200806 月刊 内航海運「コスト高で節目を迎えた内航経営」

200806 月刊 内航海運「コスト高で節目を迎えた内航経営」,pp.4-6

08年度は内航景気の節目を迎えそうだ。諸コストの上昇に伴い、減益は必至。荷主の物流合理化も加速しそう。4年続いた内航海運の好況は不況入りの可能性がある。

内航海運の諸コストアップが著しい。この1年で燃料価格は約40%,船価は約10%,船員費は約12%,値上がりした。このほか、修繕費,潤滑油代なども軒並み値上がりしている。経営環境は厳しくなる一方。内航経営者の生の声は、こんな具合だ。まず、燃料高についての悲鳴―――。

「バンカーサーチャージは4~5割ぐらいしか取れていない。4半期毎に荷主に値上げを要求している。あと10%の運賃値上げは必要」(一般貨物船オペレータA)

「粘り強く交渉し、荷主に運賃を上げてもらうしかない。最低でも、バンカーサーチャージ込みで10~15%の値上げ要求をしている」(一般貨物船オペレータB)

「バンカーサーチャージは50~60%しか取れていない。引き続き、荷主に値上げを求めていく」(RORO船社)

「燃料代のアップには運賃値上げで対応するしかない。荷主に強く要求する。赤字では運航できない」(砂利船オペレータ)

「バンカーサーチャージを100%収受するしかない。まだ70%ぐらいしか取れていない」(長距離フェリー船社A)

「バンカーサーチャージは100%もらうので燃費上昇は、しのげる。しかし、船員費・用船料・船価が上がっている。運賃を上げてもらわないと対応できない」(鉄鋼元請オペレータ)

「燃料価格の値上がり分はバンカーサーチャージをもらっているので問題はない。しかし、潤滑油の値上がり分にはバンカーサーチャージはない。その他、諸コストアップを吸収するには運賃値上げを要求するしかない」(石油元請オペレータA)

「セメント船は荷主の完全コスト保証なので、燃料高も船価高も影響ない。しかし、一般貨物船の採算が厳しい。バンカーの値上がり分は半分ぐらいしか収受できていない」(セメント船オペレータ)

「今の運賃は低過ぎる。運賃が上がらなければ廃業するオペの再編・合併もあるかもしれない」(石油元請オペレータB)

「燃料価格が上がる度に運賃値上げを申し入れている。今年4月に平均で5%上げてもらった。しかし、足りない。秋にも挙げてもらうよう、求める」(特タンオペレータ)

建造は荷主保証の時代

次いで船価高について―――。

「船価は499GTで6億円近くまで上がった。代替建造するには、月1,300万円の用船料が必要。そのコストを保証しないと建造出来ないことを荷主に理解してもらいたい」(一般貨物船オペレータC)

「これだけ船価が上がれば、荷主が完全にコスト保証をしてくれないと建造は無理だと言っている」(ケミカル船オペレータ)

「荷主に必要なコストを保証してもらわないと代替建造に踏み切れない。特に1,000kℓ型以下の小型船の建造は厳しい」(石油元請オペレータC)

「既存船を延命使用していくしかない。船齢で22~23年ぐらいまで」(特タン船オペレータ)

「今の船は船齢16~17年になるが、船価高で代替建造のメドが全く立たない。とりあえず、20年まで延命を図るつもり」(長距離フェリー船社C)

船員派遣で値上がり

次いで船員費の値上がりについて―――。

「船員派遣業が認められてから、船員費の値上がりが著しい」(貨物船船主A)

「海運活性化3法の施行以来、船員費は上がった。航海当直に6級以上の海技免状が義務付けられたため、部員と職員の意識の差がなくなり、部員が給料アップを求めるようになった。また、年金を受けながらアルバイトしていた高齢船員にも保険を掛けなければならなくなった。499GTのマンニング料は月400万円から月450万円に値上がりした」(船舶管理業者)

「船員不足のため船員は強気。船員の基本給や賞与は上げざるを得ない。引き抜きを防止するために組織船並みの給料を出す船主もいる」(貨物船船主B)

内航海運のコストダウンが必要

諸コストのアップについては、大半の内航業者が、運賃・用船料の値上げでしか対処出来ない、としている。理由は①合理化をやり尽くした②少々のコストダウンでは、焼け石に水である―――ことなどのため、運賃については10~15%の値上げを求めるオペレータが多い。
しかし、荷主は容易に運賃値上げを飲む気配はない。コストアップで、業績が悪化しているからである。値上げどころか、逆に物流合理化に拍車が掛かる可能性がある。8年前に石油荷主が、共同輸送や製品交換・元請集約といった大胆な物流合理化を断行したのは記憶に新しい。
荷主を怒らせば怖い。物流の決定権を持っているから、その気になりさえすれば、何でも出来る。例えば、物流コストがあまりに割高になれば、鉄鋼の高炉5社が窓口を一本化して共同配船することだって有り得る。競合する企業が物流合理化のために手を結ぶことは今や珍しいことではない。

したがって、内航海運は常にコストダウンの努力をしておくことが大切である。企業レベルでは、もちろんだが、内航業界としての取り組みが大切。例えば燃料の脱石油化、省エネ化、沿海区域の拡大など。暫定措置の一時凍結なども考えて見るべきだ。高コスト時代の到来を迎え、今後、内航海運そのものを低コストで競争力のある輸送機関にしていく努力が欠かせない。

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