況を踏まえ、一般の貨物船等に比べ船価は高額となるものの政策効果が大きい環境対策及び物流効率化に資する船舶への代替建造を強力に促進する必要があり、そのための公的支援を行っていくことが必要である。
このため、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が共有建造を行う以下に掲げる船舶を「物流高度化船」と位置付け、支援措置を講ずることが適当である。

ⅰ)CO2削減による環境対策に寄与する船舶

イ)ロールオンロールオフ船、長・中距離フェリー、コンテナ船、自動車専用船のうち、被代替船と比べて積載能力又は速力が増加する船舶等
ロ)従来の船舶と比べて CO2低減効果のある船舶

ⅱ)海洋環境保全対策に寄与する船舶

ダブルハルタンカー等二重船体構造を有する船舶

ⅲ)物流効率化対策に寄与する船舶

被代替船と比べて積載能力又は速力が増加し、労働負荷の軽減にも資する船舶等

また、以上の支援措置と併せて、引き続き、鉄道建設・運輸施設整備支援機構において、内航海運事業者の技術レベルに応じた最新技術の導入等の技術的支援を積極的に進め、物流高度化船の建造を技術面からも促進することが必要である。

(4)新技術の開発・普及
①次世代内航船(スーパーエコシップ)
次世代内航船(スーパーエコシップ)は、高効率舶用ガスタービンエンジン、電気推進式二重反転ポッドプロペラ、これらに対応した画期的新船型等の革新的技術を取り入れた新形式の内航船であり、既存船と比べて、

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・環境負荷の大幅な低減(CO23/4、NOx1/10、SOx2/5)
・経済性の向上(燃料消費量約10%低減、貨物積載量約20%増大)
・大幅な省力化(船上メンテナンスフリー、真横移動可能)
・船内労働環境の改善(騒音1/100)

等の優れた特徴を持っている。
このようにスーパーエコシップは、物流の効率化、環境負荷の低減等に画期的な効果をもたらすことが期待される船舶であり、今後の内航海運を担う主力船舶の一つとして着実に開発・普及させていくことが必要である。
本船は、平成17年度中の開発、実用化・普及を目指し、平成13年度から研究開発が進められているところであり、16年度中に実証試験を開始するなど、早期の実用化が強く期待される。
また、次世代内航船としての普及のためには、既存船に対する経済面での優位性の確保が重要であり、既存船より良質な燃料を使用することによる燃料費の増加等についても、本船の特徴を活かしてランニングコストを含むトータルコストの低減を実現するとともに、導入・普及のインセンティブとなるような支援を行っていくことが必要である。
このため、実証試験の実施と併せて、その結果を踏まえつつ、船員の乗組み体制や各種設備の安全基準等の適切な見直し、船舶共有建造制度の拡張的な適用、船価の低減等について検討を進めることが必要である。

②高度船舶安全管理システム
高度船舶安全管理システムは、ITを活用して船舶の推進機関等の状態を陸上から遠隔監視・診断し、適切な陸上支援を行うことによって、船舶の安全管理の高度化・最適化を図るシステムである。
本システムの構築により、

・機関トラブルの未然防止等による輸送の信頼性、効率性の向上
・システマチックな安全管理体制の確立による安全性の向上、安全管理業務の負担軽減
・管理業務の合理化(開放整備インターバルの長期化、整備内容の最小化の実現)等によるメンテナンスのコストダウン

等の効果が期待され、既存船を含む内航船の安全性・信頼性・効率性を飛躍的に向上させることが期待される。
本システムは、平成16年度中の実用化を目指し、平成13年度から研究開発が進められているところであり、早期の実用化に向けて引き続き着実に研究開発を進めることが期待される。
また、本システムの普及が円滑に進むよう、船舶検査や船員乗組み体制の合理化に向けた検討を行い、本システムの効果を最大化し得る環境を整備していくことが必要である。

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③環境対応型の新技術
船舶の排出ガスに対する世界的な規制強化の動き、我が国におけるディーゼル車からのNOx、PM等の排出削減に対する取組の強化等に鑑みれば、内航船舶についても、今後更なる環境保全への取組を進めることが必要と考えられる。
こうした中、スーパーエコシップは、既存の内航船と比べ大幅に環境負荷の軽減を図り得るものであり、次世代の内航船として普及が期待されるところであるが、内航海運が全体として環境保全の要請に適切に応えるためには、スーパーエコシップ以外の新造船や既存船等様々な船舶に適用し得る環境対応技術を総合的に確立し、実用化・普及させていくことが重要である。
このため、新たな排ガス処理技術の開発、バイオマス燃料の舶用機関への活用、NOxとCO2を同時に削減する新たなディーゼル燃焼技術の開発等、様々な新技術の実用化に向けた研究を進めるとともに、これら新技術の普及が円滑に進むよう、そのインセンティブスキームについて幅広く検討していくことが必要である。

○ おわりに
諮問第21号に関し審議した結果は以上のとおりであり、当審議会は、今後、国、民間の内航海運関係者が、本答申で示した方向に沿って、内航海運を活性化し、内航海運が期待される社会の要請に十分に応え得るよう、最善の努力を尽くしていくことを期待する。
また、当審議会としても、今後の諸情勢の変化等をみながら、本答申に掲げた内航海運活性化の基本的考え方や具体的施策の展開について、必要に応じ意見を述べていくこととする。

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内航海運業の用に供する船舶の平成15年度以降5年間の各年度の適正な船腹量

船種

現有船腹量

(H15.9.30)

適正船腹量
15年度 16年度 17年度 18年度 19年度
貨物船 1,568千G/T 1,582 1,572 1,570 1,567 1,565
2,609千D/W 2,632 2,626 2,612 2,608 2,604
セメント専用船 431千G/T 399 399 399 399 399
698千D/W 646 646 646 646 646
土・砂利・石材専用船 640千G/T 627 551 428 417 398
1,179千D/W 1,152 1,014 787 767 731
自動車専用船 141千G/T 149 149 149 149 149
114千D/W 120 120 120 120 120
油送船 732千G/T 692 764 665 660 657
1,586千D/W 1,499 1,460 1,441 1,430 1,424
特殊タンク船 205千G/T 200 200 200 200 200
317千D/W 309 309 309 309 309

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