おはようございます。本日は、安全管理という言葉について、『安全管理の人間工学』(長町三生著,海文堂)から考えてみましょう。
長町氏によれば、安全管理とは、「作業がその目的どおりに安全に実施されるように、指導と管理を行うこと」としています。さらに長町氏は、簡単に説明すれば、「仕事をどうすればよいかを、わかりやすくすること」としています。
そして、仕事を分かりやすくすることには、次の事項が関係するといっています。
- 仕事の目的は何か(作業目的)
- 仕事が完了した姿はどうなっていればよいのか(完了の理想的姿)
- 作業は誰とするのか(作業組織)
- 作業はどんな道具を使って、どういう手順で行えばよいのか(作業計画・作業手順)
- 問題が発生したときには誰に報告すべきか(作業責任)
- 作業の結果をどのような基準で評価すれば、完了したとみなしてよいのか(作業結果の評価)
その理由として、
- 作業目的やあるべき姿が理解されていなければ、我流の仕事に陥る可能性があり、完成された姿に安全ポイントが絞り込めない。
- 適切に作業組織が組まれていないと、良いチームワークが育たず、協同作業に円滑を書くことになる。
- 作業計画が出来ていなければ、どのような準備をし、工具・治具をどのように整えるべきかもわからないので、ありあわせの道具で間に合わせようと考える作業者が出てくる。
- 作業手順や作業の安全ポイントが理解されていないと、手順を省略したり、安全をおろそかにする行為が発生する。
- 作業責任者の所在が不明確であれば、緊急場面で処理が遅れ、かえって危険場面を助長する行為が発生する。
- 作業の終わらせ方の重要性や作業結果の評価の仕方が分かっていないと、不完全作業で終わってしまい、次の事故の発生に結びつく。
とのことです。
そして、長町氏は、「安全管理とは、作業者に作業を分かりやすくすること、目に見えるようにしてやることであり、それぞれの事項にからめて、作業者という人間の行動を管理・指導することです。作業は人間によって実行される内容ですから、作業には安全だけでなく、製品の品質や生産効率、生産性も関与します。」という。
長町氏の安全管理は、生産現場における安全管理であり、船舶における安全管理は、異なるものであると捉える方もいらっしゃるかも知れませんが、新人船員への教育と考えるとどうでしょう。
新人船員の教育は、見て覚えさせる、という方もいらっしゃいますでしょうが、長町氏のいうように、「作業手順や作業の安全ポイントが理解されていないと、手順を省略したり、安全をおろそかにする行為が発生する。」のではないでしょうか。
特に、小型内航船の場合、なかなか船員教育に人員を割けないことから、ちょっとした作業なら、適当な説明をして、「やっとけ」という風な対応を行うベテラン船員も出てくるのではないでしょうか。そうしたとき、新人船員が、「安全のポイント」を十分理解できておらず、「作業の完了形」が十分に出来ていなかったら、新人船員が怪我をしたり、機器を壊したりすることにはならないでしょうか。
なんでもかんでもマニュアル化・チェックリスト化することは、そのことにだけ労力を費やし、肝心な実務に繋がらないなんてことになりかねない恐れがありますが、新人教育や、安全教育といったものは、ある程度、その受講者が理解できる資料作りが必要であると考えます。
ただ、誰がそれを作るのか?という問題が。
そして、誰が作れるのか?
そうですね、個人的な意見ですが、単独の会社でできなければ協同で作ればいいのでは?
そういうことが、この協会でできたらと思う今日この頃です。
文責:海事補佐人 畑本