内航海運代替建造対策検討会,『内航海運における代替建造促進に向けた施策の方向性』,2011年3月31日
目次
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
<内航海運の現状と課題> ・・・・・・・・・・・・1
<内航海運暫定措置事業の現状と課題> ・・・・・・1
<代替建造促進対策の検討に向けて> ・・・・・・・1
2.内航海運の位置付けと代替建造促進に向けた視点 ・2
<内航海運の位置付け> ・・・・・・・・・・・・・2
<検討に向けた視点> ・・・・・・・・・・・・・・3
①競争力の強化について
②環境適応型産業への転換について
③新たな需要構造への対応について
④暫定措置事業のあり方について
3.将来輸送量・船腹量推計について ・・・・・・・・5
4.代替建造促進に向けた具体的方策について ・・・・6
<競争力の強化に向けた取組み> ・・・・・・・・・6
課題1-1 オーナーの競争力強化に向けた取組み
課題1-2 内航船のイノベーション推進に向けた取組み
<環境適応型産業への転換について> ・・・・・・・10
課題2 選択される環境産業への脱皮
<新たな需要構造への対応について> ・・・・・・・12
課題3 海外等新たな需要開拓について
<暫定措置事業のあり方について> ・・・・・・・・14
課題4 今後の暫定措置事業のあり方について
5.今後の取組みの進め方について ・・・・・・・・・15
1.はじめに
<内航海運の現状と課題>
内航海運は、我が国経済活動にとって必要不可欠であるとともに、環境に優しく効率的な輸送機関であるが、近年、国内産業構造の変化や世界経済のグローバル化の加速などを受け、産業基礎物資を中心として輸送量が低迷する中で、更なる輸送効率化への対応を求められるなど、その経営を巡る環境は大変厳しくなってきている。
こうした中、内航海運を支える船舶の老朽化が急速に進んでおり、今後も安定的な輸送量を供給し続けるためには代替建造の促進が喫緊の課題となっている。
<内航海運暫定措置事業の現状と課題>
過去、内航海運においては、船腹の過剰状態を適正にするために、新船を建造する際には一定の船腹量の解撤を義務付ける船腹調整事業を実施しており、船腹を解撤する資格について、事実上の経済的価値を有していた。このため、平成 10 年に当該事業を解消した際、当該資格が無価値化する経済的影響を考慮したソフトランディング策として、また、保有船舶の解撤を促し、内航海運の構造改革を促進するため、内航海運暫定措置事業(以下「暫定措置事業」という。)を導入している。これは、船腹調整事業の対象船舶を解撤する際に解撤等交付金(以下「交付金」という)を支払い、その原資として船舶を建造する際に建造等納付金(以下「納付金」という)を徴収するものである。
しかし、納付金により船価が上昇し、新規参入の促進や、内航海運の競争力強化を阻害しているとの指摘があり、行政刷新会議においてもその早期解消が指摘されており、これに対応するための制度のあり方についても検討していく必要がある。
<代替建造促進対策の検討に向けて>
本検討会では、まずは日本経済における内航海運の位置付けを行った後に、内航海運が持続可能な輸送サービスを提供していく上で不可欠な代替建造促進策をどういった視点から考えるべきかを整理
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し、それぞれの視点毎に必要な施策の方向性について検討していくこととする。
2.内航海運の位置付けと代替建造促進に向けた視点
<内航海運の位置付け>
内航海運は、産業基礎物資の約8割を輸送するなど我が国経済にとって必要不可欠なものと考えられているが、貨物輸送全体の機関分担率で見ると年々減少しており、平成 20 年には過去最低の約 34%まで低下している。しかし、輸送量が減ったとは言え、貨物輸送量の約3分の1を内航海運により輸送している我が国は、諸外国と比較しても、産業基礎物資輸送を中心に海上輸送が発達している「海洋先進国」であり、この輸送需要は将来に渡っても一定規模で維持されると考えられ、また、輸送効率等の面から陸上輸送によって全て代替できるものでもなく、環境適応型の輸送サービスであることを鑑みると、我が国にとって内航海運は社会基盤インフラとして必要不可欠であり、今後とも、内航海運による効率的で安定的なサービスの提供が日本経済にとって極めて重要であるとの位置付けを行うことが適当である。また、これに加え、今後は国内だけでなく、成長するアジア等の海外需要を取り込んでいくことも視野に入れていく必要がある。
他方、荷主が厳しい国際競争にさらされ、産業構造も大きく変化する中で、国内輸送量が減少し、また、物流コストも大きく削減されており、これに対応する形で船舶数・事業者数も減少してきているが、これに適合した収支構造になっておらず、代替建造が進んでいない現状がある。これは、市場に任せるだけで解決する問題ではなく、関係者が一丸となってこの需給ギャップの解消に資する構造改革を推進し、適正な運賃・用船料を確保することにより、生産に
用いる資本を再生産できる、持続可能な自律的産業として再生することが必要であり、国もこうした取組みを行う事業者に対して集中的に支援を行っていく必要がある。
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<検討に向けた視点>
内航海運の基本的経営資源である船舶の代替建造対策を考えるに当たっては様々な切り口が考えられるが、ここでは現在の経済情勢や経営環境、業界構造等を勘案して4つの視点を提示し、この視点に沿って対策を検討することとする。
①競争力の強化について
我が国製造業については、海外現地生産比率が平成 20 年の 17.4%から、平成 26 年度には 20.1%まで上昇する見込み[1]であるなど、経済のグローバル化がますます進展することが見込まれている。このため、国内物流のトータルコストの縮減や、アジア経済の成長力を取り込むことが、我が国経済の国際競争力にとって極めて重要になってきている点を踏まえつつ、内航海運の競争力強化に向けた対策を行っていくことが必要である。
また、内航海運は中小零細企業が 99%を占め、厳しい経営状況から内部留保も十分でないため、老朽船の割合が 71%を超えるなど船舶の老朽化が進展しており、これに伴う安全・環境面での負の影響や効率性の低下の問題に対応するため、代替建造の促進に向けた対策が不可欠である。
さらに、生産年齢人口(15~64 歳)が、2010 年の 8,129 万人から2055 年には 4,595 万人となることが見込まれる[2]など、労働人口が減少していくことを踏まえ、安全面に配慮した上で省力化に向けた取組みを促進することも、競争力強化の観点から必要である。
②環境適応型産業への転換について
地球温暖化防止対策については、今後も引き続き重要な課題となっていくため、同一貨物を輸送する際の二酸化炭素排出原単位が営業用トラックの約4分の1であるなど、環境性能の優れた輸送機関としての内航海運の役割は益々大きくなっていくことが考えられる。
内航海運としても、造船業と連携した環境性能に優れた船舶や装置
[1]「平成 21 年度企業行動に関するアンケート調査」(内閣府経済社会総合研究所)
[2]「日本の将来推計人口(平成 18 年 12 月推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)
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などの技術開発の推進や、環境適応型産業として荷主に選択されるようなサービスの開発・提供などハード・ソフト一体となった取組みを推進していくことが必要であるし、将来的な発展に向けては、海上輸送部分だけを考えるのではなく、陸上輸送が総合物流業へと発展したように、内航海運についても、港湾結節点も含めた総合的な物流ネットワークの観点から、トータルコストの縮減を目指すことで、産業基礎物資以外の輸送量を増加させていくことを目指して
いく必要がある。
③新たな需要構造への対応について
人口減少社会の到来による内需の減少、国内企業の海外立地の進捗や物流合理化の進展などを受け、内航海運に対する国内輸送需要そのものは産業基礎物資を中心に長期的に低下していくものと見込まれる。具体的な輸送量の推移を見ると、ここ 20 年でトンベースでは約 34%、トンキロベースでは約 24%近く減少しており、また、将来的な輸送需要推計を見ても、内航海運全体として今後5年で約1割近く減少が見込まれているところである。他方、これからアジアにおいては物流が飛躍的に発展することが想定されており、国内における輸送量の増加に加え、内航海運の先進国である日本が今までに獲得してきた技術や経験を、これらアジア諸国へ展開して行くことを考えていくなど、この新たな需要構造に対応する対策を考えていくことが必要である。
④暫定措置事業のあり方について
平成10年より始まった暫定措置事業については、今日までに1,714隻[3]の船舶解撤を促してきており、船舶需給の引き締め、代替建造の促進に一定の役割を果たしてきている。当該事業は内航海運事業者が船舶を建造する際の納付金収入により解撤する際の交付金支出をまかなうものであることから、両者のタイムラグの発生により、事業運営主体である日本内航海運組合総連合会(以下「内航総連」と
[3]平成 22 年 3 月現在、交付金交付認定済船舶の数
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いう。)が多額の借入金により交付金支出を補ってきた経緯があり、平成23年現在においてもまだ要返済額(平成22年度末において約613億円、事業者への未交付額及び預託金を入れた場合は約722億円)が多く残っている。事業は収支相償った時点で終了することとなっており、交付金の交付対象船舶は平成27年度で消滅するものの、それ以降も引き続き納付金による借入金返済を行っていく必要性があり、これが新規参入や代替建造を阻害しているとの懸念もあるが、同事業の早期解消のためには代替建造の促進が最も実現可能性が高く効果的な解決策である。
3.将来輸送量・船腹量推計について
今般、代替建造の対策を検討するに当たり、今後の輸送量と必要な船腹量について将来推計を行った。
具体的には、主要品目毎に、昭和 60 年~平成 21 年までの実績データを元に、実質GDPを説明変数として国内需要と輸送量を推計した。実質GDPは、①IMFによる予測(1.8%成長、上位ケース)、
②国土交通省の将来交通需要推計に用いられる数値[4](概ね 0.9%成長、中位ケース)、③0%成長(下位ケース)、の3ケースを用いることとした。
平成 22 年は直近までの輸送量により算出し、平成 23 年~平成 27年までの輸送量を推計し、それ以降は横ばいとしている。
産業構造の変化に伴う輸送量の変化等については、基本的に過去のGDPと輸送量の関係の中に織り込まれていると考えているが、各業界における将来見通し等がある場合はそれを考慮したものとなっている。
推計によれば、平成 27 年における輸送量(対平成 22 年度)は上位ケースで▲1%、下位ケースで▲10%である一方で、船腹量は上位ケースで▲9%、下位ケースで▲18%となっている。
輸送量よりも船腹量の方が大きく落ち込むということは、過去の
[4]最新の実質 GDP の政府見通しに、直近 10 年間の実質 GDP の平均変化量を加算して予測
を行ったもの。
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船腹需給の推移から見ると、一定程度の船腹が過剰であるとの解釈も可能であると言える。
4.代替建造促進に向けた具体的方策について
上記に示した視点を踏まえて、内航海運の構造改善を進め、競争力を強化し、代替建造を促進させていくために解決すべき課題、その解消に向けた具体的な目標と方策を検討し、その実現に向けて関係者が一体となって取り組んでいく必要がある。
<競争力の強化に向けた取組み>
課題1-1 オーナーの競争力強化に向けた取組み
内航海運の活性化のためには、頑張るオーナーを支援し、競争力を高めていくことが必要である。他方、内航海運は一杯船主が多数を占める構造であり、競争力の強化、持続可能なサービスの提供に向けては、その零細性を克服していく必要がある。
このためには、①スケールメリットを活かした管理コストの削減や効率的な人材育成等を図るため、船舶管理会社を活用したグループ化の取組みを推進する、②(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「鉄道・運輸機構」という)の共有建造制度(以下単に「共有建造制度」という)の活用や、建造促進措置・老齢船解撤促進措置を組み合わせた支援を含め、安全・環境面でも課題となる老齢船の代替建造を促進する、との観点から、具体的な対策を検討する。
○検討に当たって留意すべき点
・一杯船主は輸送量が増減した際の供給調整機能を果たしており、コスト競争力もあるなど、荷主等から見て市場での一定の役割を有している面もあるが、荷主‐オペレーター‐オーナーという階層的で、かつ、一杯船主をはじめ零細事業者が太宗を占める業界構造が長く続いているため、オーナーに運賃用船料の価格交渉力がなく、内部留保が確保できない、また、船舶建造のための資力や信用力が乏しく、資金調達が困難であることが代替建造に当たっての問題で
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ある。
・このため、緩やかなグループ化の促進による業界構造の転換を図る取り組みを促進してきたが、オーナーの一国一城の主の意識が強い、グループ化の具体的なメリットが分かりにくい等の原因により、大きく進展していない。他方で、グループ化を行い、スケールメリットを活かして管理コスト削減、効果的な船員育成を行っている事例もあり、その有効性は一定程度評価できる。
・従来より船舶の特別償却制度や買換特例制度などの税制特例、共有建造制度の使用料を環境性能の優れた船舶については優遇するなど支援を行ってきたが、さらなる代替建造の促進のためには、こうした政策誘導手法の活用も重要である。
・外航海運については私募ファンドや証券化等の様々な資金調達方法が発達しており、また、一般的な中小企業に対する資金調達については、地方自治体や政府系金融機関による証券化の取組みが進んでいるが、内航海運も多額の投資を要する資産であるにもかかわらず、こういった多様な資金調達方法がない。
・規制は、安全の確保、環境の保全、船員の労働環境の維持・向上等の観点から必要不可欠なものであるが、技術革新や経済社会状況の変化を踏まえ、また、国内の実情も踏まえつつ、競争力強化の観点から不断の見直しを行っていくべきである。
○具体的な取組みの方向性
グループ化の促進 |
・ 船舶管理会社の活用によるメリットを具体的に提示しつつ、共有建造制度の活用や、税制、納付金による政策的誘導等も視野に入れ、グループ化、協業化の取組みを具体的に進めるための対応策を検討する。
・ 内航海運における船舶管理者を養成するため、関係者からなる協議会を設置し、船舶管理に関するガイドラインの策定や、船舶管理に従事する者を評価する仕組みづくり(資格制度等)等の取組みや、それに対する支援策を検討し、船舶管理の取組みの促進を図る。
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老齢船の代替建造促進 |
・老齢船の代替建造促進について、支援するには財政的な制約もあることを踏まえつつ、税制や納付金等により、建造促進措置・老齢船解撤促進措置を組み合わせて適用することや、共有建造制度の使用料体系や共有期間のあり方等も含め、代替建造促進方策を検討する。
・ 船種によっては、荷主・オペレーター主導で計画的な代替建造の取組みを進めているところもあることを踏まえつつ、荷主・オペレーターが主導的に代替建造を進めていく、又は荷主・オペレーターが運賃・用船料水準に配慮しつつ、老齢船でなく代替建造された船を選好する取組み、共有建造制度についてオペレーターも積極的に参加する取組みを推進する。
・ 荷主と内航業界団体等の関係者で協議会を設置し、計画的な代替建造を行うための意見交換を行う。
・ 鉄道・運輸機構等と連携し、内航海運に適用可能な資金調達方法の多様化に向けて検討を行う。
規制緩和に向けた取組み |
・ 関係者に対して行った規制緩和に関する要望ヒアリングをもとに、安全性等の検証や関係者間の合意形成などを行いつつ、規制の見直しを図る。具体的には、航行区域の見直しや、船舶検査、船舶料理士に係る資格取得、雇入届出制度の簡素化等について関係者間で検討を行う。
課題1-2 内航船のイノベーション推進に向けた取組み
内航船舶の建造隻数の減少に伴い、国内中小造船業の内航船舶建造能力も減少しており、このままでは建造技術や人材など中小造船業を支える産業基盤が崩壊し、代替建造及び内航船の技術的イノベーションが進まなくなるおそれがある。
このため、①内航海運を支える中核的資産である船舶を建造する内航船造船業の産業基盤を強化する、②内航海運の競争力強化に資する技術の開発・普及を行う、との観点から、具体的対策を検討す
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る。
○検討に当たって留意すべき点
・性能の高い船舶を廉価で建造できるような技術(省エネ標準船型等)の開発や、安定的な建造量が確保されるような中期的な建造見通しの関係者間での共有化等が必要である。
・海外等の成長分野など、内航船以外の分野への進出により、安定的経営を確保しつつ、内航船の持続的な供給を図る取組みも検討すべきである。
・内航海運のイノベーションに資する技術の開発・普及を重点的に行うべきである。特に、それぞれが内航船の運航コストの3割程度を占める燃料費及び船員費の削減を可能とする技術の開発・普及を加速するべきである。この際、技術の効用を踏まえた規制の緩和を合わせて推進すべきである。
・海難事故は、見張不十分等運航に係るものが原因であるものが多いため、規制のあり方の検討に当たっては十分な検証が必要である。
○具体的な取組みの方向性
内航船造船業の産業基盤強化 |
・ 荷主や鉄道・運輸機構と連携し、具体的な船種毎のニーズや効果の違いを把握しつつ、省エネ標準船型等の開発を推進する。
・ 鉄道・運輸機構の技術支援及び実用化助成の機能を活用し、荷主の多様なニーズ・技術に合わせることができる、きめの細かい技術的支援を推進する。
・ 技術革新の効果をより大きくできるような規制の見直しを検討する。
・ 海外における造船に対するニーズの把握を行いつつ、海外等へ進出するビジネスモデルの実現可能性について検討する。
内航海運の競争力強化に資する技術の開発・普及 |
・ スーパーエコシップ及び高度船舶安全管理システム等新技術の導入に伴う機関部を中心とした省力化が図られてきたところであるが、今後とも一層の推進を図る。また、省力化可能なブリッジの
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構造改善に関する開発・検証など、甲板部の省力化技術の開発・普及を推進するとともに、安全性等の検証や関係者間の合意形成などを行いつつ、検証された省力化効果に応じた規制の見直しを図る。
<環境適応型産業への転換について>
課題2 選択される環境産業への脱皮内航海運は、環境負荷が陸上輸送に比べて低いという特性を持っており、今後、経済活動の中で地球温暖化問題へ対応する必要性が増していくという状況を追い風とし、環境産業として荷主に選択されるよう、積極的な取組を進め、輸送量を増加させていく必要がある。
このため、①船舶の環境性能を更に高める、②陸上輸送から海上輸送に転換させるための取組みを行う、との観点から、具体的対策を検討する。
○検討に当たって留意すべき点
・内航海運はトラック輸送に比べ二酸化炭素排出原単位が優れているが、原単位の改善率を見ると、トラック輸送が年々改善されているのに比べ、内航海運については近年あまり改善が見られない。また、自動車と比べ、船舶の環境性能を正確に評価することが難しい。
・スーパーエコシップ等の環境性能の高い船舶への代替建造促進を更に様々な船種について行っていくため、性能の高い船舶を廉価で建造できる技術支援等について考える必要がある。
・船舶を運航するオーナーではなく、用船するオペレーターが燃料費を負担する構造となっており、運航管理による省エネの推進のインセンティブが働きにくい商慣行となっており、荷主・オペレーター・オーナーが連携して省エネ運航を実現する対策の検討が必要である。
・内航海運による一般雑貨の輸送量は、しばらく増加してきたが、近年は頭打ちないしは低下しており、地球温暖化対策の議論の中で
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モーダルシフトの促進に向けた対策を行っていく必要がある。
・モーダルシフトの担い手となるユニットロード輸送を担う事業者は、産業基礎物資を運んでいるインダストリアルキャリアとは性質が異なり、陸上輸送との競争となることから、サービスの高度化・コスト縮減等について更なる対策を行っていく必要がある。その際、内航フィーダー輸送や静脈物流等についても促進して行くことが重要である。
・地球温暖化対策自体の方向性や、排出権取引などの大きな枠組みについては現在議論が行われているところであり、その動向を見極めていく必要がある。
・今後想定される国内・海外のエネルギー供給構造の変化や、それに伴う燃料油高騰の問題を受け、内航海運をより高度な省エネ型の輸送システムとすべく、内航海運産業の産業構造改革を推し進めると共に、内航海運自体の省エネ化を進め、その利用を促進するためのインセンティブをより一層強化していく必要がある。
○具体的な取組みの方向性
船舶の環境性能向上に向けた取組み
・ 適用船種に応じたスーパーエコシップ技術の最適化や在来型内航船への省エネ技術の適用を推進する。
・ 現在1種類しか定められていない船舶の二酸化炭素排出原単位を精緻化するとともに、船舶のエコ格付け制度(仮称)や「海の10モード(実海域燃費指標)」の内航海運への展開などを行い、環境性能を正確に把握できるようにする。
・ 省エネに資する運航の取組みについて普及を図るため、気象・海象を利用した省エネ運航や、省エネ診断を行う取組みについて、表彰制度の創設など客観的に評価するための仕組みづくりを行う。
モーダルシフト促進に向けた取組み |
・ モーダルシフトの促進に向けては、荷主の物流戦略が大きなウェイトを占めており、環境意識の高まりも踏まえつつ、低炭素化に向けて内航海運事業者と荷主・物流事業者との連携を強化する。
・ 内航フィーダーについては、国際コンテナ戦略港湾が選定された
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ことを受け、韓国フィーダー輸送とのトータルコストに対する競争力をどのように向上させるか、荷主や基幹外航航路の船社のニーズ把握に努めつつ、ネットワーク網の充実を図るなど、内航フィーダー側としてのサービスのあり方を検討する。その際、港湾管理者や地方公共団体等の港湾関係者との連携を強化していく必要がある。
・ 静脈物流については、廃棄物輸送に係る規制などを受けることに留意しつつ、更に実態把握を行い、積載率の向上に活用するなど内航海運におけるフィージビリティを検討する。
<新たな需要構造への対応について>
課題3 海外等新たな需要開拓について
過去の輸送動向や将来輸送推計を見ると、内航海運の国内輸送需要そのものは産業基礎物資を中心に一貫して減少していく傾向にあり、内航海運として、船腹量の需給バランスを確保しつつ、こうした新たな需要構造の変化に対応していく必要がある。
このため、①今まで海上輸送を行っていなかった荷主から新たに輸送需要を開拓する、②海外等物流が成長している分野の需要を取り込む、との観点から、具体的対策を検討する。
○検討に当たって留意すべき点
・内航海運全体として成長して行くためには、環境面でのメリットを示しつつ、他モードの輸送需要を取り込み、多様化・高度化する荷主ニーズに対して内航海運業界側から積極的に企画提案等を行い、利用の促進を図る必要がある。
・インドネシア、インド等、海運による国内輸送需要が今後飛躍的に増加すると見込まれる地域では、日本の優れた内航輸送システムに対する関心が高まっており、これらの成長する海外の物流分野との連携を図って行く必要がある。
・船舶建造投資を回収するには長い期間が必要である一方で、輸送需要は大きな波動があり、ピーク時に合わせて船舶整備するため、
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船腹供給は過剰になりやすいが、その際にオーナーが輸送量の供給を絞ることができない。特に、近年は長期的な輸送需要の低迷に加え、リーマンショック以降の輸送量の急減等によりオーナーの経営状況は大きく悪化しており、多額の借入金を抱えているオーナーが市場から退出できない等、需給の不均衡状態が経営環境を圧迫する事態となっている。
・事業からの退出に際しては、海外に売船することが大半だが、需給のタイミング、価格や船種、船舶の大きさなどが上手くマッチしない場合がある。
・オーナーについては、収入が用船料、支出は船舶関連経費と船員費という極めて単純な収支構造になっているため、不採算部門の切り離しや円満な市場退出等の事業再生の手法をそのまま用いることが不適切な場合が多い。
○具体的な取り組みの方向性
新たな輸送需要の開拓 |
・ 企画提案の成功事例(エコシップマーク認定事業やグリーン物流パートナーシップ事業等の既存の取組みも含む)を広く集め、荷主や物流事業者に対するきめ細かい物流サービスを提供できる人材育成やノウハウを普及させていく取組みを検討する。
海外等物流が成長している分野の需要の取り込み |
・ 安全性・定時性・環境適合性など、わが国の内航輸送サービスに優位性がある分野に対し、どういった海外のニーズがあるかについて把握しつつ、例えば船舶輸出と船舶管理システムの組み合わせなど、ハード・ソフトをパッケージ化したシステムの海外への提供等、海外の物流分野と連携するビジネスモデルの実現可能性について検討する。
・ アジア等の内航海運が成長している市場に対する海外売船について、諸外国との規制・規格の違いや、具体的なニーズについて把握するため、各国関係者との協議、意見交換のためのセミナー開催等を行うとともに、効果的な海外売船システムの構築を行うための方策を検討する。
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事業再生手法の検討 |
・ 内航海運の陥っている典型的な状況は何か、それに対してどういった事業再生の手法が活用可能かについて、実態調査や、実験的な取組みなどを通じて内航海運の特徴に適した事業の再生、経営の合理化手法の開発、普及に関する取組みを検討する。
<暫定措置事業のあり方について>
課題4 今後の暫定措置事業のあり方について
平成 28 年度以降は、交付金の対象船舶の消滅による交付金の廃止に伴い、納付金の免除制度、留保制度がなくなる一方で、納付金自体は収支相償うまで続くことになっており、これを前提に今後の暫定措置事業のあり方を考えていく必要がある。
このため、①暫定措置事業の早期解消を図りつつも、代替建造を阻害しない納付金のあり方は何か、②納付金を活用し業界構造の改善のインセンティブの付与を行えないか、との観点から、今後の制度のあり方を検討する。
○検討に当たって留意すべき点
・平成 16 年の留保制度の導入により、免除権の売買が行われるようになっているが、これが権利性を帯びて、暫定措置事業の早期解消への障害となっており問題である。
・現在も、内航フィーダー船やモーダルシフト船については納付金が低く設定され、代替建造促進のための誘導を行っているが、今後もこうした政策的誘導の考え方を続けるべきである。
・現行制度上平成 28 年度以降は免除制度がなくなるため、代替建造を行う者にとっては結果的に納付金負担が大きくなる可能性があり、代替建造を阻害するおそれがある。
○具体的な取り組みの方向性
暫定措置事業について |
上記のような留意点を踏まえ、今後事業運営主体である内航総連
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において、関係当局とも連携しつつ、以下のような方向で同事業の早期解消に資するよう具体的な検討を進めるべきである。
・ 免除権がなくなることを考慮し、平成 28 年以降の納付金単価については、暫定措置事業の早期解消を図るという観点と、代替建造の促進を図るという観点の双方に配慮した、適正な水準に設定する。
・ 特に環境性能に優れた船舶や、グループ化・協業化を行う船舶等に対しては、業界構造を改善し、競争力を強化させるとの観点から、納付金の水準をインセンティブとして活用できる仕組みを導入する。
・ 具体的には、①特に環境性能に優れた船舶や、グループ化・協業化を行う船舶等に代替建造するもの、②環境性能に優れた船舶等に代替建造するもの、③その他の船舶に代替建造するもの及び新たに船舶を建造するもの、の3段階に分け、建造等納付金単価を設定する。
資金管理計画について |
・ 今回は、将来のGDP成長率を3つのケースに分けて将来の輸送量、船腹量の推計を行い、これに基づいて暫定措置事業の今後の資金管理計画を作成し、結果として本事業は平成 35 年~平成 37年の間に収支相償うと推定されたところだが、これについては経済情勢の変動等により変化していくものであるため、毎年の実績を元に、必要に応じて見直しを行っていく必要がある。
5.今後の取組みの進め方について
以上、それぞれの視点に沿ってとりまとめてきたところであるが、今後はその具体化に向け関係者が一致協力して取り組んで行く必要がある。
このため、課題1~3について、短期的取組み、中期的取組みなどに分類した今後の施策の工程表を記載したアクションプログラムを策定するとともに、課題4についても内航総連において早急に具体策を策定するなど、具体的な施策の実現に向けて取り組んでいく。
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今回作成した資金管理計画によれば、暫定措置事業は上記のとおり平成 35 年~平成 37 年に終了すると推定されているが、今回の取りまとめを具体的に推進することにより、本事業の早期解消が図られることを期待するものである。
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○内航海運代替建造対策検討会委員名簿(敬称略)
岩崎 貞二 (独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構 理事長代理
上野 孝 日本内航海運組合総連合会会長
梅原 尚人 日本鉄鋼連盟物流政策委員会委員長
大上二三雄 エム・アイ・コンサルティンググループ(株)代表取締役社長
小比加恒久 全国海運組合連合会会長
樫谷 隆夫 公認会計士・税理士
栗林 宏吉 内航大型船輸送海運組合会長
(座長)竹内 健蔵 東京女子大学現代教養学部教授
田中 千洋 (株)商工組合中央金庫 取締役常務執行役員
中谷 敏義 (社)日本中小型造船工業会副会長
保坂 賢二 石油連盟運輸委員会委員長
山本 耕三 (株)日本政策金融公庫特別参与
(オブザーバー)
柳川 範之 東京大学大学院経済学研究科准教授
○開催実績
第1回 平成22年11月15日(月) 17:30~
第2回 平成22年12月17日(金) 15:00~
第3回 平成23年 1月28日(金) 17:30~
第4回 平成23年 2月16日(水) 14:00~
第5回 平成23年 3月15日(火) 15:00~
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