船員の働き方改革とりまとめの骨子案
令和2年6月26日(金)WEB会議にて、第125回 交通政策審議会 海事分科会 船員部会が開催され、船員の働き方改革とりまとめの骨子案が提示されました。
同年7月の第126回 船員部会にて、とりまとめ案が文章で示される予定です。
以下、資料から引用したものを掲載します。
*****以下、引用*******************************
1.船員を取り巻く状況の変化と働き方改革の意義
- 我が国の生産年齢人口の減少や内航船員の高齢化等、将来の船員確保に懸念。
- 陸上では、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方の選択を可能とする働き方改革を推進するため、先般に成立した働き方改革関連法等に基づき、職場環境の改善など魅力ある職場づくりに向けた取組みが進められている。
- 将来にわたって優秀な船員を確保していくためには、「船員の働き方改革」の実現によって、船員という職業を陸上職にも負けない魅力ある職業へと変えていくことが必要。
2.内航船員の労働や船内生活の実態
- 内航船員は陸上労働者と比べて労働時間が長い傾向にあり、また、長期連続乗船といった厳しい就労環境下に置かれている。
- 特に、荷役時間と労働時間の長さには相関関係がみられ、特に、荷役の頻度が高い場合や、1回あたりの荷役時間が長い場合、労働時間が長時間に及ぶ事例がみられる。
- 他方、仮バースが週に1回程度確保されている場合には、1週間あたりの労働時間が法律上の上限である72時間の範囲内におさまるケースが多くみられる。
- 船員の労働時間について、大半の事業者(陸上の事務所)では、船内記録簿をもとに把握しているが、職住一体である船内では労働時間と休息時間の線引きが難しく、船内記録簿の記入の仕方にも課題がみられる。
- 内航船員は高ストレス者の割合が高く、また、船員は陸上職と比べて肥満者やメタボリックシンドローム、疾病率が高いなど、高い健康リスクにさらされている。
3.労働時間の範囲の明確化、見直し [R1.11 船員部会]
- 職住一体である船内における各種活動について、労働時間として取り扱うかどうか、必ずしも統一的に取り扱われていない。
- 操練や引継ぎ作業等については、労働時間への算入や対価の支払いを要しないとされている。
【主な方向性】
- 職住一体の船内における各種活動について労働時間の該当性の明確化
- 労働時間への算入や対価の支払について例外的に取り扱われている作業※の見直し
※ 「防火操練、救命艇操練その他類する作業」、「航海当直の通常の交代のために必要な作業」
4.労働時間管理の適正化 [R1.12 船員部会]
- 労働時間等の記録様式(船内記録簿)について、適切に記載されていない事例等が見受けられる。
- 労働時間の適切な管理について、陸上の事務所や使用者の責任の有無等が不明確。
【主な方向性】
- 船内記録簿のモデル様式の見直し、見直し後のモデル様式の業界への推奨
- 電磁的方法を活用した労働時間の記録・保存の方法について業界としての導入可能性の検討
- 使用者(船舶所有者)に船員の労働時間を適切に管理する責務があることの明確化
- 使用者(船舶所有者)の下での労働時間等に関する事項の記録・保存
- 陸上の事務所における労務管理責任者(仮称)の選任、当該責任者への研修等の実施
5.休暇取得のあり方 [R2.1 船員部会]
- 雇入契約書等において、下船時期が不定とされている場合などがある。
- 仮バースの定期的な取得等、船員の疲労回復のための取組みが必要。
【主な方向性】
- 基準労働期間について現行の取扱いの維持
- 雇入契約書等における具体的な下船時期の明示の徹底、求人票等における柔軟な乗船サイクルを設定した事業者の見える化等、各事業者における乗船サイクルや休日の取得等に関する積極的な取組みの促進
- 船員労働制度上の重要なポイント(例:休日の事前通知等)についての荷主・オペレータ等に対する十分な周知(基本政策部会での議論を踏まえた対応)
- 仮バース取得に対する荷主・オペレーター等の理解促進(基本政策部会での議論を踏まえた対応)
6.多様な働き方の実現 [R2.2 船員部会]
- 男性船員に比して女性の労働参加や定着が進んでいない。
- 女性活躍の推進、仕事と育児等の両立を図るための制度の趣旨・内容について、事業者の理解が十分でない場合がある。
【主な方向性】
- これまでの労働慣行にとらわれない事業者による積極的な取組み(例:船員の働き方に関する経営層の意識改革、育児休業等の関連制度に対する理解促進や適切な運用 等)
- 事業者の積極的な取組みを促す環境整備(例:求人票の様式改訂を通じた事業者の取組みの見える化 等)
7.船員の働き方改革の実効性の確保 等 [R2.3 船員部会]
- 働き方改革を着実に進めるため、関係者による取組を実効あらしめる環境整備が必要。
- 若者等の定着を図るためには、適正な就業機会の確保等を図るための環境整備が必要。
【主な方向性】
- 労働関係法令・制度の周知と浸透(例:説明会の開催やモデル就業規則の作成 等)
- 労働関係法令・制度の遵守に向けた監督指導や支援(例:監査手法・体制等の見直し 等)
- 労働環境改善に向けて取り組む事業者の見える化(例:トリプルエス大賞の実施 等)
- 求職者本人の希望に即した的確なマッチングの推進、求職者の就職後のトラブルの未然防止(例:求人票に明示する情報の充実化、求人申し込みの不受理の範囲拡大 等)
- 雇入契約に係る手続きの見直し(船員の労働保護と負担軽減の両立)
8.健康確保 [R1.5~7 船員部会]
- 高ストレス者の割合が陸上に比して高く、特に内航船員の割合が高い。
- 肥満者やメタボリックシンドローム、疾病率が陸上職と比して高く、健康リスクが高い。
【主な方向性】
※ 以下の方向性に沿って具体的な制度設計を健康確保検討会等において検討中
- 医学的な見地から健康確保をサポートする仕組み作り(産業医、ストレスチェック、面接指導等)
- 情報通信技術の活用による船内健康確保の実現
- 内航船員の特殊性を踏まえたメンタルヘルス対策のあり方
- 労働安全衛生確保としての健康診断の位置づけ(健康証明の位置づけの見直し)
- 生活習慣の改善による健康増進対策(船内供食制度の見直し)