先週、一般社団法人 全日本船舶職員協会から声明文が発せられました。
題名は、「高専における商船教育養成定員維持に関する声明」です。
概要は、既存の商船高専の商船教育養成定員200名を保持するための活動を各商船高専の同窓会会長とチームを組んで行うというものです。
同声明文によれば、日本人船員の増加には、商船高専の商船教育養成が不可欠であるというもので、これ以上の定員の削減は、船乗りになろうとする若者の選択肢の一つを奪うものとなるということでした。
その背景として、国が2007年4月の海洋基本法の成立を受け本格的な日本人船員確保・育成に乗り出したことを挙げています。
私は、1985年、広島商船高等専門学校 機関科に入学しました。
その年、商船教育系の学科は、1つ減らされ、定員が120名から80名へとなりました。
更に2年後には、もう一つ商船教育系の学科が減らされ、定員40名となり、航海科と機関科が同じクラスで勉強する商船科というスタイルが取られるようになりました。
その頃、日本の外航海運は、プラザ合意以降、円高が進む中で日本人船員の削減に力を入れ、船舶の従来定員を大幅に減らす近代化政策に乗り出していました。
私も、商船高専卒業後、近代化の最終段階であるP実用船(11名)に乗り、エンジニアにも関わらず、三等航海士の真似ごとをやった経験があります。
しかし、その近代化船でさえも国際競争に勝てず、すぐに混乗船へと移行しました。
先行研究では、「近代化船教育を終了した第一期生が卒業する90年代のはじめになると船員精度近代化の幕は事実上下されるという悲惨な結末になる。」(※)と表現しています。
先行研究の表現によれば、私は悲劇の主人公だったのですね(笑)。
まあ、私の悲劇は、外航船員を辞めた後の海技試験(一級機関口述)で勉強不足を痛感したぐらいですが・・・。
さて、話を声明に戻します。
声明には書かれていませんが、この運動の本当の背景は何なんでしょう。
単純に推測すると、そういった定員削減若しくは商船高専の統廃合といった話があるのだと思われます。
しかし、ここで、「国は、本格的な日本人船員確保・育成に乗り出したのではなかったのか?」という疑問が生まれます。
なぜなのでしょう?
おそらくその答えが問題を解く鍵なのではないかと私は考えます。
そして、商船高専の統廃合の話があるとすれば、その結果によって多くの若者の人生が変わるということを十分に考慮した上で、結論を出すことを私は望みます。
文責:広島商船高等専門学校 OB 畑本
参考文献
雨宮洋司「内航海運における船員制度近代化「運動」の課題 -外航船員制度近代化「運動」からの教訓‐」,海運経済研究,第35号,pp.109-126,2001年