事業規制の見直しの具体的制度設計について

内航海運制度検討会:『事業規制の見直しの具体的制度設計について』,2003年8月

目 次
Ⅰ. 総 論
Ⅱ. 事業展開の多様化・円滑化

1. オペレーター・オーナーの事業区分
2. 新しい参入基準
3. 登録制
4. 100総トン未満の船舶に係る届出制及びプッシャー・バージ、曳船の取扱い
5. 船舶管理会社の位置付け

Ⅲ. 市場機能の整備

1. 適正な取引環境の整備
2. 運送約款
3. 適切な情報の開示

Ⅳ. 輸送の安全の確保

*****2*****

はじめに
次世代内航海運懇談会において平成14年4月に取りまとめられた「次世代内航海運ビジョン~21世紀型内航海運を目指して~」の具体化を図るため、「内航海運制 度検討会」が同年5月に、「内航船乗組  み制度検討会」が同年4月にそれぞれ設置され、事業規制や船員関係規制の見直しについて検討が開始された。
本「内航海運制度検討会」においては、事業規制関係施策の具体化について検討が行われることとされており、より実務的・詳細な意見交換・検討を行うために事業規制ワーキング・グループを設置して、検討会における議論の叩き台となる報告を作成したところである。これまでに3回の検討会及び7回のワーキング・グループを開催し、関係者の自由な意見交換を通じて検討を行ってきたところであり、ここに、事業規制の見直しの具体的制度設計について、これまでの検討の結果を以下のとおりとりまとめる。

Ⅰ. 総 論

内航海運は 「物流の大動脈」として21 、 世紀においても欠くことのできないものであり、我が国の基幹的輸送モードとして、物流効率化、環境保全等、21世紀を迎えた我が国経済社会の様々な要請に積極的に貢献していかなければならない。
しかし、内航海運の市場構造は、特定荷主への系列化、多重的な取引関係等荷主企業を頂点とするピラミッド型となっている。このような市場構造は、安定・安全輸送の確保等に寄与している面がある一方で、内航海運市場の閉鎖性を高め、市場の活性化とその拡大の障害となっている面がある。
また、内航海運の近代化のため、従来より、転廃業の促進、集約・合併による構造改善対策が進められているところである。こうした取り組みは、かつて小規模オペレーターの乱立による過当競争等が懸念された内航海運業において、業界秩序の維持、船舶の近代化等に一定の成果をもたらした。しかし、これらの施策の長期的な実施は、自由な新規参入や規模拡大の障害となり、競争制限的な市場構造が長期にわたって温存されることとなって、内航海運業界の活性
化を妨げてきた面もある。
このような状況のもと、市場において自由な事業活動による競争を促すこと

*****3*****

は、新規事業者の参入とともに、各事業者の創意工夫に基づく多様な事業展開を通じて、市場の閉鎖性を低減させ、輸送サービスの質の高度化や革新的サービスの創出を図ることにより、市場全体の活性化とその拡大に資することとなる。このため、事業区分の廃止も含め、参入規制の緩和を行い、競争的な市場環境を整備することが必要である。
また、競争的な市場環境等の整備に当たっては、現在の内航海運の市場構造が特定荷主への系列化、多重的な取引関係等荷主企業を頂点とするピラミッド型となっていること等を踏まえると、参入規制の緩和のみでは市場原理の機能の発揮は十分には期待できない。したがって、競争的な市場環境の整備のためには、参入規制の緩和と併せて、独占禁止法体系による対応も含め、公正かつ透明性の高い市場の構築を図るための市場機能の整備を進めることにより、健全かつ自由な事業展開を促進することが重要である。
さらに、参入規制の緩和等により、新規参入も含め事業者間の競争が活発化することが予想されるものの、一方で、内航海運は、我が国経済活動及び国民生活に不可欠な産業基礎物資の輸送を担っており、安全かつ安定的な輸送サービスの提供の観点から、事後チェック体制を強化し、輸送の安全の確保を図ることが重要である。
これらの基本的な考え方に従い、事業規制を見直した結果、Ⅱ.~Ⅳ.に記載のとおりの制度設計とすることが適当である。

Ⅱ. 事業展開の多様化・円滑化
1.オペレーター・オーナーの事業区分

現在、内航海運業法上、内航海運業には、内航運送業(オペレーター)と内航船舶貸渡業(オーナー)の2つの事業区分が設けられており、荷主と運送契約を締結できるのはオペレーターに限られている。
しかし、事業者数の劇的な減少、特定荷主への系列化等内航海運市場の状況は大幅に変化していることから、今後は、オペレーターやオーナーといった事業区分にとらわれず、すべての事業意欲のある事業者による活力ある多様な事業展開を促進することを通じて、内航海運の活性化を図っていくことが必要である。

*****4*****

したがって、オペレーター・オーナーの事業区分を廃止することとし、オペレーター事業を行う事業者であるか否かにかかわらず、同一の参入基準を適用することとする。
なお、事業区分を廃止し、参入基準上の区別を行わないということは、オペレーター事業(船舶の運航、輸送)とオーナー事業(船舶の貸渡し)が現実に存在することを否定するものではなく、オペレーター事業を行う場合には、運送約款、運航管理規程(仮称)の作成等一定の義務が付加されることがあり得る。

2.新しい参入基準

これまでの許可基準は、大きく、(1)船腹量等の要件、(2)事業の安定性に関する要件、(3)適正な事業運営に関する要件、の3つであった。
このうち、船腹量等の要件については、零細事業者の乱立による過当競争を防止するための基準として設けられたものであるが、すべての輸送モードに係る需給調整を撤廃した現在においては、より健全かつ自由な事業活動を促すことが重要であり、一定の規模(船腹量等)がなければ一律に事業への参入を認めないとする現行基準は、自由な市場の形成を妨げ、市場の硬直化の一因となるものであり、適当ではないと考えられる。また、平成15年3月末現在で、内航海運業者の約6割が船腹量等の要件を満たしていないことにかんがみると、新規参入者に対してのみ既存事業者の大部分が充足していない基準を課すこと
は 、過度の既得権保護であり、公平性の観点からも問題であると考える。なお 、内航海運業においては、船舶建造が輸送需要のピークに合わせて行われ 、かつ、船舶が高価で償却期間の長いものであることから、船腹が過剰になる傾向があり、市場の安定のために何らかの制限を加えることには一定の合理性が認められるが、この点については、後述の事業の安定性等の基準により限定的に行われるべきものであり、船腹量が一定量以上なければ事業への参入を一切認めないということは、市場の安定という要請を考慮しても、過度の規制であると言わざるを得ない。したがって、船腹量等の要件は、原則として撤廃することが適当である。
他方、事業の安定性及び適正な事業運営に関する要件については、事業が安定的かつ適正に運営されることは、健全かつ自由な事業活動という観点に照らしても、最低限必要な事項であり、引き続き維持する。ただし、個々具体的にみて、形骸化している規制、事業の安定性等を担保するための規制としての効

*****5*****

果が疑問である規制等については、撤廃することとする。
具体的には、以下のとおりである。

(1)船腹量等の要件

現在、船腹量等について、運送業にあっては、①使用船舶が3隻以上であること、②自己所有船の船腹量が1,000総トン又は使用船舶の船腹量の15%のいずれか大きい総トン数を超えていること、③定期用船等比率が60%以上であること、④平水区域等において使用の場合は、使用船舶が200総トン以上、かつ1隻以上所有していること、が要件とされている。
船舶貸渡業にあっては、⑤所有船舶が3隻又は900総トン若しくは1,800重量トン以上であること、が要件とされている。
以上の基準については、今後、次のとおりとすることが適切である。
前述のとおり、より健全かつ自由な事業活動を促すため、船腹量等の要件は撤廃することとする。一方で、所有船舶がなくても内航運送業への参入を認めるべきとする意見については、運輸関係の規制で輸送施設を所有しない者は、原則として実運送事業への参入は認められておらず、適当ではない。また、そのような者であっても貨物利用運送事業者としての営業が可能であるので、実際上も支障は生じない。
したがって、船舶を1隻所有することを要件とする。
ただし、従来から許可対象又は届出対象となる事業者の区分となっていた100総トン又は30m以上の船舶であるか否かについて、100総トン又は30mという船舶の輸送能力を示す一定の基準が、業界においても一般的に一つの基準として定着しており、業界の実態、行政事務の効率的な遂行の観点からも適切であることから、これを維持することとする。従って、前述の船舶を1隻以上所有すること」にいう「船舶」とは、100総トン又は30m以上の船舶を指すものとすることが妥当である。
なお、所有する100総トン又は30m以上の船舶が0隻となった場合には、再び100総トン又は30m以上の船舶を所有することが予定されているときを除いて、事業の廃止又は休止届出を求めることとする。

(2)事業の安定性に関する要件

現在、事業の安定性について、運送業にあっては、①確実・安定的な取

*****6*****

引数量及び金額等、②直接荷主等からの引き受け割合が半数以上であること、③適切な資金計画、が要件とされている。
船舶貸渡業にあっては、④3年以上の定期用船契約等、⑤適切な資金計画、⑥適正・確実な運航採算、が要件とされている。
以上の基準については、今後、次のとおりとすることが適切である。
事業の安定性に関する要件については、船舶安全法等関連法規を遵守した適正な事業運営を確保するため、③及び⑤「適切な資金計画を有していること」の基準を維持することとする。
他方、①及び②の基準については、実効性に乏しく形骸化していると考えられるため、廃止する。
また、④及び⑥の基準についても、用船契約等の期間は、当事者間の交渉により、自己責任で決定すべき事項であり、現在も、真に船舶の建造が必要であれば、金融機関の求める用船等の期間を設定し船舶の建造が行われていること、また、運賃・用船料の改定に規制を行わない以上、用船期間についてのみ規制を行っても、内航海運業者の経営の安定や船舶の建造促進の効果は小さいことから 、積荷保証又は用船契約等の期間については、制限を置かないこととする。
なお、前述③及び⑤「適切な資金計画を有していること」の基準を満たしているか否かは今後も審査事項であり、その審査に際して裏付けとなる資料の一つとして、積荷保証又は用船契約等の資料が要求されることがあり得る。

(3)適正な事業運営に関する要件

現在、適正な事業運営については、運送業にあっては、①営業所等の設置、②確実な船員配乗計画、が要件とされている。
船舶貸渡業にあっては、③貨物利用運送事業との兼業禁止、④確実な船員配乗計画、が要件とされている。
以上の基準については、今後、次のとおりとすることが適切である。
適正な事業運営に関する要件については、安全等の観点から、内航海運業法の許認可等手続においても、船員関係法令の遵守を担保しておく必要があるため、②及び④「確実な船員配乗計画」の基準を維持することとする。
他方、①営業所等の設置については、適正な事業運営を担保するための規制としての効果が疑問であり、一律に全事業者に強制する必要性に乏し

*****7*****

いため、廃止する。
また、③貨物利用運送事業との兼業禁止も、オーナーが貨物利用運送事業者としての資格により実質的にオペレーター業務を行うことを防止する観点から行われている規制であり、今般オペレーターとオーナーの事業区分を廃止することに伴い、規制の意味を失うことから廃止する。

3.登録制

上記の新しい参入基準を「登録」とするか、従来どおり「許可」とするかについては、許可制も登録制も業を行うに当たっての事前規制であることに変わりはないが、許可制は申請者の個別的内容に踏み込んで審査を行うのに対し、登録制は画一的な審査基準に主眼を置くところ、新しい参入基準である1隻以上の船舶所有、適切な資金計画及び確実な船員配乗計画は、ある程度画一的に評価可能な基準であることから、登録制とすることとする。
そもそも、今回の法改正においては、次世代内航海運ビジョンにもあるとおり、経営者の自己責任の原則を重視することとしている。すなわち、自由で競争的な市場に業界秩序の形成を委ねるべきであり、行政による介入は必要最小限のものとし、その他生じ得る弊害については、原則として事後チェックの手法により対処すべきである。このように内航海運業法の事業規制に関する考え方が、基本的に従来と異なるものとなることからも 、「登録制」ととらえる方が適切である。
なお、昭和41年の法改正において登録制から許可制へ移行したのは、オペレーターへの基準船腹量の義務付けが最大の理由であり、今回、許可制から登録制に移行することは、それを実質的に廃止するという経緯にもなじむものである。

4.100総トン未満の船舶に係る届出制及びプッシャー・バージ、曳船の取扱い

現在、100総トンかつ30メートル未満の船舶については、届出制とされている。しかし、当該船舶の船腹量は、隻数では2,000隻と内航海運業全体の3割を占めているものの、輸送能力である総トン数でみると全体の1.6%と事業規模が非常に小さいこと等から、これら事業者について、今後とも事業規制を継続するか否かが焦点となった。
しかし 現在 内航海運組合法に基づき日本内航海運組合総連合会 以下 内

*****8*****

航総連」という。 )が内航海運暫定措置事業(以下「暫定事業」という。)を実施しているが、内航海運業法に基づく届出制が廃止された場合、100総トンかつ30メートル未満の船舶の把握が困難となり、暫定事業に影響が出るおそれがある。暫定事業は内航海運組合法という内航海運業法とは別の法律に基づき行われているものであるが、この両法が相まって、内航海運業の安定、健全な発達を目指すものであり、船腹需給の適正化等の観点から、暫定事業の着実な実施は内航海運業にとって重要であること、また、届出制による事業者の負担は小さいと考えられることから、当面(少なくとも暫定事業の実施中)、100総トンかつ30メートル未満の船舶に係る届出制を維持することとする。
なお、プッシャー・バージ及び曳船についても、従来どおり、100総トン又は30メートル以上の船舶を登録対象、これ以外のものを届出対象として扱うこととする。

5.船舶管理会社の位置付け

船舶管理会社については、次世代内航海運ビジョンにおいて 、「その経営形態によっては、アウトソーシングの活用による輸送コストの低減、船員の雇用・教育体制の向上等に寄与するとともに、とりわけオーナー事業を行う事業者の今後の事業展開の多様化・円滑化を推進する観点から有効な手段である。」とされており 「船員職業安定 、 法等船員関係制度における船舶管理会社の位置付け(船員の雇用責任の明確化を含む)の整理」が必要であるとされている。
このため、いわゆる「船舶管理会社」の中でも船舶の運航管理、船舶の保守管理、船員の配乗・雇用管理を一括して行うものについては、雇用者としての責任を明確にするとの観点から、その支配下の船員との雇用関係を認めることが適当であり、船員法の船舶所有者としての規定を適用するとの考え方で整理することとする。
一方 、「船舶管理会社」の名称の下で違法な労務供給事業を行う事案があり得ることから、これを防止するため、労務供給事業に該当しない船舶管理会社の要件を明確にした上で、違法行為を行う者については船員職業安定法の規定に基づき取り締まっていくこととする。
なお、海上労働力の適正かつ円滑な移動を確保するため、船員派遣事業の制度化をはじめとする船員職業安定法の改正が検討されており、船舶管理会社についても、改正後の同法に基づき許可を受ければ船員派遣事業を行うことが可能となる。

*****9*****

Ⅲ. 市場機能の整備

1.適正な取引環境の整備

内航海運の市場構造は、特定荷主への系列化、多重的な取引関係等荷主企業を頂点とするピラミッド型となっており、こうした市場構造から往々にして生ずる優越的地位の濫用の可能性、硬直的・閉鎖的な取引慣行の横行等のため、市場原理に基づく適正な競争機能の有効かつ十分な発揮が困難となっている。
したがって、そのような現状を踏まえ、市場原理と自己責任の考え方の下、健全かつ自由な事業活動を促進するため、参入規制の緩和等と併せ、荷主、オペレーター及びオーナー間における取引関係の適正化を図ることが必要である。
前国会において、現行法では物品の製造及び修理に適用範囲が限定されている下請代金支払遅延等防止法(いわゆる下請法)をサービス業全体に適用するための同法改正が成立しており、公布の日(平成15年6月18日)から1年以内に施行されることとなっている。
これを踏まえ 、オペレーター-オーナー間の取引について 、下請法に基づき、書面の交付・保存等、適正化を図ることとする。
他方、事業者の資本金額等により下請法の適用対象とならないオペレーター-オーナー間の取引や元々下請法の適用対象となり得ない荷主-オペレーター間の取引については、独占禁止法の運用強化(特殊指定の活用等)により適正化を図ることとする。現在、内航総連の不公正取引防止委員会等において、他の特殊指定の例も踏まえつつ、内航海運業界として、具体的にどのような行為類型を「不公正な取引方法 (独占禁止法第 」 19条)として指定することが適当か検討中であり、当該検討結果を踏まえ、国土交通省と公正取引委員会との間で調整を行うこととする。

2.運送約款

内航海運においては、契約関係の透明性に欠けることが、健全かつ自由な事業活動を阻害している面がある。したがって、内航海運における適切な契約関係の構築及びその透明性の向上を図るため、オペレーター事業を行う事業者に

*****10*****

ついて、運送約款の作成・届出を義務付けることが有効であると考えられる。
運送約款制度を導入することによって、オペレーターの契約条件について、公正性が担保されるとともに、外部的に明らかになることにより、市場の透明性が向上する効果が見込まれるが、他方、約款とは本来不特定の者との契約を明確・画一的に処理し、サービス利用者の保護を目的とするものである。
したがって、この約款の性質にかんがみ、サービス利用者保護を図る必要がある不特定の者を荷主とする船種、すなわち、RORO船及びコンテナ船のオペレーターについて、運送約款の作成・届出を義務付けることとする。
なお、運送約款の内容については、行政庁による変更命令の制度を設けることとする。

3.適切な情報の開示
(1)適正船腹量の告示・最高限度の策定、標準運賃・貸渡料に係る規制

船腹量の最高限度の設定は、内航海運組合法に基づく船腹調整事業を前提としていたものであり、交通運輸分野における需給調整規制を廃止するとの政府決定(平成8年)を受けた船腹の需給調整の撤廃により、その存在意義が薄れていることから、廃止する。
適正船腹量の告示は、船腹量の最高限度の設定を行う前提として法律上規定されているものであり、最高限度の設定を廃止することに伴い、法律上の制度としては廃止する。しかし、船舶建造が輸送需要のピークに合わせて行われ、かつ、船舶が高価で償却期間の長いものであることから船腹が過剰になる傾向があるという内航海運の特性上、事業者が船舶を建造するに際しては、慎重な判断が求められ、何らかの指標があることが望ましい。また、当該指標の作成に関する荷主団体等からの情報提供の得やすさ、指標の対外的な信頼性なども考慮し、当分の間は引き続き、行政の情報提供の一環として、国(国土交通省)が適正船腹量の算定・公表を行うこととする。
ただし、油送船は他の船種と比べて季節による輸送需要の変動が著しいことから、油送船について、適正船腹量の算定・公表を行う必要があるかについては、関係者間において引き続き検討することとする。
また 「適正船腹量」という名 、 称は、需給調整的な制度と誤解されるおそれがあるため、改正法施行後最初の算定・公表までの間に、適切な名称に変更することとする。
標準運賃・貸渡料に係る規制(設定・告示・勧告)については、規制緩和

*****11*****

推進計画(平成7年~9年)等の各種政府決定にも見られるように、運賃等については事業者の自由な経営戦略の展開を促進することが適当であり、多様化、弾力化を推進するべきであること、また、実際上、今後の内航海運において、標準運賃等を設定することは、各取引における契約形態、使用船舶の形態等も多様にわたっており極めて困難であること 等から、廃止する。

(2)営業報告書の提出

参入規制を行った事業については、行政庁は対外的な説明責任があり、また、適切な政策判断を行うためには、事業の実態を把握することは必要不可欠である。また、内航海運業と同様に小規模事業者が多いトラック事業をはじめ、内航海運業以外の参入規制が行われている輸送モードでは、全て所管行政庁に対し営業報告書の提出が義務付けられている。
したがって、内航海運業においても、全事業者に営業報告書の提出を義務付けることとする。
なお、営業報告書の具体的内容については、事業者の負担軽減のため必要最小限の内容とするよう、関係者間で検討を行うこととする。

Ⅳ. 輸送の安全の確保

今後、 物流効率化等に対応して低廉な輸送サービスの提供が求められる一方で、内航貨物船による海難事故は必ずしも少なくないまた、現行の内航海運業法においては、例えば、内航海運業者の事業活動において輸送の安全を阻害している事実があると認められる場合であっても、法的な是正措置を講じることができないこととなっている。
したがって、参入規制の緩和等による競争の促進と併せ、産業基礎物資の輸送の大宗を担う内航海運業の輸送の安全確保のための取組みを促進するとともに、参入規制の緩和等により、事後チェック型の行政への転換を図る中で、海上における輸送の安全を確保する観点からは、行政が事後的に事業活動の是正を命じるための手段を整備する必要がある。いかに輸送の安全の確保が、事業遂行上必要不可欠な最低限の事項であり、自己責任により行われるものであるとしても、そのことをもって行政による規制の必要性が否定されるものではない。現に、内航海運業以外の他の輸送モ-ドにおいては、輸送を業として行う事業者には、いわ

*****12*****

ゆる業法(例えば、道路交通法及び道路運送車両法に対する道路運送法や貨物自動車運送事業法)において、事業者として最低限の安全規制や事後チェック体制が規定されており、運航(行)管理を適切に行うことが法的に求められている。
したがって、内航海運業についても、内航海運業法において、船舶を運航する事業者(オペレーター)に対し、運航管理規程(仮称)の作成・届出及び運航管理者(仮称)の選任を義務付けるとともに 、行政の事後チェック機能強化のため、 運航管理規程の遵守等輸送の安全の確保のために必要な事業活動の是正措置命令制度を整備することとする。

おわりに

内航海運業法を中核とする我が国の内航海運業における基本的法制度は、 昭和41年以降変更されることなく現在に至っている。このとりまとめが、将来の内航海運
業界の在り方の指針となり、更には、国民経済の向上と公共の福祉の増進に資する、新しい内航海運業の実現に貢献することを強く期待するものである。
今後は、国土交通省において、このとりまとめを踏まえ、所要の法令改正等の作業が早急に行われるよう期待する。

*****13*****

内航海運制度検討会 名簿

(平成15年8月27日現在:敬称略)

(座 長)    加藤 俊平   東京理科大学教授
(座長代理)大和 裕幸  東京大学教授

中泉 拓也  関東学院大学専任講師
立石 信義  日本内航海運組合総連合会会長
荒木 敦     全国内航輸送海運組合会長
上野 孝     全国内航タンカー海運組合会長
栗林 宏吉   内航大型船輸送海運組合会長
四宮 勲      全国海運組合連合会会長
真木 克朗   全日本内航船主海運組合会長
鮫島 宗和   日本旅客船協会会長
井出本 榮   全日本海員組合組合長
馬越 洋造   全日本海員組合沿海局長
鷲頭 誠      国土交通省海事局長
馬場 耕一   国土交通省海事局次長
波多野 肇   国土交通省大臣官房審議官
冨士原康一 国土交通省大臣官房技術審議官

*****14*****

内航海運制度検討会及び事業規制
ワーキング・グループの検討経過

H14年 5月29日 第1回内航海運制度検討会

・論点整理
・事業規制WGの設置決定

6月28日 第1回事業規制WG

・論点整理
・フリーディスカッション

9月17日 第2回事業規制WG

・参入規制の緩和

11月 1日 第3回事業規制WG

・市場機能の整備
・輸送の安全の確保

H15年 2月 3日 第4回事業規制WG

・中間報告案審議

3月 4日 第2回内航海運制度検討会

・事業規制WGからの中間報告

4月 3日 第5回事業規制WG

・用船契約(積荷保証)
・ 総トン未満の船舶の取扱い 100
・特殊指定の制度
・運送約款の作成・届出
・適正船腹量の取扱い
・営業報告書

*****15*****

5月 7日 第6回事業規制WG

・前回WGでの検討事項
・100総トン未満の曳船・プッシャー(バージ)の取扱い
・登録制か許可制か

6月 4日 第7回事業規制WG

・事業規制の見直しの具体的制度設計について(案)

8月27日 第3回内航海運制度検討会

・検討会としての結論とりまとめ

*****16*****

  • このエントリーをはてなブックマークに追加