国は、各省庁が協力し、政府一体となって物流施策を推進していくため、総合物流施策大綱を策定しています。
『総合物流施策大綱(2017年度~2020年度)』は、平成29年7月28日に閣議決定されました。
内航海運に関しては、以下のとおり示されております。
以下、抜粋
Ⅲ.今後の物流施策の方向性と取組
3.ストック効果発現等のインフラの機能強化による効率的な物流の実現(=支える)~ハードインフラ・ソフトインフラ一体となった社会インフラとしての機能向上~
(2)道路・海上・航空・鉄道の機能強化
国内外のシームレスな輸送を実現し、我が国物流ネットワークの国際競争力を強化するため、ハードインフラとソフトインフラとが一体となって、物流の社会インフラとしての機能強化を図る。
② 海上輸送の機能強化
(エ) 内航海運
内航海運の安定的輸送の確保と生産性向上のため、「内航未来創造プラン~たくましく 日本を支え 進化する~」(平成 29 年6月内航海運の活性化に向けた今後の方向性検討会策定)に基づく施策の推進に取り組む。具体的には、(ⅰ)内航海運事業者の事業基盤の強化(船舶管理会
社の活用促進による管理業務の集約化・効率化を図るための「国土交通大臣登録船舶管理事業者」(仮称)登録制度の創設や荷主・海運事業者間の連携強化のための「安定・効率輸送協議会」(仮称)の設置)、(ⅱ)先進的な船舶等の開発・普及(省力化や安全性向上に資する自動運航船等の IoT 技術を活用した船舶の開発・普及、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の船舶共有建造制度の活用を通じた円滑な代替建造の促進等)、(ⅲ)船員の安定的・効果的な確保・育成(船員教育体制の抜本的改革や、労働環境の優れた職場の PR 等の魅力ある職場作り等による船員の就業・定着促進、船員配乗のあり方の検討等の働き方改革)を図る。
4.災害等のリスク・地球環境問題に対応するサステイナブルな物流の構築(=備える)
(2)地球環境問題に備える
我が国の温室効果ガス削減目標の達成等に向け、物流分野においてもサプライチェーン全体での環境負荷の低減の観点から、再配達など非効率となっている部分の削減、物流の効率化・モーダルシフトの推進や、自動車の単体対策、鉄道・船舶・航空・物流施設における低炭素化の促進等を通じて貢献する。このほか、大気汚染等による環境負荷の低減にも取り組んでいく。
① サプライチェーン全体における環境負荷低減の取組
荷主と物流事業者の連携による物流の効率化や輸送の結節点となる物流拠点の低炭素化等を通じて、サプライチェーン全体での環境負荷低減を図る。
(イ) 荷主・物流事業者間など関係者間の連携促進
荷主と物流事業者の間のパートナーシップの更なる強化等を図ることによって、モーダルシフトや共同物流を促進し、更なる環境負荷の低減を目指す。物流分野について、物流総合効率化法の枠組みを活用して、関係者が連携して行う、モーダルシフトや共同物流といった環境負荷の低減に資する取組の促進を図る。加えて、海運分野においては、荷主・物流事業者と海運業者の連携強化のための「海運モーダルシフト推進協議会」(仮称)を新たに設置し、具体的な取組を推進するとともに、先進的なモーダルシフトの取組等に対する新たな表彰制度を創設し、優良事例を全国に共有・展開する。さらに、荷主等におけるモーダルシフトの検討を容易にするため、モーダルシフトに資するフェリー、RORO 船等の運航情報を一括して荷主等が利用できるシステムを構築する。
② 輸送モードの省エネ化・低公害化
渋滞対策によるトラック輸送の低公害化を促進する。また、物流分野における主要な CO₂排出源であるトラックをはじめ、船舶、航空、鉄道の各輸送モードの省エネ化、低公害化を進め、天然ガスや水素等によるエネルギー転換を促進する。
(イ)船舶の省エネ対策
内航海運における省エネ対策を推進するため、荷主との連携を考慮しつつ、省エネ船の普及に向けた取組を支援する。また、内航海運事業者の省エネ評価制度(内航船「省エネ格付け」制度)の構築・普及を推進することにより、省エネ船への積極的な投資を促す。また、外航海運における CO₂排出削減対策として、IMO 温室効果ガス削減戦略の策定や燃費規制の段階的強化等、国際海運分野の温暖化対策に係わる議論を我が国が主導する。
(ウ) 船舶からの排出ガスに関する SOx規制
2020 年から強化される船舶燃料の硫黄分濃度規制について、NOx や CO₂削減にも有効な代替燃料である LNG 燃料の供給に関し、世界最大の LNG輸入国という強みをいかし、我が国港湾において LNG バンカリング拠点の整備を進めるとともに、LNG 燃料船の普及に向けた取組を実施する。さらに、低硫黄燃料油の低廉化・供給コスト削減に向けた具体的対応策等を検討し、関係業界が円滑に対応できるよう、適切な取組を実施する。
5.新技術(IoT、BD、AI 等)の活用による“物流革命”(=革命的に変化する)
IoT、BD、AI 等の新技術によるデータの活用は、現在の物流の在り方を根底から覆し、革命的な変化をもたらすものである。こうした新技術の積極活用により“物流革命”を目指す必要がある。
(5)船舶の IoT 化・自動運航船
IoT 技術やビッグデータを活用することにより、①陸上からリアルタイムでの船舶の機器監視や不具合発生時の迅速なサポートの実施、②天候等の予測情報を活用した効率的なルートや航行速度の設定、③船舶が輻輳する航路における交通管制等により、効率的な船舶の航行を可能とする。また、自動運航船を社会に取り入れるため、研究開発や基準・ルールの整備などによる海上交通の高度化を進めるための取組を行う。
6.人材の確保・育成、物流への理解を深めるための国民への啓発活動等(=育てる)
物流がその機能を果たしていくためには、それを支える多種多様な人材が必要不可欠である。現場を支える人材の確保・育成に加え、関係者間の連携を促進し物流の効率化・高付加価値化を図ることのできる提案力のある人材の確保・育成等を図る。加えて、持続的で効率的な物流の提供の観点から、荷主でもある消費者に対して、物流の果たしている役割や特性が理解され、また利用されるよう、啓発活動を行う。
(1)物流現場の多様な人材の確保や高度化する物流システムのマネジメントを行う人材の育成等
国内における物流現場の多様な人材の確保に資するよう働き方改革等を通じて環境を整備する。
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内航船員については、安定的な海上輸送確保のため、引き続き若年の優秀な船員の確保・育成策に取り組み、その主要な供給源である独立行政法人海技教育機構において、関係教育機関や関係団体等との連携のもと、質が高く、事業者ニーズにマッチした船員の養成に取り組み、教育内容の高度化を図る。併せて、船内居住環境・労働環境の向上を通じた若年船員の雇用促進による年齢構造の改善や働き方改革による生産性の向上のための取組等を行う。また、アジア諸国における我が国企業の海外展開に資するよう現地の人材の育成等を図る。