201212 内航海運経営イノベーションとしての3PSのすすめ

森隆行:「内航海運経営イノベーションとしての3PSのすすめ」,『海運』,第1023号,pp.38-41,2012年12月

1.はじめに

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2.船舶管理の定義

(1)船舶管理、船舶管理業、船舶管理会社

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① 船舶管理

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② 船舶管理業と船舶管理会社

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【表1 船舶管理の構成要素と関連法規】

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3.船舶管理会社の歴史

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【図1 欧州大手船舶管理会社5社のフル管理・部分管理の比較】

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4.内航海運における船舶管理会社のモデルと例

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【図2 船舶管理の構図】

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【図3 内航海運における船舶管理会社の類型】

【表2 船舶管理アウトソーシングのメリット・デメリット】

5.船舶管理会社(3PS)の概念

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その意味で、筆者は、船舶管理会社を、3PS(Third Party Ship Management)事業者と名付ける。船舶管理のアウトソーシングは、内航海運における企業革新であり、企業戦略として前向きに取り組むものである。船舶管理業務のアウトソーシングにより非価格競争(品質)における競争優位の確立が可能となる。また、国際法の国内法制化により外航海運と内航海運の状況は相似的になると見込まれる。このことは、現在の外航海運の姿が近い未来の内航海運の姿である。つまり、内航海運においても船舶管理のアウトソーシングが一般的になることを意味する。

表2 船舶管理アウトソーシングのメリット・デメリット

オーナー 船舶管理会社 荷主
メリット

① コストを含む数値の明確化

② 保守を含む品質の向上

③ バイイングパワーの強化

④ システムの導入、利用

⑤ 環境、安全管理の強化への対応力

⑥ 人材教育、養成

① 事業の多角化、拡大

② 船主、オペレータとの強固な信頼関係の構築

③ 新規顧客(オーナー)の開拓が図れる

④ 船舶管理ノウハウの構築

⑤ 契約による経営の安定化

① 船舶品質、非価格面の競争力強化

② 効率的船舶管理
☞コスト競争力強化

③ 荷主の高度な要求にも迅速に対応が可能

デメリット

① 船舶管理のBlack Box化

② 船舶管理技術が残らない
☞船舶管理できる人材がいなくなる

③ 情報の漏えい

④ 船舶管理に関するコントロール機能の喪失の恐れ

① 先行投資(回収に時間と費用がかかる)

② SIなど多くの専門スタッフを抱える必要がある

③ 契約不履行など投資回収が出来ない恐れ

④ 無理な要求(値下げ要求など)

① オーナーの対荷主への航走力強化
☞運賃値上げ交渉など

国内景気低迷、デフレの継続により、内航船の運賃は低位安定傾向にある。こうした状況を背景とした海運信用不安から荷主の海運会社への与信審査がより厳格になっている。また、競争面での規制緩和が進む一方で安全、環境面では規制は強化されており、メジャーインスペクションやISMコードの取得なども内航海運にも求めるケースも増えている。これまで外航海運にしか適用されなかった国際条約の国内法化により、内航海運にも外航海運並みの制度が適用される方向にある。国内の中小オーナーがこうした動きに、独自に対応するのは困難である。加えて船員不足の問題もある。船舶の所有と管理を分離し、船舶管理業務を専門の船舶管理会社に委託することが最も有効な解決策である。船主業務における所有と管理を分離し、その船舶管理業務を船舶管理会社に委託することで、船員確保や国際条約への対応を含めた高い船質を保つことが可能と言えるが、必ずしも船舶管理業務の船舶管理会社への外部委託は進んでいない。その理由として、次のようなことが挙げられる。これらの問題点を取り除くことで内航海運に3PSの導入を促し、その結果として内航海運の活性化につながる。重要なことは、船舶管理業のアウトソーシング経営戦略として前向きにとらえることである。内航オーナーにも経営における戦略思考が求められている。

6.まとめ

国内景気低迷、デフレの継続により、内航船の運賃は低位安定傾向にある。こうした状況を背景にした海運信用不安から荷主の海運会社への与信審査がより厳格になっている。また、競争面での規制緩和が進む一方で安全、環境面では規制は強化されており、メジャーインスペクションやISMコードの取得なども内航海運にも求めるケースも増えている。これまで外航海運にしか適用されなかった国際条約の国内法制化により、内航海運にも外航海運並みの精度が適用される方向にある。
国内の中小オーナーがこうした動きに、独自に対応するのは困難である。加えて船員不足の問題もある。船舶の所有と管理を分離し、船舶管理業務を専門の船舶管理会社に委託することが最も有効な解決策である。
船主業務における所有と管理を分離し、その船舶管理業務を船舶管理会社に委託することで、船員確保や国際条約への対応を含めた高い船質を保つことが可能と言えるが、必ずしも船舶管理業務の船舶管理会社への外部委託は進んでいない。その理由として、次のようなことが挙げられる。これらの問題点を取り除くことで内航海運に3PSの導入を即死、その結果として内航海運の活性化につながる。
重要なことは、船舶管理業務のアウトソーシング経営戦略として前向きにとらえることである。内航オーナーにも経営における戦略思考が求められている。

表3 船舶管理業務アウトソーシングにおける問題点

船舶管理会社の品質の問題 国土交通省でガイドラインを作成した。一歩前進であるが、強制力がない。
船舶管理会社には法的制約がない 船舶管理会社には内航海運業法が適用されない
派遣業との関係において明確でない 一部のみの業務表記
導入のための方法論の不在 行政のサポート、インセンティブの創設が必要

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