船員養成の改革に関する検討会 第1次中間取りまとめ

船員養成の改革に関する検討会 第1次中間取りまとめ

平成31年2月7日

船員養成の改革に関する検討会

*********以下、本文転載*********


船員養成の改革に関する検討会 第1次中間取りまとめ

「船員養成の改革に関する検討会」は、目指すべき船員養成の改革の方向性を取りまとめるため、平成 33 年度(2021 年度)から開始する海技教育機構第4期中期計画への反映を視野に置いて開催しているものである。
一方、「内航未来創造プラン」(平成 29 年6月)において、質が高く、事業者ニーズにマッチした船員の養成に取り組むとともに、4級海技士養成定員の拡大、学生募集の強化を目指すため、海上技術短期大学校への重点化、航海・機関の両用教育から専科教育への移行等に取り組むべきことが指摘されている。これらの事項について具体的な内容の検討を進めることにより全体の作業を加速化するため、また、同機構の財源確保についての検討を行うため、まずできるところから議論を行ったところであり、ここまでの議論の区切りとして、第1次中間取りまとめを行うこととした。

1.内航新人船員の養成規模のあり方等について

内航新人船員の養成については、海技教育機構の海上技術学校(海技学校)及び海上技術短期大学校(海技短大)において大型船まで乗り組むことができる4級海技士の養成を行う一方、民間養成施設において主に 500 総トン未満の小型船に乗り組む6級海技士の養成が行われている。海技教育機構の4級海技士の養成定員(現在 390 人)については、「内航未来創造プラン」において「500 人を目指した段階的な拡大」としているところである。
現在、いまだ高齢化率の高い内航業界の状況に対応した若手船員の安定的な供給が求められているところであるが、今後の内航船員の新規就業者数について、直近の年齢階層別船員数を基に、今後 10 年間の内航船員数の総計が微減のケース~微増のケースまで幅を持たせて試算し
たところ、毎年必要な新規就業者数は平均 1,000 人~1,260 人となり、過去3年間における新規就業者に占める海技教育機構出身者の割合(約40%)に変化がないとすると同機構の養成定員は、400 人~500 人と推計された。
内航船員数の将来予測については、経済成長、モーダルシフト、船舶の大型化等の様々な要因が影響することから、今後さらに精査していくことが必要であり、また、試算結果に一定の幅があること、さらに船舶の大きさや海技士資格に着目してみると、4級海技士、6級海技士ともに不足感がある中、特に小型船の事業者において6級海技士の不足感が強い状況にあることも考慮に入れる必要がある。
これらのことを踏まえると、海技教育機構の4級海技士の養成定員については、並行して課題となっている学校の体制の議論や内航船員の需給状況を見ながら、段階的に判断し、実施していくことが適当であり、一方、民間6級海技士の養成については、拡充を検討していくことが適当である。
また、内航船員の養成については、単に数を拡大していくだけでは不十分であり、その質を確保するためには多くの優秀な若者に内航船という職場に魅力を感じてもらい、船員を目指してもらうための取組が前提となる。このため、内航業界を始めとする関係者においては、職場環境の改善など、魅力の向上のための努力を広報宣伝活動も含めて行っていくべきである。
以上の内容については、本検討会において、内航業界の協力のあり方について指摘もあったところである。なお、これに関連し、内航総連及び海技教育機構より、両者の意見交換の場を設けたところであるとの説明があった。

2.海技教育機構の教育内容の高度化、学校の体制等について

①海技教育機構の教育内容の高度化等

海技教育機構の海技学校及び海技短大においては、国際条約改正への対応や最近の技術革新等に適応した知識・技能を有する優秀な船員を養成するため、これまで4級海技士養成では実施されていなかったECDIS 訓練[1]ECDIS(電子海図表示装置:Electronic Chart Display and Information … Continue reading、BRM[2]BRM 訓練(BRM: Bridge Resource … Continue reading・ERM[3]ERM 訓練(ERM: Engine-room Resource … Continue readingの訓練や、陸上工作技能訓練[4] … Continue readingを実施することとしているが、今後ともこのような環境変化に対応した教育内容の高度化を図っていくことが重要である。これまで海技学校及び海技短大においては航海・機関両用教育を行ってきたが、卒業生の大多数が航海・機関のいずれかの職しか経験しない状況下、上記のような教育内容の高度化を適切に実行しつつ学生の負担軽減も図るため、海技短大について、航海・機関それぞれの専科教育に移行することが適当である。これにより、練習船の効率的運用にも資することとなる。
ただし、一部両用教育のニーズも残ることを踏まえ、反対部の教育を受けることにより反対部の筆記試験免除を可能とする[5] … Continue readingコースを設置したり、さらに、一部には、これまでと同様の航機両用の資格を取得できるコースも残したりすることが適当である。

②海技教育機構の学校の体制

海技短大においては、2年という短期間で船員養成を行うことができることや、学生に普通科目(国語、体育等)の授業がなく、その分、専門教育を充実させることができることなどの特徴がある。このため、活用可能な海技学校を段階的に短大化することについて、内航業界、地元関係者等とよく相談しながら、検討を進めることが適当である。
その結果、現在の学校施設を活用して養成規模の拡大を図ることも可能となる。

③その他専科教育及び短大化に関連する課題

専科教育や短大への移行といった施策の効果をより高めていくため、一部の学校で特色のある教育内容に特化するなど、新たな工夫を検討し、内航業界や地元関係者等とよく相談を行っていくことが適当である。
これに加え、多くのコースが設置されることによる海技教育機構の現場への負担に配慮すべきとの指摘もあったところ、関係者が協力して支えていく努力をすることも必要である。

3.海技教育機構の財源確保について

海技教育機構の財源確保について、国においては海技教育機構の運営に必要な予算をしっかりと確保する努力をすべきとの指摘があった。
また、海技教育機構においては、自己収入についてこれまでも様々な努力を行ってきたが、より多様な財源の確保を図ることが必要との指摘もあった。この観点から、まずは、OB、関係業界や経済界一般等から、機構の自己収入の中で割合の高くない寄附金等を募る努力を進めるべ
きである。
一方、海技教育機構の実習生の個人経費の負担については、本検討会で議論することは適当でないとの指摘もあったところであるが、同機構が検討していた実習生からの食料費の徴収については、実習生が陸地から隔離した特殊な環境下に置かれているなど様々な問題点について指
摘があった。また、同じ練習船の実習生の中にはいわゆる新3級の実習生のように必要な費用を雇用主である船社が負担する者と、自ら費用を負担しなければならないその他の実習生が混在している点や、練習船に乗り組んでいる教官等の船員が船員法に基づいて食料費を負担していない点にも留意が必要である。このように、本検討会においては、食料費を実習生から徴収することについては、問題点が多いという認識が醸成されたところである。
今後、これまでの議論について適宜フォローアップを行い、第4期中期計画に向けた海技教育機構のあるべき姿、今後の練習船における教育内容や練習船の代替のあり方等も含め、継続的に議論を行っていくこととするが、最終とりまとめに至るまでの間、議論の進捗状況も踏まえつつ、必要に応じ議論の区切りにおいて中間取りまとめを行っていくこととする。

References

References
1 ECDIS(電子海図表示装置:Electronic Chart Display and Information System)パソコン画面上に海図、自船情報、他船の針路・船速等の多彩な航海データを表示し、船舶の航行安全を支援する航海計器。
2 BRM 訓練(BRM: Bridge Resource Management)航海中、船橋内の各担当者が把握した本船周囲の情報等を相互に共有し、操船者をサポートするため、船橋内のコミュニケーション能力を高める訓練。
3 ERM 訓練(ERM: Engine-room Resource Management)機関室内の各担当者が把握した機器の運転状態等に関する情報を相互に共有し、トラブルが発生した際の対応能力を高めるための訓練。
4 陸上工作技能訓練:練習船の機関科実習の一部について、ディーゼル機関やボイラー等の機関室と同様の設備を用い、機器の開放整備や運転等に関する訓練を陸上施設で実施する。
5 反対部の教育を受けることにより反対部の筆記試験免除を可能とする「航海」の海技士資格の取得を目指す学生に対し、「機関」については、卒業時に筆記試験免除の資格が得られるまで教育する。「機関」の海技士資格の取得を目指す学生に対し、「航海」については、卒業時に筆記試験免除の資格が得られるまで教育する。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加