内航船舶管理基礎講座001「船舶管理とは」

内航における船舶管理の定義を述べたものは、次のようなものがある。

国土交通省:「船舶管理とは、船舶を海上輸送の用に供するために整備し、法律に基づく部品・備品を備え、船員を雇用・配乗させ、貨物を積んで運航するための機能を船舶に与え、荷主の要求する港間の海上輸送を安全かつ確実に行うために必要な支援・船員に対する指揮を行うこと」[1]

日本船舶管理者協会 事務局:「内航船の船舶管理を行う船舶管理事業者は、内航海運事業者から業務委託を受けて、船舶の総合的な管理が行える会社であり、船員の雇用・教育を自らが実施し、海務・工務のノウハウを有しており、内航海運事業者の望む総合的且つ必要なニーズに応じた船舶管理業務サービス(アウトソーシング)を提供出来る会社であるべきだと思われる。」「船舶の運航管理における、① 安全運航管理,② 保守管理,③ 雇用・配乗・教育を全て管理してこそ、安全運航に関するノウハウが蓄積されるものであり、蓄積された安全運航に関するノウハウこそが船舶管理事業者が内航海運業者に対して提供出来る最大のメリットの提供といっても過言ではない。」[2]

日本海運集会所:「船舶管理とは海運業において広義には「船主業務」のことをいう。すなわち、ある船舶に対して船員を配乗し、船用品・部品・潤滑油等を手配し、保険をかけ、修繕ドックを含む保守・整備をする等の諸業務である。」[3]

内航海運は、国内における海上貨物輸送であり、荷主から荷物を預かり、積み地から目的港へ安全に輸送することを求められている。このために、まず必要なのは、輸送の手段としての船舶である。

この場合、船舶の調達に関しては、自社で所有するか、他者の船舶を借りてくるかで分かれる。

そして、調達した船舶を、ハードの面とソフトの面で、安全に運航できるようする必要がある。つまり、船舶の検査を受け、必要な船員を乗船させ、運航に必要なものを積み込ませ(例えば燃料、予備品、工具、水、食料など)運航できる状態にしなければならない。ここでも、それを自身で行うか、他者に委託するかに分けられる。

そして、準備が出来れば、実際にその船舶を積み地に向かわせ、積荷を行い、目的港まで安全に運航することが必要になる。

この中で、船舶が貨物を積み込み、海上運送ができる状態に保つための管理と実際に貨物を輸送させ、目的地まで安全に運航できる状態を保つための管理を行うことが船舶管理と言える。

その中には、必要な船員を雇用し配乗させる「船員管理」、必要な検査を受けさせ船舶の状態を維持するための保守を行う「保守管理」、船員に適切な指示を与え目的地までの航海を安全に行わせる「運航管理」(または安全運航管理)が存在する。

この3つを合わせて、一般的に、フル管理と呼んでいます。

これに対し、3つの管理要素の内の1つまたは2つを管理することを部分管理と呼んでいる[4]

参考文献

[1] 国土交通省:『内航海運グループ化について *マニュアル*』p2,2008.03.

[2] 日本船舶管理者協会 事務局:『内航海運関連法と実際の運用 - 国土交通省との意見交換会を踏まえて -』,pp.38-39,2006.09.

[3](社)日本海運集会所 「船舶管理入門」編纂委員会 編:『船舶管理入門 -船舶管理の実務がわかる本』,p1,2008.04.

[4] 松尾俊彦・森隆行:「内航海運における船舶管理の在り方に関する一考察」,『海運経済研究』,第48号,pp.53-62,2014

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