船員労務供給事業及び船員職業紹介事業に係る規制改革の あり方に関する報告

船員職業紹介等研究会,『船員労務供給事業及び船員職業紹介事業に係る規制改革の
あり方に関する報告』,2002年7月15日

船員の労務供給事業及び職業紹介事業については、当該事業を実施する者により中間搾取が行われ、船員の労働を阻害するおそれがある等の観点から、船員職業安定法(昭和23年制定)に基づき、そのおそれがないものとして国土交通大臣が許可する船主団体及び労働組合を除き、民間において実施することが禁止されてきたところである。

しかしながら、船員職業安定法の制定から半世紀を超えた現在、法制定当時と比べ、海運企業による船舶の運航形態の変化に伴い、外航海運においては日本籍船と日本人船員の減少、外国人船員との混乗、日本人船員の少数配乗の一般化が進捗しており、内航海運においては様々な形態のマンニングが増えてきている。このような状況の中、船員にとっては、船舶を所有する者と船員の就業を実質的に監督する者とが異なる場合も生じてきている等その労働状況は大きく変化してきており、船員労務供給事業及び船員職業紹介事業に係る規制についても、時代のニーズに対応した所要の見直しが求められる状況となってきている。

一方、陸上労働分野においては、船員労働分野と同様に禁止されてきた労務供給事業及び職業紹介事業について、経済の進展等による専門的な職業群の増加や短期間の就業を希望する層の増加等の労働状況の変化に伴い、労働力の新たな需給調整システムを構築する等の必要が生じてきたことから、昭和61年、陸上労働者の労働保護を確保しつつ、労務供給事業に関しては民間において労働者派遣事業を実施できるよう制度化するとともに、平成11年には、職業紹介事業についても民間において実施できるよう制度化されたところである。

以上のような状況を踏まえ、本研究会は、学識経験者及び官労使から構成される委員会として平成9年2月12日に設置され、それ以降、本研究会を9回、同専門委員会を13回にわたり開催して、民間における船員労務供給事業及び船員職業紹介事業のあり方について鋭意検討してきた。
その結果、本研究会は、今般、船員労務供給事業に係る規制改革については、船員の雇用の安定と労働保護を図りつつ、民間における船員派遣事業の制度化を行う等船員労働力の適正かつ円滑な移動の仕組みをつくることが適当であること、また、船員職業紹介事業に係る規制改革については、船員教育機関による無料船員職業紹介事業に関する制度化が適当であること等との見解に達したので、下記のとおり報告する。

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なお、本報告においては、労務供給事業に該当しない形態の整理について見解を統一することができなかったため、労働側委員の見解を併記することとしたこと、また、船員派遣事業者となり得る者についての範囲等について労働者側委員及び使用者側委員からそれぞれ意見が表明されたので、本報告に付記したことを念のため申し添える。これらについては、今後さらに、法制面も含め、関係者間での詳細かつ十分な議論、検討のうえ制度設計が行われる必要がある。

Ⅰ 船員労務供給事業について
船員労務供給事業については、常用雇用型船員派遣事業の制度化等により、船員の労働保護を図りつつ、以下のとおり船員労働力の適正かつ円滑な移動の仕組みをつくることとする。

1 常用雇用型船員派遣事業に関する制度化の必要性

(1)船員職業安定法は、何人にもその能力及び資格に応じて公平かつ有効に船員の職業に就く機会を与えることによって、海上企業に対する労働力の適正な充足を図ることを目的としており、供給契約に基づいて人を船員として他人の指揮命令を受けて労務に従事させることを業として行う船員労務供給事業については、船員が継続的に供給元事業者の支配下におかれることにより、強制労働や中間搾取が行われる可能性があること、また、支配従属関係が二重となるため労働保護法規上の使用者責任の所在が不明確となり、船員の労働保護に欠けるおそれがあることから、労働組合を除き、民間において行うことを禁止している。

(2)しかしながら、昭和23年に船員職業安定法が制定されて以降、現在までの間に、船員労働の分野のみならず、社会全体の近代化が進み、船員保護法規も整備され、社会的に定着し、また、船員側の価値観等も多様化している今日の状況を踏まえれば、船員労務供給事業に対し、現行のように形式的な要件で一律に規制を行うことが適当といえるのかという問題が提起されている。
したがって、現行法の目的を堅持することを前提としつつも、今日の経済的社会的状況を踏まえ、その規制のあり方を見直すことによって、より一層、船員の保護を図り、雇用の安定を確保する必要がある。

(3)ところで、海運界においては、海運企業による船舶の運航形態の変化等に伴
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い船員の労働状況は大きく変化してきており、具体的には、次のような状況が顕在化してきているところである。
① 近年、内航海運においては、厳しいコスト競争の下、特に中小内航海運企業において、予備船員まで含めた船員を自社で雇用、訓練することが経営的に困難な状況となってきている。このため、一部の企業間においては転籍等による船員労働力の移動を行っているところであるが、そのような移動だけでは限界があることから、比較的多数の船員を雇用している大手
内航海運企業から、船員不足に直面している中小企業等に対し必要に応じ船員を供給できる新たなスキームを確立するとともに、さらに、効率的な船員の雇用及び船員労働力の需給調整を行う観点から、一定の企業が船員を一括して雇用、訓練し、複数の企業に対し必要に応じ船員を供給できるといったスキームの確立への需要が高まってきている。
② 外航海運においては、基幹船員として日本人船員の配乗が必要とされる船舶向けに日本人を確保するため、一部の企業間において転籍による日本人船員労働力の移動が行われているところである。
また、日本人船員に求められる資質は、船舶上の運航管理者のみならず海陸両職域における船舶の管理を担う技術者に変質してきているところであり、各企業にとっては、このような日本人船員を確保・育成することが重要な課題となっているところである。したがって、これら日本人船員の確保・育成のために、日本人船員を雇用して訓練できる途をできるだけ広げるとともに、必要な場合には、他の企業に対し日本人船員を供給できる新たなスキームの確立が求められてきている。
一方、日本人船員の雇用状況については、依然として厳しい状況にあることから、その減少に歯止めが掛からず、日本人船員の確保育成は緊急な政策課題として関係者が鋭意取り組んでいるところである。このような中、上記のような企業側のニーズに対しては、法の厳正な適用とともに、船員保護の立場を十分に踏まえた対応が望まれている。
③ また、漁業分野においては、漁期等の特殊事情が背景にあり、漁船船員は、転籍等による漁業種間の移動が恒常化している現状下、移動に係る新たなスキームを確立する必要性はあると考えられるところであり、カーフェリー等の旅客船分野においても、その必要性は否定できない。
(4)以上のように、我が国の海運・漁業界においては、船主側が企業間における船員労働力の円滑な移動を望む状況となっているところであるが、当該船員にとっては、企業から企業への転籍を強いられること、また、移動により労働条

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件等が変更されること、さらに、労働に対する指揮命令をする者が移動元なのか移動先なのかが必ずしも明確でなく、かつ、その労働に対する雇用者・使用者としての責任が不明確となる場合があること等、船員の労働関係は極めて不安定なものが見受けられることから、適切な規制が求められている。
(5)また、船舶の航行安全のためには、船員に対する技能向上等のための教育訓練が必要不可欠であるが、企業間を船員が移動する状況にあっては、教育訓練を行うべき企業が分散し、場合によっては教育訓練を受けられないという状況が生じることから、結果として、船員にとって十分かつ体系的な教育訓練を受けることができないということも懸念されるところである。
(6)したがって、船員の労働保護を図りつつ、船員労働力の移動を適正かつ円滑に実施できるようにするためには、移動する船員に係る雇用責任、労働条件等を明確にすることが、当該船員の労働保護及び教育訓練の適切な実施上から是非とも必要であり、このためには、陸上労働分野で制度化されている労働者派遣事業制度を参考として、派遣船員に係る雇用責任を派遣元に一元化し、当該派遣船員の労働に係る派遣元と派遣先の責任関係を明確にすることを内容とする船員派遣事業に関するスキームを新たに制度化することが適切である。
(7)さらに、船員派遣事業の制度化に当たっては、派遣元において船員を常時雇用する常用雇用型船員派遣事業と派遣元が派遣期間のみ船員を雇用する登録型船員派遣事業が考えられるが、船員の雇用の安定及び教育訓練の観点から、常用雇用型の船員派遣事業のみを制度化することが適当である。
(8)また、船員派遣事業者となり得る者については、船員労働の特殊性に鑑み、船舶の所有者責任、船舶の安全運航確保の観点から、船舶を所有する者、裸用船を受けている者又はこれらに準ずる者に限定することが適切である。

2 常用雇用型船員派遣事業に関する制度
上記1に基づき、制度の骨子は次のとおりとすることが適当である。
① 常用雇用型船員派遣事業の定義
・船員を常時雇用する者が、その雇用関係を継続したまま、当該船員を他人の指揮命令の下で、かつ、当該他人と雇用関係を結ばないで、当該他人のために労働に従事させることを業として行うこと
② 常用雇用型船員派遣事業者の対象となり得る者
・船舶を所有する者、裸用船を受けている者又はこれらに準ずる者
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③ 国土交通大臣による許可制
・許可の基準及び有効期間、船員中央労働委員会の意見聴取等
④ 船員派遣事業者、派遣船員に対し原則として船員法を適用
⑤ 船員派遣契約において定めるべき事項
・派遣船員の職務、派遣期間、苦情処理体制等
⑥ 船員派遣元事業者の講ずべき措置
・教育訓練の実施等派遣船員の福祉の増進
・適正な派遣就業の確保
・派遣船員であることの明示等
・派遣船員に係る雇用制限の禁止
・就業条件の明示
・派遣先への通知
・派遣元責任者の選任
・派遣元管理台帳の作成
⑦ 船員派遣先事業者の講ずべき措置
・船員派遣契約に関する措置
・適正な派遣就業の確保
・派遣船員の雇用の努力義務
・派遣先責任者の選任
・派遣先管理台帳の作成
⑧ 国土交通大臣による派遣元及び派遣先事業者の講ずべき措置に関する指針の公表
⑨ 国土交通大臣による派遣元及び派遣先事業者に対する指導、助言、勧告、改善命令及び勧告に従わなかった事業者の公表
⑩ 国土交通大臣による違反派遣元事業者の許可の取消、事業の停止命令
3 労務供給事業に該当しない形態の整理
(1)常用雇用型船員派遣事業の制度化に伴い、これによる派遣及び期間用船契約による船舶への配乗のほか、労務供給事業に該当しないその他の形態も明確にすることが船員の労働保護の観点から必要であるので、次の形態を労務供給事業に該当しないものとして整理することが適当であるとの考え方が提示された。
① 在籍出向による船舶への配乗
在籍出向とは、自己の雇用船員を関係会社(緊密な資本関係等のある会社)に出向させる場合であって、かつ、出向元と出向先の両方に労働契約がある場合をいう。
この場合は、出向元と出向先との間に緊密な資本関係等があることから、在
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籍出向船員にとって実質的に同一の会社の中での移動であり、中間搾取等の発生するおそれがない。また、在籍出向船員と出向元・出向先の間でそれぞれ労働契約が結ばれるため、労働に係る責任関係が明確となる。したがって、労務供給事業には該当しない。
② 船舶管理契約による管理船舶への配乗
船舶管理契約による管理船舶への配乗とは、船舶を所有する者等から船舶管理契約により船員の配乗、船舶の運航及び船舶の保守を委ねられた船舶に、自己の雇用する船員又は派遣若しくは在籍出向により受け入れた船員を配乗する場合をいう。
この場合は、船舶管理契約により船舶管理業務を行う者が管理船舶に配乗した船員を自ら指揮命令し使用して運航することになるため、船員を他人の指揮命令を受けて労務に従事させることを業として行うものではないことから、労務供給事業には該当しない。
なお、船舶管理業務を行う者については、当該業務を適格に遂行することのできる者でない場合は、中間搾取等が発生するおそれがないとは言い切れないので、当該業務を適格に遂行できる者である、船舶を所有する者、裸用船を受けている者又はこれらに準ずる者に限定することが適切である。
(2)このような整理の考え方に対し、労働側委員からは、本来の常用雇用型派遣事業の制度化の重大な妨げになるとの観点から行うべきではないとの見解が示された。まずひとつは、在籍出向を労務供給事業に該当しないと定義すれば、雇用船員を反復継続し常態的に他社出向させるケースも労務供給事業に該当しないことになり、実質的な派遣事業が可能になること、次に、船舶管理会社が船舶管理契約を結んだ管理船舶に配乗するケースを労務供給事業と見なさないと整理した場合、船舶を所有しない又は裸用船を受けていない船舶管理会社であっても、この範囲に含まれることになるため、雇用の不安定化等船員の労働の保護の観点から深刻な問題が生じること等の理由により反対としている。

4 登録型労務供給事業の実施
期間雇用の船員については、とりわけ内航海運、漁業部門で数多く雇用されているが、常用雇用に比べ雇用が不安定な面がある。
このような期間雇用船員については、自ら労働条件等について供給先と交渉することなく、公正な第三者により労働条件等がチェックされた上で就労することが可能となれば、雇用の安定が確保されることから、これら船員のために公的の機関による労務供給事業を実施することが望ましい。
このため、既に、船員の雇用の促進に関する特別措置法に基づき労務供給事業を
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実施することが認められている(財)日本船員福利雇用促進センターを活用することとし、同センターにおいて船員を登録して適正な労務供給契約により当該船員を供給する事業を行うことが適切である。

Ⅱ 船員職業紹介事業について
船員職業紹介事業については、当面、無料船員職業紹介事業の充実・改善を行うことにより、以下のとおり船員の雇用の促進を図ることとする。

1 無料船員職業紹介事業に関する制度の拡充及び運用の改善

(1)船員職業紹介事業については、船員職業安定法に基づき、現在、国によるほか、国土交通大臣の許可により労働組合及び一部の船主団体において無料で行うことを認めているが、これは中間搾取等が発生するおそれがなく、船員の労働保護に問題がないことから、認めているものである。

(2)近年、厳しい海運経営環境の下、海運企業における新規学卒者等の若年船員の雇用は減少してきており、将来的な船員不足が懸念されている。このような中、無料船員職業紹介事業については、中間搾取等の弊害につながることのないよう配慮しつつ、実施主体を可能な限り拡大する等、従来の規制のあり方について次のとおり見直しを行うことが必要である。
①実施主体の拡大
(ⅰ)船員教育訓練機関については、その目的が船員を養成し海運界に送り出すことにあることに鑑みるならば、自ら船員職業紹介事業を実施できるよう措置することは、新規学卒者等の就職の促進により将来の船員不足の解消に資する観点から、極めて有効なものである。したがって、現在認められている無料職業紹介事業者の対象をこれら船員教育機関まで拡大することとし、陸上労働分野では教育機関について届出制により無料職業紹介事業が認められていることを踏まえ、これら船員教育機関が国土交通大臣への届出により無料で職業紹介事業を行うことができるよう制度化することが必要である。
この場合、船員教育訓練機関の無料船員職業紹介事業の制度の骨子は次のとおりとすることが適当である。
・国土交通大臣に対する届出制
・帳簿の備付け、国土交通大臣に対する事業報告書の提出
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・国土交通大臣による船員教育機関が行う船員職業紹介事業に関する指針の公表
・国土交通大臣による船員教育機関に対する指導、助言、改善命令
・国土交通大臣による事業の停止命令
(ⅱ)(財)日本船員福利雇用促進センターは、船員の雇用の促進に関する特別措置法に基づき船員職業紹介事業を行うことが認められている。しかしながら、同センターが現在実施している船員職業紹介事業は、国の船員職業紹介機関で実施することが困難である外国海運企業と日本人船員との間の紹介事業のみとなっている。同センターについては、必ずしも当該紹介事業の実施のみに限る必要はないことから、同センターにおいても国内海運企業に対する紹介事業を実施することが適当である。
② 運用の改善
国による無料船員職業紹介事業については、求職求人者に対するサービスの一層の向上を図るため、平成14年度から、
(ⅰ)求人・求職の電子申請化、求人・求職のデータベース化等電子化システムの構築、
(ⅱ)全国の地方運輸局、運輸支局等に求人者及び求職者が求人求職情報の詳細を自由に検索閲覧できるタッチパネル式の端末を設置、
(ⅲ)地方運輸局や全日本海員組合など民間の無料職業紹介所の持つ求人情報の概要を(財)日本船員福利雇用促進センターに集約し、求職者が自宅のパソコンから自由に検索閲覧できるインデックス情報ネットワークの構築を行うことにより、求人求職のミスマッチを解消し、就職機会を拡大をすることとしているが、上記システムの有機的な連携を図るとともに、必要な改善を行い、求職求人者に対する一層のサービス向上を目指す必要がある。

2 有料職業紹介事業
(1)一方、民間における有料による船員職業紹介事業については、陸上労働分野では、短時間あるいは短期間の就業を希望する層の増加等労働者の意識の変化、サービス経済化の進行、産業構造の転換等労働力需給両面において広範・多様な変化が生じることが見込まれることから、これに対応するため、民間における労働力需給調整システムについて改善、充実を図る必要があるとの考え方により、許可制による民間有料職業紹介事業を制度化しているところであるが、船員労働分野においては、現在のところ、このような状況が見込まれる段階には至っていな
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い。上記のとおり、むしろ無料船員職業紹介事業の一層の充実・拡大が求められてきているところである。したがって、現時点では、民間における有料船員職業紹介事業について制度化することは、適当ではない。
(2)なお、国際的には、民間における船員職業紹介を認める「船員の募集及び船員職業紹介に関する条約(ILO第179号条約)」の批准国は未だ6か国にとどまっており、大勢は依然として民間の船員職業紹介を禁止している「海員の職業紹介に関する条約(ILO第9号条約)」を批准している状況である。

Ⅲ その他
民間における船員労務供給事業及び船員職業紹介事業について制度化された場合は、適切な運用等の観点から、適当な時期に見直しを行うことが必要である。
[ 付記]
以上の本研究会の報告に関し、労働側及び使用者側の委員から、それぞれ次のような意見が表明された。
○ 労働側委員の意見
1 船員派遣事業者の対象となり得る者のうちの「これらに準ずる者」については、船員労働の特殊性に鑑み、船員の雇用責任、船舶の所有者責任、船舶の安全運航確保の観点を考えれば、船舶を所有せず、裸用船も受けていないものを含めるべきではない。
2 派遣船員については、船員保険が適用されるよう措置を講じること。
3 法制定当時と比較して船員の配乗形態が大幅に変更した状況を踏まえ、船舶所有者の解釈について船員法上の疑義がある。
4 船員派遣事業に関するスキームを新たに制度化することについては、船舶所有者の雇用責任の明確化及び官労使による管理機構の設置が是非必要である。
5 船員派遣事業の制度を適正に運用するため、許可の条件、許可の手続き、許可後のチェック、派遣事業者以外の者のまがい行為の防止対策など具体的な措置を講じ
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ること。このためにも、上記の管理機構は必要条件である。

6 外航海運においては、船員の減少に歯止めが掛からず、日本人船員の確保育成は緊急な政策課題として関係者が鋭意取り組んでいるところである。一部から指摘のある雇用の流動化に対しては、日本人船員の確保育成に否定的な側面が否めず、船員保護の立場から、法の厳正な適用とともに限定的な必要最小限の制度改革にとどめることが望まれるところである。

○ 船主側委員の意見
1 船員派遣事業者となり得る者を、船舶を所有する者、裸用船を受けている者又はこれらに準ずる者としているが、この派遣事業者には、船舶を所有しないが、船舶管理契約により船員の配乗、船舶の運航及び船舶の保守を委ねられたもの等が含まれることを明確にすべきである。
2 船舶管理会社にあっては、船舶を所有しなくとも船員を雇用できることを明確にすべきである。
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