交通政策審議会海事分科会 第4回内航海運部会議事録(H15.10.20)

国土交通省,『交通政策審議会海事分科会 第4回内航海運部会議事録』,平成15年10月20日

目 次

1.開会 ………………………………………………………………………………… 1
1.資料の確認 ………………………………………………………………………… 1
1.臨時委員の交代 …………………………………………………………………… 1
1.議 事
(1)競争的市場環境の整備について ……………………………………………… 2
(2)社会的規制の見直しについて ………………………………………………… 14
(3)その他 …………………………………………………………………………… 33
1.閉会 ………………………………………………………………………………… 33


以下、管理者専用

開 会
○参事官 定刻になりましたので、ただいまから交通政策審議会海事分科会第4回内航海
運部会を開催させていただきます。
本日は大変御多用中のところ御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。
私は、事務局を務めさせていただいております、海事局参事官の丹上でございます。ど
うぞよろしくお願いいたします。
資料の確認
○参事官 まず最初に、お手元の資料の確認をさせていただきたいと思います。議事次第、
配席図、それから資料一覧ということで資料が4種類ございます。それと、参考資料とい
うことでございます。よろしゅうございますでしょうか。
臨時委員の交代
○参事官 本日は内航海運部会の委員に変更がございましたので、御紹介を申し上げます。
相原臨時委員にかわりまして、臨時委員に御就任いただきました金丸委員でございます。
○参事官 どうぞよろしくお願い致します。
なお本日は、大和委員が急遽御出席できないということでございますが、総委員8名中
6名の御出席でございますので、交通政策審議会令8条1項による定足数を満たしており
ますことを御報告申し上げます。
また、当部会につきましては、御案内のとおり情報公開の観点から、会議自体を報道関
係の方々に公開するとともに、議事録等を国土交通省のホームページに掲載することとし
ておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議 事

*****1*****

(1)競争的市場環境の整備について
○参事官 それでは議事に入らせていただきます。部会長、どうぞよろしくお願いいたし
ます。
○部会長 本日もよろしくお願いを申し上げます。
早速議事に入らせていただきますけれども、本日、全日本海員組合の井出本委員が海外
出張のために御欠席でございますので、政策教宣局長に御出席をいただいております。よ
ろしくお願いを申し上げます。
それでは、前回の分科会で提示をされました検討スケジュールに従いまして、今回は2
つの事柄、競争的市場環境の整備、もう1つが社会的規制の見直し、これらについて御議
論をいただきたいと考えております。
最初に議題(1)「競争的市場環境の整備について」、事務局から御説明をお願いしたい
と思います。
○国内貨物課長 資料2、輸送の安全の確保を含めた「競争的市場環境の整備」について
説明させていただきます。座らせていただきます。
資料2をご覧いただきたいと思います。局長の私的勉強会であります内航制度検討会で
検討してきました内航海運業法を中心とします見直し、大体中身がまとまりました。その
結果を今日、この場で報告させていただきますと同時に、さらにこの場で御審議をいだた
きまして、内容をもんでいただく、ブラッシュアップしていただくという趣旨で御説明さ
せていただきます。
まず1.趣旨・目的でありますが、内航海運の活性化のためには、やはり民間活力の一
層の発揮が不可欠でありまして、参入規制の緩和ですとか公正かつ透明性の高い市場機能
の整備によりまして、競争的な市場環境の整備を図ることが必要であります。
また、輸送の安全が損なわれますことのないように、事後チェック体制、特に安全面を
強化しまして、輸送の安全の確保を図る必要があります。
このような2つの目的を持ちまして、内航海運の規制緩和を目指したわけでありますが、
この動きにつきましては平成 13 年7月の閣議決定、新総合物流施策大綱、あるいは平成
14 年3月の閣議決定、規制改革推進3カ年計画におきまして、物流分野におきましても規
制改革、参入規制、運賃料金の規制の緩和等、政府方針に盛り込まれておりますので、そ
のような方向に沿った検討となっております。

*****2*****

具体的には経緯のところでありますが、1年前の昨年4月に海事局長の私的懇談会であ
ります「次世代内航海運懇談会」で、「次世代内航海運ビジョン」、すなわち内航海運ビジ
ョンが取りまとめられました。
その中で、1の問題意識に基づきまして、「内航海運業法改正を中心とします事業規制の
見直しによる競争的な市場環境の整備が必要である」ということがうたわれていたわけで
あります。
私どもは、この内航海運ビジョンの提言を受けまして、1年前から、やはりこれも同じ
ように局長の私的勉強会であります「内航海運制度検討会」を立ち上げまして、この場で
御検討をいただいたわけでございます。
内航海運制度検討会は、きょう御出席の加藤先生に座長を務めていただきますと同時に、
学識経験者、有識者、あるいは立石内航総連会長初め各事業者の皆様方、井出本全日海組
合長ほか関係者の皆様方に参加をいただきまして、1年余りで、どのように内航海運業法
を中心とした事業規制の見直しが必要かというものを、勉強させていただいたわけでござ
います。
3.にありますが、以下のとおり大体方向が取りまとめられましたので、これをこの場
で報告をさせていただきたいと思います。
まず第1に、参入規制の緩和等でございます。これは大きく分けて3点にまとめてござ
います。まず第1点ですが、参入規制。現在内航海運業法は許可制になっております。こ
れを登録制に緩和しようということであります。現在、許可制、これは主に一般需要への
適合性、あるいは基準船腹量に基づきまして許可ということになっておりますが、後で説
明します最高限度量の範囲内で許可をする。あるいは3年の荷主の具体的な保証が必要だ
ということで、需要を見ながらやるという形になっておりました。
あるいは、基準船腹量といいまして、例えばオペレーターにつきましては、最低でも3
隻、1000t以上でなければ許可の対象としないというような形で、大分ハードルが高くな
っておりました。
それを規制緩和という観点から、船をつくるためにはどうしても資金が必要でございま
すので、そのような資金があるかというような観点からの適切な資金計画、あるいは確実
な船員配乗計画、船を動かすためには、本当に船員を持っていただかなければ困ります。
だから、そのようなものがあるかというような資質を見させていただきます。客観的、外
形的な基準に基づきます、登録制に緩和をするという形でまとめました。

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そして、基準船腹量でございますが、やはり3隻、1000t以上というのは余りにもハー
ドルが高過ぎるということでございまして、1隻以上の船を持っていればいいというよう
な形に、今後基準を改正させていただくという形で、参入規制を大幅に緩和をしたところ
でございます。
2番目が、事業区分の廃止についてであります。現在は内航運送業(オペレーター)と
内航船舶貸渡業(オーナー)の2つに区分されております。許可を受けておりますオペレ
ーターは、現時点で 701 事業者、1261 隻。一方、許可を受けておりますオーナーは、現時
点で 2866 事業者、3266 隻という形になっておりまして、荷主と運送契約をできますのは
オペレーターだけという形になっております。
非常に最近、意欲的なオーナーの皆様方もふえております。また一方で、荷主、オペレ
ーター、オーナーという形のピラミッド構造が業界の動きを鈍くさせている面もございま
す。そういうことで、すべての内航運送事業者が荷主と運送契約を締結できる形に持って
いきまして、この辺の事業区分を廃止し、意欲的な事業者が活躍できる道を開きたいと考
えての改正でございます。
ページを1枚おめくりいただきたいと思います。3点目が、適正船腹量・最高限度量制
度、そして標準運賃・標準貸渡料制度の廃止であります。現在は国土交通大臣が毎年適正
船腹量を定めまして、告示をするという形になっております。適正船腹量は法律に基づき
まして、交通政策審議会で御審議をいただき、この審議結果に基づきまして、国土交通大
臣の告示を定めて公示をするという形になっております。
この交通政策審議会、毎年 11 月から 12 月にこの件で開催をしていただいておりますの
で、多分、次の交通政策審議会の海事分科会には、これをあわせて諮らせていただくとい
う形になりますが、そういう形で、適正船腹量というものを毎年告示をさせていただいて
おります。
そして、これは船種ごとになりますが、著しく船腹量が過大な船種があれば、それは最
高限度量を設定するという制度になっておりまして、過去におきましても昭和 39 年から
44 年、あるいは昭和 58 年から 61 年と2回、最高限度量を設定をしたという経緯がござい
ます。
先ほどお話ししましたように、最高限度量を設定を致しますと、実質的にそれ以上内航
事業者の船を増やすことができない、許可が事実上凍結されるという制度になっておりま
す。この制度は非常に需給調整的な色彩が強い制度でございますので、今回の規制緩和、

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自由競争のもとにおける活性化という趣旨には大幅に反しますので、この辺も廃止しよう
というのが1点でございます。
2点目が、標準運賃と貸渡料制度でございます。これについても、標準運賃と標準貸渡
料、例えば非常に用船料、運賃が低下をしたと、あるいは市場を混乱させているという状
況があれば、国の方で標準運賃、標準貸渡料を定めまして、それを守っていただく。守っ
ていない場合には遵守勧告、あるいは措置命令を出すという制度になっておりまして、過
去におきましても、昭和 40 年代に1回設定をされたことがございます。
現在、内航海運業、運賃貸渡料については規制が一切ございません。唯一この規制等が
あるわけでございますが、これもやはり規制緩和、自由競争という中においては、非常に
現実離れをした制度であると思いますので、この辺もあわせて廃止をしたいと思います。
以上の2点でございますが、ただし適正船腹量につきましては、これは法律上の制度と
しては廃止をしたいと思いますが、ただ行政庁による情報提供等の一環としての役割は、
今後も必要ではないかと考えております。船種ごとの船腹の需給がどうなっているかとい
う情報提供は、規制という観点からじゃなくて、単に行政サービスという観点からは必要
ではないかと思いますし、そのような要望も非常に業界からも強うございますので、これ
は行政の一情報提供措置として、今後も続けていきたいと思っております。
次がⅱでございます。ⅰが参入規制の緩和等でございますが、ⅱは公正かつ透明性の高
い市場機能の整備でございます。これも中が3点になっております。
まず、適正な取引環境の整備です。ここは内航海運業法の改正とは関係ない部分でござ
いますが、内航海運業の活性化のためには非常に大きいウエートを占めております。実は、
本年6月に下請法が改正をされまして、来年4月より施行の予定でございます。
オペレーターとオーナーの間の不公正な取引につきましては、来年4月1日以降、下請
法の適用対象になります。今まで製造業が中心でございましたが、内航海運業もこの下請
法の対象に加わりまして、下請いじめといいますか、そのような行為が厳しく規制される
ことになります。
一方、荷主とオペレーターの間でございますが、これにつきましては残念ながら下請と
いう関係にありませんので、下請の対象になりません。しかしながら、荷主とオペレータ
ーの間で不公正な取引が多いのではないかという意見が、前々から業界から強うございま
した。また、下請法の改正の前に、公正取引委員会が行いました公正取引委員会独自の調
査でも、そのような状況が多々見受けられるという形になっているようでございます。

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それで、今回の法律改正にあわせまして、衆議院で6月に附帯決議がついております。
下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する方針に対する附帯決議ということで、荷主と
元請事業者との間の取引におきましても、荷主が優越的地位に立つ傾向が高いことを踏ま
え、荷主の優越的地位の乱用行為の防止を図る観点から、独占禁止法に基づく特定の不公
正な取引方法の指定など、所要の措置を講ずることという附帯決議がつきました。
これを受けまして私ども国土交通省海事局と公正取引委員会の方では、断続的に調整を
続けさせていただいております。公正取引委員会も来年4月1日を目指して、この特殊指
定を活用し、荷主とオペレーターの間の取引の正常化を図りたいという気持ちを持ってお
ります。
これにつきましては先月、内航総連より不公正な取引方法について、どのような不公正
な取引があるのか、その辺の実態と、このような取引形態を特殊指定の告示で書いてほし
いというものを提出していただきました。それを公正取引委員会の方に提出しますととも
に、現在公正取引委員会の方といろいろ、どのような形でどこまでやるかを調整をさせて
いただいているところでございます。
特殊指定は独占禁止法第2条、9条に基づきます、本当に不公正な取引が実態としてあ
る、あるいは起こる可能性が高いものを指定しておりまして、現在6業種が指定されてお
ります。
例えば、新聞社と新聞販売所ですとか、あるいはデパートとデパートの中に入っている
テナントとか、非常に多い商行為の中におきまして、その中で特に優越的地位に基づきま
す乱用が行われやすい業界を規定されております。
今回、名誉といいますか不名誉といいますか、内航海運業法もその対象として取り上げ
ることになりましたので、ではどのような行為がだめかということを、今やっているとこ
ろでございまして、一応このような行為が行われておりますので、このような形で告示指
定してくれというものを公取に提出をしていただきました。
公正取引委員会の方では、私どもが提出しました資料を踏まえまして、再度内航業者の
皆さんにアンケート等をやって、その裏をとると同時に、あるいは鉄鋼業界、石油業界等
主な荷主団体等に聴聞を行いまして確認をした上で、来年度4月1日から告示を施行する
ということで、準備を続けていただいております。これは法律とは関係ない分野でござい
ますが、大分進行しているところでございます。
2つ目が、運送約款規制の導入であります。現在、RORO船、コンテナ船、不特定多

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数のものを荷主とする船種につきましては、ほとんどの事業者が一応約款は持ってはおり ますが、各事業者、統一性が図られていない、あるいは不十分だという嫌いもございます。 そこで、RORO船、コンテナ船と不特定の荷主を対象とする船種につきましては、一応 運送約款の作成、届出を義務づけまして、利用者の皆様が利用しやすい形で行政側で担保 させていただくという形を入れたいと思っております。 ③が営業報告書の提出でございます。現在、内航海運業法は許可という非常に強い規制 をとっていながら、内航海運業者からの報告は一切とっておりません。我が貨物課の方で 承認統計としまして、任意でいろいろ統計をとらせていただいておりますが、前々回もた しかこの場で、私、経営状況等を発言をさせていただきましたら、それは大分実態と違う んではないかという御意見もいただきましたが、そのようなこともないように、ほかの業 種すべてが営業報告書の提出を義務づけておりますので、私どもの方も事業者の負担にな らない範囲で、必要最低限の内容の報告は聴取をしたいと思っております。 そういうことで、営業報告書の提出を、法律上はっきりと位置づけをしたいと考えてお ります。 ⅲで、輸送の安全の確保です。参入規制の緩和等々、公正かつ透明性の高い市場機能の 整備に並びまして、やはり輸送の安全の確保、これは今回の法律の改正、規制緩和という 流れの中にありまして、事業者の皆様に若干御負担になる部分かと思いますが、輸送の安 全確保は非常に重要でございますので、この点は最低限は整備させていただきたいと思い ます。 一つは、今まで全く何もありませんでした。しかしながら、安全を図るという観点から、 各事業者に運航管理規程を作成し、届出を指定していただく。そして、安全管理の責任者 であります運航管理者を選任して、届出をさせていただくということをやっていただきた いと思います。 近年タンカーなど、非常に海難事故が増加しております。また、環境問題、テロ問題等 で、安全に対する国民の関心も非常に高まっております。そういう中におきまして、安全 の運航につきまして、事業者皆様方の方でそれぞれ規程を作成いただき、責任者を定めて、 その辺の管理の意識と体制を図っていただきたいということの義務づけでございます。 念のために、輸送の安全確保のための事業活動が余りにもおかしい場合には、是正命令 制度も取り入れさせていただきますが、ほかの業態にあるような形で、最低限安全の確保 等は務めさせていただきたいと思います。

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以上のような形で、競争的市場の環境整備を図るために、内航海運業法を中心としました制度の見直し等を図りたいと思います。
以上が、内航制度検討会の場におきまして、8月 27 日にいただきました結論でございますが、きょうこの場でこれを報告させていただきますので、これをさらに御審議いただき、こちらの方で御回答をいただければと考えております。
以上でございます。

○部会長 大変ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関して御意見、御質問等、何なりとお願いをいたしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

○委員 先ほど御紹介ありましたように、本年8月に内航海運制度検討会で、ただいま国内貨物課長が御報告しましたような報告書を取りまとめいたしました。
この懸案につきましては先ほど説明がありましたように、一昨年、次世代内航ビジョンを検討していたわけでございますが、杉山座長のもとで検討した方向として、業法の中で実際に機能をしていないものについては、それは整理しましょうと、これが第1点であります。
これはかなり長い間懸案であったわけでありますが、各界からいろんな御指摘があったところであります。
それから、何といいましても基本的な方向は、21 世紀に我が国の物流のほぼ 50%になっている内航の活性化。特に業界の活性化が必要不可欠であろう。そういう点では、活性化のために、できるだけ活性化がしやすいような方向で法律を見直すべしということです。
ただその場合に、先ほどもいろいろ議論があったところでありますが、もう一つ、暫定措置事業を行っているわけであります。その暫定事業もつつがなく推進するということを一方では頭に置きながら、かつそれだけで内航の活性化はできないというスタンスで、非常に真摯に議論をしていただきまして、こういう結果を取りまとめたところであります。
なお、若干先ほど国内貨物課長から御指摘がありました営業報告書、それから従来の船腹の情報提供、さらに運航管理規程というものについては、他の運送事業を担っているものについても内航海運についても、それを横並びでスタンスをそろえた方がベターではないか。特に、営業報告書につきましては、大変負担になるという御意見もあったわけでありますが、内航 50%を担っているという点からしますと、国としてそれがスムーズに展開すべし義務ありと。そういう有効な政策を展開するためには、実態を正確に把握しないと

*****8*****

有効な政策ができないという観点から、営業報告書については御協力いただくということであります。
それから、運送約款の問題についても、今まで当然各業界マターでは行われているわけでありますけれども、きちっとそれも位置づけをすることが必要ではないか。それから環境、対テロ、これは海、環境、それから港務、こういうところで言って危機管理が非常に大事でありますから、運送管理規程というもので、国が一定程度責任を負う。安全を確保するために、是正命令も必要な場合には、行政は責任を持って対応します。これが我が国の物流を担っている内航業界に対する国の責任の取り方でもないかと考え、それで結構でしょうということになったわけであります。
なお、我々で議論したところで不十分なところがあれば皆様の御意見を伺って、どんどん前向きに検討していただくことはやぶさかではございませんので、よろしくお願いします。

○部会長 ありがとうございました。
それではどうぞ、いかがでございましょうか。

○委員代理 公正かつ透明性の高い市場機能の整備につきまして、今、独禁法の特殊指定の関係につきまして進捗状況の御説明がありました。ぜひ、これを実現をしていただきたいというのが1点でございます。
また、ちょっと幼稚な質問で申しわけございません。オペレーター、オーナー間の取引と独占禁止法の関係で、利用運送の関係はどういう位置づけになりますかね。複合一貫輸送の利用運送でやられるのは、私らとすればオペレーター、オーナーという関係になるのかなとは思うんですけど。
利用運送事業法が改正になりましたよね。海上運送も利用運送の複合の中に組み込まれることになりましたので、そういう関係の取引はどういう形で位置づけられるのか。単純な質問で申しわけございません。

○惟村国内貨物課長 独占禁止法の絡みについては、一応特殊指定は今のところ荷主とオペレーターの間ということでやっておりますが、利用運送事業については、今後の取扱いについて公正取引委員会と担当部局の間で現在調整中と聞いております。

○委員代理 オペ、オーナーの関係は。

○国内貨物課長 オペ、オーナーは下請法の対象という形になります。それは既に法律改正で整理されております。

*****9*****

○委員代理 利用運送は対象になるんですか。

○海事局長 荷主と契約できるのは今オペレーターだけですよね。ですから、今、実運送として荷主と契約をしてオペレーターが運んでいると。
今度利用運送に関して言えば、海運二種というのが新しくできましたので、その許可をとればフォワーダーとしての仕事ができると思うんですね。
今回内航海運業法が改正されて、全ての海運業者が荷主と契約ができるようになれば、従来オーナーであった方も、実運送ができることになりまして、さらにフォワーダーとしての業務もできることになるんじゃないかと思うんですけどね。
よろしいですか。

○委員代理 私が心配しているのは、複合一貫輸送の中で、従来陸上の業者が海上輸送をやるときには別契約となっていまして、今回二種の関係で改正になりましたね。国会の附帯決議つけたのもあのころの話だと思うんですけど、陸上の業者が集配から配送まで一貫輸送を引き受けて、その中で海上運賃も込みで一貫輸送を契約すると。そういったときに、複合一貫輸送を引き受けたところと、海上運送の間で取引が起こると思うんですね。そうすると、一貫輸送の契約の中身によっては、相当海運事業者が圧迫を受けるという心配が今、あるわけです。
ですからこの関係の取引が、いわゆる下請法の関連で考え方としてあるのであれば、取り扱いの改正にかかわる一つの救いになるんですけど、野放しになると、一貫輸送の中で海上運賃だけが皆しわ寄せを受けるという危惧を持っているものですから、こういう発言をさせてもらいました。

○海事局長 フォワーダーと荷主との関係は下請法の対象にならないので、多分特殊指定の方で関係が整理されるんじゃないですかね。

○委員代理 いわゆる利用運送事業者と実運送事業者の関係ですよね。そういうところで海運業界がしわ寄せを受けなくなるように、御当局としてもぜひ御努力を願いたいと思います。

○部会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。

○委員 許可制から登録制というのは当然の流れであろうと思うんですが、現状から見てこういうふうに登録制に変わることによって新規参入が激増して、業界が混乱に陥るということはないんでしょうか。そういう場合、何らかの経過措置を考える必要がないのかど

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うかというのが1点。
それから、登録制になることによって、体質も当然自由になるわけなんでしょうけれども、例えば地域的、運ぶ品物別によって、より山の多いところに船腹が集中して、一種のいいところどりのような現象が起きて、運ぶものによってはなかなか運んでくれる業者が見当たらないというような、いびつな構造にならないのかどうかというのが第2点。
それからもう1点、適正船腹量について、一応情報提供の一環として役所の方で算定、公表されるということでありますが、現実的に役所がこれが適正だという船腹量を公表されますと、何らかの事実上の拘束力を持つことになって、なかなかこの量を超えて、新たに建造しようという業者が出てこないおそれがないのかどうか、その辺をお伺いしたい。
○国内貨物課長 まず、ここ数年で船腹量が 23%近く減っております。現時点におきましては、適正船腹量が、多分次回の海事分科会にかけると思いますが、ほとんどの船種で需要と供給がバランスがとれた状態ではないかと思います。景気も今、回復してきておりますので、ここで規制緩和というものをやれば、意欲的な事業者、あるいは参入したいという方々が入ってくるかもしれません。それは私どもが内航海運業の構造改善、活性化を図るというところのねらいとしているところでございます。
当然、入ってくる方々がいれば、その市場から出ていかれる方々もいらっしゃいます。
そこにつきましては私ども、今年度の国土交通省の予算の重点施策の方におきましても、内航の構造改善、規制の改革を進めると同時に、セーフティーネットという形で、今暫定措置事業等やっておりますので、そこの保障枠の拡大等を強化しまして、セーフティーネットも強化し、また出ていかれる皆様方につきましても、その辺で円滑に出ていかれるという形の体制を調えようとしているわけでございます。
そういう形で入られる方もいる、あるいは非常に古い体質を持っておられる、あるいは非常に今苦しい内航事業をやっておられまして早く出たいという方もいらっしゃる。その中でうまく新陳代謝が回っていくような形で、暫定措置事業と組み合わせをしましてやっていきたいと考えております。
それで内航の方の場合ですが、一部の船種は違いますが、ほとんどの場合が荷主と内航業者の間の1対1の世界でございますので、参入し、船をつくって入ってこようという方々も、普通のタクシーですとかトラックと違いまして、非常に設備投資も多く必要とする業界でございますので、その点は皆様方、ちゃんと荷主をつかまえて、そのコネクションで参入してくるというのが通常の状態といいますか、ほとんど 100%に近い状態ではないか

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と思いますから、そういう意味では、今、自由化したところで非常に過剰になったり、あるいは足りないような船種が出てくるというような自体は、全く想定されないんじゃないかという気持ちでおります。
次に、適正船腹量の方でございますが、これは私ども一つの指標として、今例えばタンカーはこれから5年間、どのぐらい油の需要があって、今船はこのぐらいですよというのを情報提供として利用していくということでございますので、事業者の皆様方も政府のそれを参考にしながら、個々の荷主の皆様方と話し合って、十何億円の設備投資をしていただくということでございますので、これから入ってこられる方は設備投資を十分に吟味して自己の責任で対応されるものと想定しますから、その辺の心配は余りしておりません。
以上でございます。

○委員 ただいまの御質問につきまして、委員会での議論を若干補足説明させていただきますと、1つには、許可から登録に直したというのは、実態が既にかなり違ってきましたよと。そういう点では、そういう意味での御指摘のような混乱はない。そういう意味で、できるだけ実態に即し、かつ新規に刺激を与えましょうと。しかも押さえるところはきちっとしたファイナンスがある、それから配乗はできますよということであれば、御指摘のような、かつてあったようないわば投機的なものが出てこないだろうというのが委員会の判断でございます。
それからもう一つ、かえって公表すると規制強化になるんじゃないかということも、基本的にはこの制度は従来SB方式で船腹調整をやっていたわけでありますね。そのためにはめどが必要でありますから、そういう点では国が責任を持って、適正な船腹量を将来5年間でずうっと予測していたわけでありますが、制度的にはそれはなくなったわけであります。形式的には、それは残してくれという業界からの非常に強い要望もありましたけれども、しかし実際には船種によっては適正である、特にタンカーなんかそうでありますが、非常に季節変動が激しいものについては、果たして適正な一定のものが出せるかどうかという問題も、制度的には抱えていたんです。
特にオーナーと言われる業者はたくさんいますので、大体どのぐらいの船が走っているのかなというところは、ぜひ知りたい、インプットしておきたい。それはそれぞれの業者が受ける造船計画においても必要であろうということで、その点についてはできるだけ正確な情報を提供することは、国土交通省の責任ではないかというスタンスでありますから、強化するというようなことにはならないと、委員会では確信しております。

*****12*****

○部会長 よろしゅうございますか。
2番目の御指摘の点は、普通みんなすぐそこを、どういう意味になるのかなということは、どうしても気になる点だろうと思うんですね。説明を一旦受けて情報提供だと言われると、それはその通りだとは思うけれども、でも要らない法律は廃止するということに使った理由からすると、それは要らないから廃止した方向なので、でも残しておくとそれはどういう使われ方になるか、どういう位置づけになるかということは、ちょっと気になるんだろうと思いますけどね。そこはまた適切な御説明を、ぜひ御用意いただければと思います。
ほかにいかがでございましょうか。

○委員 私は大学の都合でもって、今までこの部会にほとんど出ていないものですから十分理解していない点がありまして、誤解しておりましたら御指摘いただきたいと思います。
今、資料2で御説明いただいた競争的市場環境の整備という、この中身については私、基本的にはこのとおりじゃないかなと思うんですけれども、いわゆる規制緩和の位置づけをどう理解したらよろしいのかという点を教えていただきたいと思います。
実は中間報告を見せていただきましたら、冒頭で内航海運の利点というものがいっぱい書かれておりまして、この利点が市場で評価されるならば、当然荷主は選択するだろう。
しかしながら現実として、例えばモーダルシフト化率等をとってみても、目標に達していない。ということは、まだそこに選択の自由性といいますか、何らかの競争条件の侵害というものがあって、それを除去するためにこのようなことを位置づけているんだという理解でよろしいのかどうか。
その場合に、2枚目のⅱの①の適正な取引環境の整備ということで、荷主側に関しても、「適正」という言葉は私は非常にひっかかるんですけれども、客観的な判断をするような環境が与えられるということになりますと、このような規制緩和を行えば、市場で荷主がより客観的な選択をして、その結果として社会的に好ましい姿が出てくるんだという位置づけでよろしいのか。
そして、ちょっと先取りになって申しわけないんですけれども、きょうの議事の(2)の社会的規制の見直しについてということに結びつける場合は、さはさりながら、教科書的な完全競争の市場というのはあり得ませんので、そこで社会的規制というものに関して見直す。ですから、社会的規制を規制緩和の方針の中での補足的な位置づけというような形でもってとらえてよろしいのかどうなのか、そこをお教えいただきたいと思います。

*****13*****

なお、もうそんなこと既にやっていたよということであれば、どうぞそのように取り計らっていただきたいと思います。

○国内貨物課長 今、先生がお話しされましたように、大体そういう方向じゃないかと思いますが、私が説明しました趣旨・目的にありますように、活性化のために民間の活力を活用しまして、規制を緩和し、いろいろと障害がある分野、あるいは実態と合わない分野を取り除かせていただくということで、活力を取り戻していこうという趣旨の部分でございます。
それで荷主との関係もちょっとございましたけど、当然そのような自由競争になりますと、現在でも荷主が内航海運業者に対して非常に強い立場にございます。それで、実態的には不当に運賃をたたいているとか、運賃以外に業務の依頼と合わせまして抱き合わせでほかの行為を強いるとか、いろいろそのような状況が多々見受けられるようでございます。
規制緩和して自由な市場になればなるほど、ますますそのような荷主の優越的な地位の乱用も予想されますので、あわせましてそこはここにありますように特殊指定ということで押さえていこうと。そしてなるべく対等で自由な市場をつくって、その中で内航海運業の活性化を図っていこうという趣旨の全体の構成でございます。
全体的には先生がおっしゃった方向ではないかと、私は思います。

○部会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。

(2)社会的規制の見直しについて
○部会長 議題の2番目は、「社会的規制の見直しについて」ということですが、これも事務局からまず御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○船員政策課長 私の方では資料3を用いまして、社会的規制の見直しとされている部分の一つの柱、船員職業安定法の改正にかかわる問題について、御説明いたしたいと思います。
社会的規制の見直しについては、今の杉山委員の御質問にもあるいは関連するかもしれませんですけども、中間報告の中では、「良質な輸送サービスの提供には優良な船員の安定的確保が必要であり、船員の労働の保護とその雇用の安定を図りつつ、海上労働力の適正

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かつ円滑な移動を確保するため、船員の労務供給事業などに関する規制の見直しを行っていくことが必要である」とされている中間報告に盛られている考え方に従いまして、現在私どもの方で作業をしております。
社会的規制の見直しという観点で言いますと、一つはこの中身が船員職業安定法という法律に直接関連すること、また船員職業安定法は後ほど労働環境課長の方から説明いたします船員法という船員の労働保護に関する法律と密接に関連をしております。したがいまして、方向性としては既に中間報告に取りまとめられた方向性で、現在検討を進めているわけでございますが、具体的な施策の中身等につきましては、かなり大量の法改正になりますので、法制的な検討等を慎重に行う必要性があり、現在作業を進めております。
従いまして、今日はこれまでの議論を若干御紹介申し上げまして、御審議の参考に致したいと思います。
それでは資料3でございますが、この職業紹介にかかわる部分につきましての最近の検討は、船員職業紹介等研究会で行っておりました。船員職業紹介等研究会の位置づけにつきましては、当初始まったときはまだ船員部というのがあったときなんですが、船員部というところで、ここに挙げられておりますような学識経験者、これはもちろん加藤先生に座長になっていただいております。それから私ども、全日本海員組合、船主協会、内航総連、旅客船協会、大水といった関係者の方にお集まりいただきまして議論を始めました。
議論を始めた一つのきっかけは、平成8年に海員に関する職業紹介に関する条約が改正されました。その内容は、職業紹介については公的な職業紹介所が中心だという、その原則には変わりがないんでございますけども、より間口を広げるという観点から、一定の規制のもとに有料職業紹介も認める方向があるのではないかということで、条約が改正されています。
それが一つのきっかけでございましたが、そのほかに、特に陸上労働者に関しまして職業紹介事業、あるいは労務供給事業に関して、昨今の状況の変化を踏まえまして大きな動きがございました。
特に典型的なことと致しましては、昭和 61 年に陸上労働者に関しては、特別の法律を設けまして派遣事業を認めるという法改正が行われております。そうした動き、あるいは職業紹介につきましても、陸上の職業安定法は随時改正をされてきたという動きを踏まえまして、労働保護に配慮しながら、労働力の適正な需給調整を行えるような方向は何かということを、関係者で議論してまいりました。平成9年に議論が始まりまして、加藤先生の

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御努力によりまして、平成 14 年7月に研究会としての報告の取りまとめが行われております。
1枚めくっていただきますと、その報告会で取りまとめるに当たりまして、当時の関係者の方々が議論の前提といたしました背景について説明をしております。船員職業安定法は昭和 23 年制定の法律でございまして、船員の労働保護法として戦後すぐつくられた法律でございます。
そこでの基本的考え方は、「労務供給契約に基づいて他人の指揮命令下で労務に従事させることを業として行うと、強制労働、中間搾取の可能性、使用者責任の所在が不明確となるおそれがあるので、労務供給事業は民間で行うことは禁止」という法律でございます。
当時の状況は、昭和 23 年でございますので、戦前からの労働環境もそのまま引き継いでいった中であったと。これはよく出てくる言葉でございますが、海上労働においてはボーレンという事業者がいたようでございまして、このボーレンというのは船員さんが下船されてから次に乗船されるまでの間、宿舎などの施設を提供するような事業者でございます。
もちろん宿舎の提供だけじゃございませんで、次の乗船までのいろんなあっせんも事実上行っていました。
このボーレンは、一面では便利な面もあったのかもしれませんが、そのまま船員を拘束をして、次の乗船につなげていくということで、中間搾取のおそれが多分にあり、労務供給事業について、特に船員については、海の上がすみかだという海上労働の特殊性も反映いたしまして、特にこの点は厳しく規制をしていく必要性があったというのが、船員職業安定法の制定当初の事情であったと思います。
その後、我が国がだんだん豊かになってくるにつきまして、労働環境につきましては引き続き厳しい面もございますが、このような前近代的な支配関係については、陸上のみならず海上の方も近代化が進んできたということがございます。
そうしました労働環境の近代化が大前提でございますが、特に最近の傾向として、非常に厳しいコスト競争という中で、船員の労働状況も大きく変化をしてまいりました。
船員の労働状況の変化ということで3つ挙げておりますが、船員につきましては船に雇い入れられている状況、それから下船をして次の船に乗るまでの間、これを予備船員と称しておりますが、予備船員である状況と両方ございます。伝統的な船員法の考え方であれば、乗船して下船するまでは雇い入れ契約で、それから下船から次の乗船までの関係は予備船員として整理をされているわけでございますけども、今の非常に厳しい経営状況の中

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では、船会社と致しましては、例えば需要に応じて船員を一定数抱えておくということが非常に困難になっております。
それから、船員の大きな特徴と致しまして、技能労働職という性格がございますので、船員の場合は例えば雇い入れられていない状況におきまして、船員としてより高度な資格を得る。あるいは最近の傾向で言うと、さまざまな国際条約がございまして、船員に対しての要請がいろいろ高まっております。そうした国際条約などに基づきます要請に応ずるように、さまざまな講習を受けていただく必要性がある。これも皆、乗り入れていない状況の中で行う必要性があります。そうしたものを、船員を雇用しながら行っていくというのが、非常に船会社にとっても困難になってきている。
それから、これは水産について特徴的なことでございますが、水産の場合には漁期で雇い入れておりますけども、漁期につきましては季節性がございますので、実際の船員の動きとしては、ある漁期が終われば次の漁期には別の魚種に乗り込むということで、漁業種間の移動が恒常化しております。
この結果、船員に関しましては、いわゆる労働力につきまして、需給の状況について一定の波動性があるという特徴がございます。これをどう今、対応してきたかと申しますと、現在の段階では転籍ということで、ある需要がある段階ではある特定の船舶消費者に雇用されていて、それが次の船舶消費者にいく場合にはそこをやめて、陸上で言うと会社をやめて次の会社に雇われるということでございますが、転籍という形でその需要に応じてきたということでございます。
転籍をすれば雇用主が変わりますので、労働条件も変更されるし、労働者に対しまして指揮命令、また雇用している人としての責任が不明確になるというデメリットがございます。これが船員の労働状況の変化として、最近の厳しい競争の中で非常に顕在化をしてきた。
もう1つは、特に内航において顕著でございますけども、若年船員の雇用が減少してきている。したがって、雇用対策全般について強化をする必要性があるという背景がございました。
こういう背景をもとに、先ほど申し上げました研究会におきましては、需要に応じ、かつ安定的な船員供給システムとは何ぞやという議論をしていただいたわけでございます。
その議論の概要が3枚目でございまして、船員労務供給事業及び船員職業紹介事業に係る規制改革のあり方に関する報告の概要ということで、若干報告書全体を細かく挙げていま

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すので、簡単にご説明致します。
船員労務供給事業と船員職業紹介事業の柱は2本でございまして、船員労務供給事業について、検討会で官公労使全員の見解が一致した部分は、船員労務供給事業に関しまして、常用雇用型船員派遣事業を制度化する、その制度化に当たっては、国土交通大臣による許可制を前提とするということがまとまりました。
陸上の派遣労働法におきましては、この常用雇用型のほかにもう一つ、登録型労務供給事業がございます。この違いは、常用雇用型派遣事業の場合は派遣事業元に常に雇われている労働者が、派遣契約に基づいて派遣先に供給されていく。
登録型というのは、派遣元に登録をしておきまして、派遣元との雇用契約は派遣期間中に限って行われるという形になります。今回船員について導入いたしますのは、常用雇用型船員派遣事業の制度化でございまして、登録型労務供給事業につきましては、これは今公的機関でございます船員雇用促進センターにおいて、現在行われるようになっております。それを引き続き行うという形を前提に致しまして、民間に開放いたしますのは常用雇用型船員派遣事業の制度でございます。
その理由と致しましては、先ほど申し上げましたとおり、今回の改正の趣旨が安定的な雇用関係を確立することにございますので、その意味では派遣元事業主に雇用主としての責任を明確に求めまして、その明確な責任を果たす派遣元が派遣する場合、つまり許可制でございますので、許可を与える際にそれをチェックを致しまして、そのような雇用主としての責任を果たせる派遣元事業者から派遣する場合のみ、認めるという制度でございます。従いまして、船員については登録型労務供給事業を開放することは致しません。
それから、労務供給事業に該当しない形態の整理というのが真ん中にございますが、この部分は、今回の船員職業安定法の改正をいろいろ検討をしていく中にありまして、実態については実はさまざまな船員と、それから船会社の関係、雇用関係、支配関係があるという認識が当時ございまして、その意味で現実、実態をどのように整理するのかという議論がかなり行われたわけでございます。
その意味で、平成9年から平成 14 年まで時間をかけまして議論をしてきたわけでございますが、そこで見解の一致を見ることをできなかった点がございました。
一つは、在籍出向による船舶への配乗をどうとらえるか。在籍出向と申しますのは、ある会社に籍を残したまま他の会社に出向して、雇用契約が出向元と出向先の両方にある形態、これを在籍出向と、一般的な概念として呼んでおります。

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その在籍出向によって船舶に乗り込ませる場合に、それをどうとらえるのか。これは労務供給事業に当たるのか、当たらないのか、そこにかなりの議論がございました。
それから、最近船舶管理会社という名前のもとにいろんな会社が、通常の船主から船舶管理にかかわる業務を、アウトソーシングを受けまして業務を行っております。そうした船舶管理会社が船舶管理契約によって行っている、管理船舶への船員の配乗をどうとらえるかというところの議論もございました。
この場合、在籍出向にいたしましても、船舶管理につきましても、実態を前提にした議論でございますので、実態はさまざまな形態がありました。その部分について整理することが必要だという認識とともに、平成 14 年の段階では一部見解が不一致でございました。
それから職業紹介事業の方は、無料職業紹介事業と有料職業紹介事業と2つに大きく分かれます。現在、ILOの国際条約という関係では、有料職業紹介事業も一定の規制のもとに認めることになっていますが、この検討会での結論は、現時点で我が国において有料職業紹介事業を制度化することは、時期尚早ということで不適当となっております。
船員というのは、労働市場が陸上と比べまして比較的狭い世界で市場がございますので、有料職業紹介事業として、例えば紹介事業に公的な紹介事業者以外の方が参入されてくる、果たしてまずニーズがあるのかどうか。もしニーズがないにもかかわらず、有料職業紹介事業を積極的に認めていくと、船員の場合に非常に狭い市場、つまり雇われる先もそれほど広くないということで、そこでやはり中間搾取の可能性が出てくるのではないかということで、現時点で我が国において制度化することは、不適当という結論に至っております。
無料職業紹介事業の方は、現在も公的機関の職業紹介のほかに、無料職業紹介事業は船員を代表する団体、あるいは船主を代表する団体等で行われることになっておりますが、そこに船員教育訓練機関を加えようという形で議論がまとまっております。
それから、SECOJと書いてありますが、先ほども出てまいりましたが、船員雇用促進センターのことでございます。船員雇用促進センターは、従前は国の職業紹介では職業紹介をすることは困難でありました外国企業に対しましての職業紹介のみを実施してまいりましたが、これもやはり内航の船員労働力の適正な確保ということもございますので、今後、国内海運企業に対しても職業紹介ができるように対応していくということが、方向性としてまとまったところでございます。
そのほか職業紹介事業について、陸上の職業安定法の規制を踏まえて、あるいは最近の電子政府化の動き等を踏まえまして、運用の改善を図ろうということがまとまりました。

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先ほど申し上げました、労務供給事業等に関します見解の不一致の部分は、付記のところで若干細かく書いてございます。労働者側、消費者側それぞれの御意見がございまして、そこで御懸念されていたことは、派遣事業者というものをどうとらえていくのか。船員を雇用する事業者として、本当に雇用責任を果たせるのかどうかというところが一番大きな論点であったと、かように私どもは感じております。
労使の間で一番意見が一致しなかったところが、「派遣事業者の対象者に船舶を所有していない者を含めるべきではない」とされるのが労働者側の意見であり、消費者側の意見は、「派遣事業者の対象者に船舶を所有していない者などを含めるべきである」と、この点が一番大きく分かれたところでございます。
いわゆる船員法におきましては、雇用責任を求めている、船員を雇用する人としての定義を船舶所有者と称しております。伝統的には、船舶を所有されておられる方が船員を雇用して、みずからの船舶にその船員を配乗するというのが典型的な労働形態でございますが、船舶運航管理の効率化等の観点から、最近は船舶の実質的な所有と、それから船舶の運航責任、あるいは運航管理の業務自体については、必ずしも同じ人が行っていない。その中で船員を雇っておられる方の責任をどこに求めるかということが、議論になったということでございます。
これが平成 14 年7月の段階で、一応委員会としてはこれで取りまとめをいたしまして、見解不一致の部分につきましては引き続き議論をいたしましょうということで、1年間議論してまいりました。
3枚目をめくっていただきますと、その後約1年をかけまして、これを本年6月 27 日付の文書で、関係者の間で合意を得た部分でございます。先ほど御説明いたしました、検討会報告を受けました関係者間の調整結果ということで、これはほかにも論点がございますけど、幾つかの論点のうち主要なものを挙げております。
一つは、さまざまに議論がございました船舶管理会社の位置づけということでございます。船舶管理会社という名のもとでいろんな会社がございましたので、このうち現行法で適法とされる船舶管理会社は何かということの議論を整理したのがこの部分でございます。
現行法上、船員法の船舶所有者、つまり船員の雇用者としての規定の適用をすることが可能な船舶管理会社、つまり船舶の運航管理、保守管理、船員の配乗、雇用管理を一括して行う船舶管理会社であれば、これは船員法上の船舶所有者として取り扱い、現行法も適当であるという考え方で整理を致しました。

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このことは逆に申しますと、もしこのうち船員は例えば配乗しつつも、船舶の運航管理は別の会社がやっているという場合には、恐らくそうした会社は先ほど申し上げましたような考え方に基づきます、新たな派遣事業者として、派遣事業者の許可を受けた上で行わない限りは、それは船員職業安定法上違法な労務供給事業を行う会社として摘発をされるということが、明確になったわけでございます。
それから次に、これも検討会では結論が出なかった部分でございますが、船員保険の適用をどの範囲で求めるのかという部分でございます。船員保険につきましては、我が国の船員保険法でございますので、船員法の適用がある船員というのが前提になっております。
この場合に、現在は船員法の適用のある船舶というのは、我が国の国籍を有している船舶、または我が国の船会社が貸し渡しを受けた船舶になっておりますが、実際船員の方につきましては、我が国の船舶のみならず、いわゆる外国船、便宜置籍船にも配乗されることが多分にある。
これは外航中心の議論でございますけども、自分が配乗しようとする船員について効率的に運用しようと思うのであれば、日本籍船のみならず、外国籍船にも派遣をする。その際に、船員保険法が一々適用されたり、されなかったり致しますと、船員の方にとっての雇用保険という面でも支障が生ずるということで、今回は派遣事業者が雇用されている、派遣事業者は先ほど申し上げたように常用雇用しておりますので、そうした派遣制度につきましては、派遣先が外国籍船でありましても船員保険が引き続き適用されるように、明確に手当てする予定でございます。
この点は、派遣事業者と、それから派遣事業者を雇用する船員の関係で考えますと、派遣事業者に雇用された段階においては、その船員は日本籍船にも派遣される可能性がございますし、外国籍船にも派遣される可能性があるということで、ポテンシャリティーとしては、常に日本籍船に派遣される可能性があるということでございますので、船員保険法がその派遣事業者のもとで雇用されている間は、引き続いて継続して船員保険法が適用されるということについて、問題がなかろうという判断を私どもはしております。
この点について、法制的にさらに詰めを行って、法律上も明確にしていきたいと、現在考えております。
それから、船員派遣事業につきましては、これは特に労働者側の一番の御懸念の点であったのでございますが、派遣事業を認めるに当たりまして、雇用されている場所が、実は雇用主の場所と離れている。海上労働の場合は、指揮命令を受けている場所が船上でござ

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いますので、片方で雇用されているのは陸上の派遣元であるのに働く場所が海上で、別の人から指揮命令を受けるということで、船員の労働保護については懸念をされているということでございました。
この点は派遣事業者に対して、適正運用のためにどういう措置をとれるかということに、これは労使双方慎重に御検討いただいた結果でございますが、まず入り口で許可基準を厳正に適用いたします。
それから、許可後において何か問題がありました場合には申告制度を設けまして、その申告制度において、もし船員の労働保護に欠けるような実態がありました場合には、情報を十分に私どもの方に提供していただいて、立入検査を実施するなどの適正な対応をとっていくということについて、一応労使の間で関係の調整をいたしました結果、本年6月 27日にまとまったところでございます。
現在は、こうした基本的な方向で法制面の検討を鋭意やっております。船員職業安定法につきましては、後ほど説明いたします船員法と同様に、船員中央労働委員会の諮問、答申が必要とされておりますので、11 月には諮問ができるように、今法制的な検討を鋭意行いまして、11 月以降、船員中央労働委員会に諮問、その後検討いただき答申を受けるという方向でございます。
いずれに致しましても、交通政策審議会の関係で申しますと、既に中間報告で御指摘いただきましたような方向性、つまり船員の労働の保護とその雇用の安定を図りつつ、海上労働力の適正かつ円滑な移動を確保するため、船員の労務供給事業等に関する規制の見直しを行っていくという方向性については、その方向で今、法制的な検討を行っている状況でございます。
以上でございます。

○部会長 ありがとうございました。
次のもう1つのは、引き続き御説明いただけるんですね。よろしくお願いいたします。

○船員労働環境課長 関連致しますので、引き続き御説明させていただきます。
資料4をご覧いただきたいと思います。今ほど船員政策課長、国内貨物課長から説明ありましたように、「次世代内航海運ビジョン」を踏まえまして、内航海運の適正な競争環境を形成すると同時に、船員の適正な労働環境、労働条件を確保する。それから、技術革新の進展を踏まえました効率的な船舶職員の配乗を行うということから、昨年4月に官公労使からなります「内航船乗組み制度検討会」が設置されております。これは加藤委員を座

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長といたしまして、内航総連、旅客船協会、全日本海員組合、それと当局からなる検討会でございます。
この検討会が約1年余にわたりまして検討を進めまして、ことし6月にとりあえずの中間報告を行っております。その中間報告の時点で、後ほど御説明いたしますけども、幾つかまだ乗組み制度検討会の中で合意ができていない部分がございまして、現在引き続き、残された論点につきまして検討を進めているところでございます。
乗組み制度の検討の背景でございますが、これは先ほど来いろいろ御説明がありましたように、内航が置かれている非常に厳しい経営環境、輸送コストの削減が非常に強く要請されているということ。それから一方で、例えばテクノスーパーライナーとか次世代内航船の研究開発が行われておりまして、技術革新が進んでいるということ。さらには、何度か説明ありましたように、内航船員が減少の一途をたどっておりまして高齢化が進んでいる。若年船員の確保が、今難しい状況になってきているということ。
それと裏腹の関係でございますけれども、船員の長時間労働が常態化しているような船が出てきている。私ども、この乗組み制度検討会で調査いたしましたところ、短い調査ではありましたけれども、調査の全体の約 70%が通常労働時間である1日8時間を超えているという実態がございまして、かなり長時間労働が常態化しているということが言えようかと思っております。
④でございますけれども、内航を取り巻く状況が変化しておるということと、内航海運の活性化、さらに一番大事な安全運航ということを前提として、可能な範囲での規制内容の合理化・弾力化。さらに、労働と生活の場が一体となっている特殊な労働実態、陸上とは違った海上労働の特殊性ということを踏まえまして、航海の安全を確保すると同時に、適正な労働環境を確保する。
一方で、技術革新の進展を踏まえまして、効率的な船舶職員の配乗を確保するという観点から、見直しを行っていくということにしたわけでございます。
次のページをご覧いただきたいと思います。ここに書いてございますのは、かなりの部分が中間報告の時点で関係者間で合意ができたものでございますが、一部まだ合意ができておりませんで、検討中のものがございます。
見直しの基本的考え方でございますが、①の労働時間規制の見直しでございます。先ほど申しましたように、船員法におきましては船員も陸上と同様に1日8時間労働。それから、これは陸上と若干違いますけども、週平均 40 時間労働という制度がございます。その

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現行規制は維持しながら、時間外労働について合理化を図っていくということがございまして、現行法は時間外労働につきましては、船長が臨時の必要があると認めた場合は、船長の命令で時間外労働が8時間を超えてできることになっておりまして、これはともすれば船長が命令を出しやすいということで、長時間労働の法的根拠とは言わないまでも、少なくとも温床の一つの原因になっているということを踏まえまして--、実は陸上の労働基準法は、時間外労働は原則禁止になっております。労使合意があればこれを認めるということになっておりまして、労働基準法と基本的にその考え方は合わせることといたしまして、通常労働時間と合わせて1日最大 14 時間、1週間当たり最大 72 時間まで認めると。
実は、1日最大 14 時間、1週間最大 72 時間というのは陸上にはございませんけども、海上労働におきましてはILOの場でこういう条約がもうできておりまして、日本はまだ批准はしておりませんが、こういう条約が発効しております。特にヨーロッパにおきましては、1日最大 14 時間、1週間当たり最大 72 時間ということで、ポートステートコントロールまでできる体制になっております。したがいまして、日本の船も批准はしておりませんけども、場合によってはポートステートコントロールを受ける可能性があるということもございます。
そういう世界的な流れになってきているということと、船員の長時間労働を是正するという観点から、こういう制度を導入したらどうかということでございます。
ただし、括弧書きで書いてございますように、船舶の安全運航という観点から、例えば運航中に濃い霧が出たと、あるいは台風が来たという場合に、総員で船舶の行く手の見張りをするということもございます。こういう場合に、1日最大 14 時間、あるいは1週間最大 72 時間規制を導入しますと、かえって船舶の安全運航を阻害するということがございますので、船舶の安全運航を確保するための臨時労働は、この枠外として処理するということでございます。この点については現行法を維持するわけでありますけども、それ以外のものについては原則禁止して、労使合意にゆだねるということにしたいと思っております。
それから②でありますけども、配乗等の弾力化であります。一つは標準定員制の導入による定員規制の弾力化。これは船舶の安全運航を確保する、先ほど申しました専門用語で言いますと船橋航海当直、船のブリッジを見張りをするというようなものを含めた、安全最少定員を確保した上で、船舶に乗り組む総人員、航海当直だけじゃなくて、例えば清掃だとか荷役だとかいったものに含む総人員について、船の類型ごとに法定労働時間を満たす、すなわち1日8時間労働、週平均 40 時間労働を確保するための標準定員を目安として

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設定する。
これは一応の標準的な目安でありまして、船によっては同じ形態、同じトン数の船であっても、技術革新が進んでいて、標準定員を割り込んでも十分に法定労働時間を満たす場合があり得ると。逆に技術革新が遅れていて、標準定員を確保してもまだ法定労働時間を満たすだけの要員が足りないという場合もあるかもしれない。従って、標準定員を一応の目安として設定し、これに基づいて船員労務官が事後的にチェックする目安にしたいということで、設定するということでございます。
それから、次の○でありますけども、兼務制度の導入と配乗等の弾力化であります。現在、例えば甲板部と機関部の雇い入れは、兼務することは運用上認められておりません。
法律上は理論的には可能でありますけども、運用上これを認めておりません。
例えば甲板部雇い入れ、機関部雇い入れとなった場合は、甲板部は甲板部だけの仕事、機関部は機関部だけの仕事であります。
一方で、技術革新が進んでおりまして、例えば機関部で余裕が出た場合に甲板部の仕事は一切できないということに致しますと、船舶の合理化、あるいは合理的な定員配乗には適さないのではないかということから、例えば航海の安全確保に関して、航海当直体制の維持に支障が生ずる等の影響がない場合には、甲板部乗組員と機関部乗組員の兼務を認めてもいいんじゃないかということを、今現在検討している。ただし、これについてはまだ意見の一致を見ておりませんで、現在議論が進められております。
ただその場合におきましても、兼務をやったことによって、労働時間がそのためにふえると。通常労働時間の8時間労働を超えてしまうということがないようにしたい。それから、一番の基本であります船舶の安全運航に支障がないようにする。そういうことを確認した上で、兼務を認めることを検討するということでございます。
それから、限定近海に相当する航行区域に係る配乗表の新設の検討。これは船舶職員法上の概念でございますけれども、現在近海、遠海、平水におきまして、乗り組むべき最低基準としての船舶職員の人数、それから等級等を定めております。
近海と遠海の間に限定近海という概念を導入いたしまして、実は船舶安全法ではそういう概念が既にあるわけでありますが、そういうものに相当する航行区域について新しい配乗表をつくって、例えば近海を出れば遠海と、すぐ配乗する職員にかなり大きな段差があるわけでありますけども、そこに中間的なものとしての限定近海を入れたらどうかというものを、現在検討しております。これもまだ合意に至っておりません。

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それから、これとあわせまして、1600t以上の内航船については、配乗表上の船舶職員の資格レベル、等級を緩和していくということでございます。
それから③でございますけども、運航の安全性の向上。船橋の航海当直を担当する乗組員について、最低1名を海技免状受有者とすると。
現在、例えば船橋の航海当直は、船の針路についてブリッジから見張りをするものでございます。例えば 24 時間運航する場合は、24 時間当番を決めて見張りをしております。
それで、 700t未満につきましては1名、 700t以上につきましては複数当直を義務づけております。
しかし、船舶職員の当直を義務づけておりませんで、現在は部員だけの当直も認めております。
部員だけの場合は、現在は海技免状がない部員だけの当直も認めておりますが、これにつきましてはここ数年来、業界面あるいは全日本海員組合員等といろいろ議論がございまして、船舶運航の安全性を確保する意味では、知識、経験を示す能力として、海技免状を持った者を最低1名は乗せるべきではないかという考え方から、最低6級の海技免状受有者を最低1名乗せる。複数当直の場合は全員を入れなくても、最低1名でいいということにしたと思っております。
それから④でございますが、適正な労働環境の確保ということで、先ほどの労使合意による時間外労働を認めると申し上げましたけども、船内におきましては8時間労働、週平均 40 時間労働を守るということが一つの大前提でございまして、これを実際に守っていない場合は船員労務官という制度がございまして、これが事後的に乗船してチェックするという体制になっております。
こういった実態を是正していくために、船員労務官による事後チェック体制を強化する必要があるのではないかということで、ことしから導入致しました、正確には昨年度でありますけども、導入致しました監査情報電子照合システム、これは各船員労務官に携帯の端末を持たせまして、過去の監査情報、あるいは雇入契約の内容等を打ち込んでおきまして、これによってどこでいつか監査を受けて、どういう結果になったかというものをわかるようにしておくということで、船員労務官の活動の効率化を図っております。
こういったものを活用すると同時に、例えばちゃんとその規制を守っていない船をポイント制を導入して、高い船についてはブラックリスト、あるいはグレーリストに載せて、船員労務官の事後チェックを強化するということをやっていきたい。

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さらには、現在も船員法に制度としてございますけれども、船員による申告制、この船は実際は労働時間を守っていると言っているが、こういうふうなことで実際は守っていないんだという船員の申告制が現にございますが、これも積極的に活用して、労務官の監査に役立てていきたいということでございます。
それから、その他でございますけれども、乗組制度の見直しに合わせまして、雇入契約の公認を届出に緩和する。船員の雇入契約につきましては、現在は政府にこれを提出いたしまして、公認を受けることになっております。これを届出制に改める。これは船員労務官による事後チェックの強化と裏腹に、こういうふうにいたしたいと思っております。
一方で、届出制に改正するためには法律の改正が要るわけでありますけども、その法律の改正を待たずに電子化を推進いたしまして、電子申請をもう間もなく導入したいと思っておりますが、できるだけ申請者が、現在は例えば海運事務所に出向いて公認申請をする必要があるわけでありますが、こういったことのないように、負担を軽減していくということも今考えております。電子申請も現在推進しております。
それから、3級以下の海技士に係る受験資格の大幅な緩和。これは、例えば現在3級の海技免状を受験するためには、例えば近海あるいは遠洋におきましては、20t以上の船に3年の乗船履歴が必要である。他方、遠海につきましては、1600t以上の船に3年の乗船履歴が必要であるということがありまして、必ずしもバランスがとれていないということがございまして、そこら辺のことを含めて要件を緩和すると同時に、そこら辺のバランスをとっていくというふうに見直していくということでございます。
以上申し上げましたことにつきましては、例えば①の労働時間規制の見直しにつきましては、これは法律の改正が必要であります。
それから⑤の雇入契約の公認の届出を緩和も法律の改正が必要であります。
その他、法律の改正に必要なものは若干ございますけれども、②の配乗の弾力化等につきまして、あるいは③、④につきましては、必ずしも法律の改正は必要ございません。
いろいろございますけれども、こういったものにつきまして、現在最終報告がまとまるように調整を今進めておりまして、そのスケジュールの一番下にございますように、内航船乗組制度検討会の下に内航貨物船部会を設けて現在検討しておりますが、11 月には最終的な取りまとめを行いまして、法律の改正が必要なものにつきましては、先ほど船員政策課長から説明がありましたように、船中労に諮問をし、答申をいただきたいと考えておりまして、その答申をいただいてから法律の改正手続に入りたいということでございます。

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以上でございます。ありがとうございました。

○部会長 大変ありがとうございました。
両課長から「社会的規制の見直しについて」、それぞれ関連する場で議論をされてきた事柄について御報告をいただきました。船員職業紹介等研究会における議論については、先ほどの御報告で、この6月に関係者間の議論の調整のまとめがほぼついている。それから、もう一つの内航貨物船乗組員制度の見直しについては、今まさに御説明ありましたように、幾つかの点がまだ残されているけれども、それがこの後取りまとめられる予定になっている。それらを受けて、最終的にこの分科会での最終取りまとめの中に流し込んでいくということだと理解をしております。
それでは今の御説明に関しまして、また御質問、御意見等をいただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
これについても加藤先生、専らいろいろまとめていただいたんですが、何か。
○委員 若干質問をさせていただきたいと思いますが、先ほどの政策課長並びに環境課長の話では、法律の改正を要するものについては、慣行といいますか運用といいますか、船員中央労働委員会の諮問に、11 月中にはかけると。私たまたま、船員中央労働委員会の委員も兼ねておりますので、総会が第3金曜日にいつも定例でございますが、11 月の次の総会に必要な法律改正の諮問をされると理解してよろしゅうございましょうか。
○船員政策課長 事務方が余り勝手なことを申し上げるのも何でございますが、私どもとしてはそれで今お願いいたしたく、事務局と相談しております。
11 月 21 日に総会がございまして、諮問させていただいた後、職安部会ないし労働基準審議会の方で審議する形になるんじゃないかなと期待をしております。
○委員 若干補足説明といいますか、職安法の改正につきまして、それからもう一つは労働時間の規制につきまして。職安法については、国内貨物におきまして内航船員の不足について提言がなされて、それで平成4年からどういうふうにするのかという流れの中で、平成7年に健全なるマンニングを推進すべしという検討会があって、私もそのときに座長を仰せつかって、違法マンニングがあるという御指摘がありました。
そうではなしに、違法というのはどこをもって違法とするかが非常に難しい問題ですが、手続をフォローしていないから違法になるのか、実態として悪質であるのか、そこら辺の線引きが……。陸上で派遣法が制定されたときも、そこら辺はかなり精査して、要するに市民権を与えればそれは違法ではないよ、大いに活性すべしと。悪質なやつはだめよとい

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う仕切りで、60 年に職安法改正、新しく労働者派遣法ができて、その後相当大幅に派遣業によっていろんな業種が出てきた、活性化した。しかも、労働市場が非常に弾力化した。
さりとていろいろな問題があって、なかなか大変であるということを踏まえて、いろんな改正が大幅にされてきている。そういう中で船員については、今言ったようなボーレンであるとか、そういう違法マンニングがあり過ぎるということで、社会的規制の緩和がなかなか進まなかった事情がありまして、特に長い時間をとったんですが、内航ビジョンの方でかなり突っ込んだ議論をしていただきました。方向性を決めていただいたということで、関係者の御努力によってここまでできたと。ぜひこれは、速やかに実現をしていただきたい、これに携わった者としての実感でございます。よろしくお願いします。
それからもう1つ、労働時間につきましても、陸の方で 63 年に時間法の大幅な改正がなされて、それに沿って船員法上の労働時間をどうするかということを、私も 63 年から約7年間かけていろいろな議論をしてきて、今日の姿であります。
先ほど環境課長から御指摘ありましたように、ILOの条約が大分進んできちゃっている。そういうILO条約との整合性をとらなきゃいけないということと、それから先ほど御指摘ありましたように、一定程度労働時間、時間外労働を認めて、それに対して必要な対応をしましょう。
御承知のように、海上労働というのは陸と違いまして、非常に荷役とか狭水道でありますとか、忙しいときがあるんですね。ところが一方では定員問題という、最低どこまでを抑えるか、ここをどう調整するかというのが非常に難しい問題。本来であれば、荷役であるとか狭水道であるとか、そういうところを基準にしちゃいますと、そうでないところはすうっと当直だけで動いていくわけでありますね。そこら辺の仕掛けをどうするかというのが陸と非常に違うところで、そこら辺をめぐって意見が常に対立するんですけども、今回の改正の方向は、そういうものに対応しましょう。海上労働の特殊性に対応するシステムの改正ではないかと思っておりますので、ぜひこれも早急に法律改正を実現していただきたいと、強く要望しておきます。
○部会長 ありがとうございました。いかがでございましょうか。

○委員 ただ単なる感想だけを申し上げさせていただきます。
今、御説明いただいた資料3、4の内容については、関係者の方々が大変御努力をされたというように感じますので、内容については発言の対象外とさせていただきたいと思う

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んですけれども、これが位置づけとして社会的規制だろうかという疑問が、私には依然として残ります。
5ページで書いてあったんですけれども、中間報告は社会的規制は当面の課題ではないということで、私はその段階で意見を申し上げることはなかったんですが、通常机の上の議論をしている人間にとっては、これは経済的規制じゃないかなという印象が非常に強くあります。
教科書のレベルの発言で大変申し訳ないんですけれども、経済的規制というのは参入規制、あるいは価格規制。それに対して社会的規制というのは、安全規制ないしは環境保全のための規制。社会的規制も利用者が情報を持ち得ないがために、安全性の向上のためには行政が規制を行おうという理解が、一般的だというように私は考えております。
その観点から致しますと、確かに「安全性」という言葉が両方に入っているものですから、それを強調するんだという理解ならばそうかなと思うんですけれども、多分机の上で勉強している人間にとっては、これが社会的規制という位置づけでいいのかなと、こんな違和感を持つ人が少なくないんじゃないかなという感じが致します。
ただこれは、あくまでも私の感想ですから、議題として取り上げていただく必要はないと思います。

○部会長 ありがとうございました。
今の委員の御指摘、もともと社会的規制と経済的規制、区別のつきにくいところもあるし、いかなる規制でも経済的な意味も持つし、社会的な意味も持つ、そういうことはありますけれども、一般的な議論からすれば、今の社会的規制という言葉に余りぴったりこないのではないかということでしたが、何か事務局あるいは局長の方から。

○海事局長 我々自身も検討していて、どっちかいうと明らかに経済的規制と思われる部分と、明らかに安全問題なのか社会的規制というか、その中がいろいろあるわけですが、我々が考えていますと、労働環境というんですかね、それは必ずしも資料3、資料4で言っていることが経営の観点から言っているというよりは、船の中の労働環境にいかに船員の仕事の体系を合わせるかというような観点で見ていたものですから、どっちかというと安全なり環境なりという方かなと思って書いているところがございます。
確かに先生おっしゃるとおり、ちょっとはみ出ているのかもしれませんけども、もし適当な言葉があればそれでもいいんですが、多分どっちかに分けるとすると、こっちだったのかなというような気が致します。

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ちょっと御説明になっているのかどうかでございますが。

○委員 私も労働法を専門としているものですから。1つは、船員法関係については戦前からでございますから、戦前の場合で言いますと、海商法の中で船員労働が議論されたんですね。それはヨーロッパの常識だったんです。
そういう点では、まさに杉山先生がおっしゃるように、かなり経済的な活動の規制の一環ですが、戦後になってがらっと変わっちゃいまして、ここで出ているような法律は、すべからく憲法 27 条を基本にして、労働者保護をすべしという観点でできているんですね。
そういう点では、ある意味では経済的な規制よりも社会的な規制かなと。
ところが近年の状況は、陸の労働時間法にしましても、すぐれて弾力化をしましょうと。
最近では裁量労働なんていう概念も大きく出てきまして、労働時間規制そのものも非常に弾力化しましょうと。
それから、職安法もそうでありますね。マーケットの需給関係をかなり弾力化しましょうと。新しいビジネスが出てくるのをターゲットにする。
さらに雇用保障の問題でも、恐らく来国会に出てくると思います。今国会でも雇用期間、期限づきの期間も、今までは完全に労働者保護という観点で1年で絞っていたのを、民法に近い、民法は5年の期間が可能であると考えているんですけども、恐らく今回の法律改正は原則3年、例外で5年という形になってくる。
そういう点では、最近のいわば先生がおっしゃったような観点からすると、従来は労働者保護という観点で、すぐれて社会的な側面が強かった。ところが近年の改正の視点は、やはり経済的な視点から、より活性化、弾力化、あるいはそういうことによって新しいビジネスが我が国ででき上がってくるという観点から、いろいろな手を加えられておりますので、今、局長がおっしゃったように、どちらにするかというのは非常に……。それぞれ議論しますと、恐らくそれだけで神学的な議論になるのではないか。
我々の立場からすると、憲法 27 条は依然として改正されておりませんから、そういう点では憲法 27 条を憲法上の基盤に持っている法律については、こういう振り分けをすれば社会的な規制の性格が強いのかなという理解でございます。

○部会長 先生、よろしゅうございますか。

○委員 恐らく規制とか規制緩和の文献なんかでは、非常に理解しにくいところがある。
ただし、これはあくまでも文献上のことですから、最終報告とか最終答申のときには、こういう意味で社会的規制という説明があればいいと思うんですけども、いきなり出ちゃう

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とわからない人が出てくるんじゃないかなと思います。

○海事局長 わかりました。

○部会長 今、先生がおっしゃってくださまいしたけども、先ほど局長が、ほかに本当にいい表現が出てくればということもございましたが、多分それもまた難しいんだろうと思うんですね。
ですから最終の取りまとめのところで、今御指摘あったような点がもしうまく手当てできれば、それを考えていただければ一番いいのではないかと思います。ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
よろしゅうございますか。
もし特段の御意見、御質問がないようであれば、今日残された2つの側面について、これまでの議論の進捗、あるいはまとめられるであろう方向について御説明をいただき、私どもの分科会としての意見もいろいろ出てまいりましたので、それを適宜踏まえていただいて、まとめをかけていくということになるかと思いますが、そんなことでよろしゅうございますでしょうか。
それでは、本日の議論はここまでにいたしたいと思います。

(3)そ の 他

○部会長 議題(3)に「その他」とございますので、進行を事務局にお返しして、何かありましたらよろしくお願いを申し上げます。

○参事官 本日はまことにありがとうございました。
次回の内航海運部会についてでございますが、本日いただきました御意見等も踏まえながら、分科会の検討スケジュールに従いまして、最終答申案について御審議を賜りたいと考えております。
なお、開催日時につきましては、後日調整をさせていただきたいと思っております。
また、次回会合までの間に、私どもの方から各委員の先生方に答申案について御相談をさせていただくこともございますので、その際には御指導方、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

以上でございます。

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○部会長 それでは以上をもちまして、交通政策審議会海事分科会第4回内航海運部会を閉会とさせていただきます。
お忙しいところ御出席をいただきまして、大変ありがとうございました。

閉 会

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