平成30年1月31日、船舶管理会社の活用に関する新たな制度検討会は、検討結果として『船舶管理会社の活用に関する新たな制度について(これまでの議論を踏まえた整理)』を発表しました。
内容(以下、転載)
1 . 登録制度創設の趣旨
内航海運は、国民生活や経済活動を支える基幹的輸送インフラとしての重要な役割を担っている。これは、内航海運が長年積み重ねてきた安全・安定輸送の確保があればこそであり、今も弛まず取り組まれている結果、過去1 0 年間で事故件数が約24% 減少するなどの成果にも表れている。今後、さらなる安全性の向上を前提としながら、内航海運が「安定的輸送の確保」「生産性向上」を目指し、安全・良質な輸送サービスを持続的に提供していくことが求められる中、内航海運業者は、従来にも増して安全かつ効率的な事業運営を意図すべきものと考えられる。現状、内航海運業者は、船員の配乗・雇用管理や船舶の保守管理、運航実施管理について、さらなる高度化が求められており、限られた経営資源の中で、こうした船舶管理に係る業務をアウトソーシングすることには、一層の安全・効率化を追求するという側面があると考えられる。
また、内航海運の発展や内航海運業者の事業基盤の強化の観点からは、船舶保有者責任を保持しつつ、船員を雇用する事業者に船舶管理業務を委任する場合( 船舶管理会社との船舶管理契約)、船舶保有者責任の移転を受けた契約先事業者が、船員を雇用する場合( 内航海運業者( みなし内航海運業者を含む)との裸用船契約)など、多様な選択肢を活用できるようになることは、内航海運業者の事業運営に大きなメリットをもたらすと考えられる。
こうしたメリットの深化、広範化の一つのツールとして、船舶管理会社の登録制度を設け、船舶管理会社の業務の情報や品質を「見える化」することにより、登録を受けた船舶管理会社の業務の品質の向上、安全品質の高い船舶管理業務の安定的かつ継続的な実施を確保することとする。
2 . 登録の対象範囲
本登録制度における船舶管理業務の内容は、船舶管理業務の実態等を踏まえ、船員を雇用し、管理する船舶に配乗等する業務である「船員配乗・雇用管理」、管理する船舶の堪航性を維持する業務である「船舶保守管理」、及び配乗する船員を通じて管理する船舶の運航実施を管理する業務である「船舶運航実施管理」の3 つを対象とする。
特に、3 つの業務を一括して行い、一定水準以上の船舶管理業務を提供する登録船舶管理事業者が増加することにより、船舶管理業務全体の質が高まるとともに、登録船舶管理事業者による集約的な管理が行われることにより、船舶管理業務に係る内航海運業者の負担を減らすことが可能となる。このため、3 つの業務を一括して実施する者を「第一種登録船舶管理事業者」として登録の対象とすることとする。また、内航海運業者が保守費用の効率化を図ろうとするなどの需要に対応し、船舶保守管理業務に係る船舶の入渠時等の業務のみを実施する者を「第二種登録船舶管理事業者」とすることとする。
なお、内航海運では、船舶毎に用船契約や船舶管理契約を締結することが一般的であることから、ある登録船舶管理事業者が、船舶により異なる立場( 第一種登録船舶管理事業者又は第二種登録船舶管理事業者)であることが起こりうるが、登録要件等を踏まえ、第一種登録を受けた事業者は、第二種登録船舶管理事業者としての業務を行うことも可能とする。
3 . 登録制度の仕組み
( 1 )船舶管理業務を営もうとする者は、国土交通省に備える登録簿に登録ができることとする。
( 2 )登録に当たっては、人的要件や業務遂行能力などの登録要件を設けるとともに、登録船舶管理事業者は、船舶管理業務に当たって、一定の事項を遵守することとする。これらの事項には、船舶管理業務に関する規程の作成、契約先の相手方や組織内の円滑なコミュニケーションの実施等を盛り込むこととする。また、登録船舶管理事業者は、業務に係る年次報告をすることとする。
( 3 )国土交通大臣は、登録船舶管理事業者が適切な業務運営を行うため、必要な指導、助言及び勧告をすることができることとする。また、登録船舶管理事業者が行う船舶管理業務に関して不正又は著しく不当な行為をした場合等においては、登録を抹消することができることとする。この場合、一定期間は、再登録ができないものとする( 業務に関して他の法令に違反する行為や( 2 )の事項が遵守されない場合などを想定)。
( 4 )登録の有効期間を設け、その更新時には自己及び第三者による船舶管理業務に関する評価を実施することとする。なお、有効期間については、最初の登録期間と更新の登録期間とに関し、安全品質の確保や遵守事項を踏まえて検討の上、制度設計することとする。
4 . 登録制度の位置づけ
本登録制度は、一定水準以上の船舶管理業務の質を有する者を、「見える化」するものとして位置づける。
登録制度に基づく情報の公表、指導等により、登録を受けた船舶管理会社は、適正に業務を遂行することが求められ、その結果として一定水準以上の業務の質を有するものと位置付けられる。このため、内航海運業者が船舶管理契約を締結しようとする際に、船舶管理会社の管理水準の把握が容易となると考えられる。
船舶管理契約の締結や船舶管理会社の活用が十分に進んではいない現状を踏まえ、登録制度の創設に当たっては、柔軟な制度運用を可能としつつ、規範性を有する枠組みとしての告示による制度が、創設の趣旨に資すると考えられる。
5 . 登録制度の効果
登録制度の創設により、以下のような効果が期待され、船舶管理業の健全な発展に繋がると考えられる。
( 1 )登録船舶管理事業者の情報は公表されることから、登録船舶管理事業者においては、安全性の確保や生産性向上について、一層の業務遂行の適正化を図ることとなる。また、内航海運業者は、当該情報を船舶管理会社選択の判断材料として活用できる。
( 2 )内航海運業者による、登録を受けた優良な船舶管理会社の活用が進むことで、適正な船舶管理業務の遂行が内航海運業において広く普及することが期待される。
( 3 )登録船舶管理事業者は、国土交通大臣の定めた登録要件を満たす船舶管理業務を提供できる者として、また、一定期間後の評価の実施により、継続的に当該業務を実施することができる者として、社会的認識度を高めることができる。
6 . 船舶管理業務適正化に向けた制度構築の課題と当面の方針
( 1 ) 登録制度の周知について
登録船舶管理事業者及び内航海運業者に対して、登録制度の導入により登録船舶管理事業者に遵守が求められる事項の周知や、船舶管理契約と用船契約における契約形態や責任関係の相違等の理解の醸成について、継続的に取り組む必要がある。また、登録船舶管理事業者が利用可能なシンボルマーク等を作成して、登録制度について、一層の周知、普及を図ることが重要である。
( 2 ) 登録の促進及び内航海運業の活性化について
内航海運業者が登録船舶管理事業者を活用する場合のインセンティブの設定等の登録を促進するための取組みをはじめ、内航海運業の活性化に資する事業環境の整備を図ることが重要である。
( 3 ) 評価制度の具体化
安全品質の高い船舶管理業務の安定的かつ継続的な実施を確保するため、「3 .登録制度の仕組み」の( 4 )のとおり、登録船舶管理事業者は、登録を受けた業務を適切に遂行しているかどうかについて、一定期間後、自己及び第三者による評価を実施することと
なるので、当該評価の評価事項や運用方法等の具体的内容については、今後、検討を進める必要がある。