本日は、当たり前の話なのですが、あえて五感を使った見回りについてお話しします。
五感とは一般に、感覚機能のうち、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚をさします。
突然ですが、機関室の見回りを行う上で、最も重要なのはどれだと思いますか?
もちろん全て重要です。まあ、一般的には、視覚と答える方が多いのかも知れませんが、私の場合、嗅覚で異常を察知することの方が多いです。
例えば、蒸気ボイラーのある船では、蒸気が漏れることが多々あるわけですが、その時に視覚で察知できる時には、既に漏れが多くなっていることが多いです。
更には、断熱材がボロボロということも少なくありません。
そんな時、蒸気の漏れ初めにおける断熱材の焼ける臭いは独特で、その刺激臭によって蒸気が漏れていることを察知することが出来ます。
C重油やスラッジなど、独特の臭気を発生するものもあります。
また、音ですが、機関室では、主機関や発電機といった騒音を発生する機械類があり、その中で異音を聞き分けるには、それなりの経験が必要なようにも思えます。しかし、毎日、毎日、機関室の点検をしていれば、それなりに聞き分けられるようになるものです。
特に、圧縮空気の漏れなんかは、視覚では分かりづらいこともあり、聴覚による異常発見の方が多くなります。
しかし、残念ながら、長くエンジニアを続けていると難聴になってきて、これらの音を聞き分けられなくなります。正直、私も最近、蚊が飛んでいる音を察知できなくなりました。おかげで、よく蚊に刺されるようになりました。
さて、話がそれましたが。不具合を発見する上で、五感の特性を十分に理解して活用しなけれななりません。特に、上記の五感が、どの範囲まで有効か?ということが重要であると私は思います。
結構、臭いって遠くまで届きませんか?機関室に居ても昼食のおかずが何かわかることがありませんか?
音もそうです。居住区にいて、機関室でハンマーを使って作業している音が耳障りだったりしませんか?
それに比べ、視覚に頼ると、見えている範囲しか点検が出来ません。また、触覚は、触れることが出来るものしか無理です。さらには、味覚も人間に害がない程度のものしか無理です。
こうして考えると意外と臭いって重要だと思いませんか?ただ、臭いで何か異変に気づいたとしても色んな方向から通風がされている環境では、異変が起こっている場所に到達するには難しいです。
ということで、エンジニアの皆さん、五感の特性を知り、それぞれの特性を生かして異常個所に早く到達できるようにして下さい。異常に対する早期発見と早期対応は、大きな故障や事故の防止の上で大変重要であると共に不要な作業を減らす上でも重要です。
では、今日も一日、ご安全に!!
文責:船舶機関士 畑本