法令に違反した船舶所有者等の公表(平成28年5月10日)

国土交通省は、船員法等の法令の遵守及び航海の安全の確保、船員災害の防止や注意喚起等を強力に行うため、運航労務監理官(船員労務官)による監査船舶等の付加ポイントが一定数以上となった船舶所有者等を公表しています。

公表の対象は、

  • 船員法第101条第1項に基づく「是正命令」に従わない船舶の船員法上の船舶所有者
  • 船員法等に違反し、累積ポイント(ポイント継続期間は最長2年間)が、120ポイント以上となった船舶あるいは事業場の船員法上の船舶所有者
  • その他、公表が必要と認められる船員法上の船舶所有者

です。

平成28年5月10日、2社が公表されました。

主な違反内容は、航海の安全の確保に関する違反等でした。

2社とも戒告処分(船員法第14条の4等)となりました。

ここで、船員法第14条の4は、

(航海の安全の確保)
第14条の4  第8条から前条までに規定するもののほか、航海当直の実施、船舶の火災の予防、水密の保持その他航海の安全に関し船長の遵守すべき事項は、国土交通省令でこれを定める。

です。また、第8条から第14条の3は、

(発航前の検査)
第8条  船長は、国土交通省令の定めるところにより、発航前に船舶が航海に支障ないかどうかその他航海に必要な準備が整つているかいないかを検査しなければならない。
(航海の成就)
第9条  船長は、航海の準備が終つたときは、遅滞なく発航し、且つ、必要がある場合を除いて、予定の航路を変更しないで到達港まで航行しなければならない。
(甲板上の指揮)
第10条  船長は、船舶が港を出入するとき、船舶が狭い水路を通過するときその他船舶に危険の虞があるときは、甲板にあつて自ら船舶を指揮しなければならない。
(在船義務)
第11条  船長は、やむを得ない場合を除いて、自己に代わつて船舶を指揮すべき者にその職務を委任した後でなければ、荷物の船積及び旅客の乗込の時から荷物の陸揚及び旅客の上陸の時まで、自己の指揮する船舶を去つてはならない。
(船舶に危険がある場合における処置)
第12条  船長は、自己の指揮する船舶に急迫した危険があるときは、人命の救助並びに船舶及び積荷の救助に必要な手段を尽くさなければならない。
(船舶が衝突した場合における処置)
第13条  船長は、船舶が衝突したときは、互に人命及び船舶の救助に必要な手段を尽し、且つ船舶の名称、所有者、船籍港、発航港及び到達港を告げなければならない。但し、自己の指揮する船舶に急迫した危険があるときは、この限りでない。
(遭難船舶等の救助)
第14条  船長は、他の船舶又は航空機の遭難を知つたときは、人命の救助に必要な手段を尽さなければならない。但し、自己の指揮する船舶に急迫した危険がある場合及び国土交通省令の定める場合は、この限りでない。
(異常気象等)
第14条の2  国土交通省令の定める船舶の船長は、暴風雨、流氷その他の異常な気象、海象若しくは地象又は漂流物若しくは沈没物であつて、船舶の航行に危険を及ぼすおそれのあるものに遭遇したときは、国土交通省令の定めるところにより、その旨を附近にある船舶及び海上保安機関その他の関係機関に通報しなければならない。
(非常配置表及び操練)
第14条の3  国土交通省令の定める船舶の船長は、第十二条乃至第十四条に規定する場合その他非常の場合における海員の作業に関し、国土交通省令の定めるところにより、非常配置表を定め、これを船員室その他適当な場所に掲示して置かなければならない。
② 国土交通省令の定める船舶の船長は、国土交通省令の定めるところにより、海員及び旅客について、防火操練、救命艇操練その他非常の場合のために必要な操練を実施しなければならない。

です。また、国土交通省令で定める事項とは、

船員法施行規則
(航海当直の実施)

第3条の5  次の各号に掲げる船舶以外の船舶の船長は、航海当直の編成及び航海当直を担当する者がとるべき措置について国土交通大臣が告示で定める基準に従つて、適切に航海当直を実施するための措置をとらなければならない。
一  平水区域を航行区域とする船舶
二  専ら平水区域又は船員法第一条第二項第三号の漁船の範囲を定める政令 (昭和三十八年政令第五十四号)別表の海面において従業する漁船
(巡視制度)
第3条の6  第三条の三第一項第一号に掲げる船舶の船長は、船舶の火災の予防のための巡視制度を設けなければならない。
②  前項に定めるもののほか、同項の船舶のうち船舶設備規程 (昭和九年逓信省令第六号)第二条第四項 のロールオン・ロールオフ旅客船の船長は、船舶防火構造規則 (昭和五十五年運輸省令第十一号)第二条第十七号の二 のロールオン・ロールオフ貨物区域若しくは同条第十八号 の車両区域における貨物の移動又は当該区域への関係者以外の者の立入りを監視するための巡視制度を設けなければならない。ただし、当該区域について船舶設備規程第百四十六条の四十六第一項 の規定による監視装置を備えている場合又は同項 ただし書の規定により当該監視装置を備えることを要しないこととされている場合は、この限りでない。
(水密の保持)
第3条の7  船長は、次に掲げるところにより、船舶の水密を保持するとともに、海員がこれを遵守するよう監督しなければならない。
一  甲板間における貨物倉を区画する水密隔壁に取り付けた水密戸及び甲板間における貨物倉を区画する甲板に取り付けたランプは、発航前に水密に閉じ、航行中は、これを開放しないこと。
二  機関室内の水密隔壁にある取外しの可能な板戸は、発航前に水密を保つよう取り付け、航行中は、緊急の必要がある場合を除き、これを取り外さないこと。
三  船舶区画規程 (昭和二十七年運輸省令第九十七号)第五十条第一項 の工事用の出入口に設ける水密すべり戸は、発航前に水密に閉じ、航行中は、緊急の必要がある場合を除き、これを開放しないこと。
四  船舶区画規程第百二条の十一第一項第一号 の水密戸及び昇降口の水密閉鎖装置は、発航前に水密に閉じ、航行中は、通行のため必要がある場合を除き、これを開放しないこと。
五  船舶区画規程第五十四条 の水密すべり戸は、航行中は、旅客の通行その他船舶の運航のため必要がある場合を除き、これを開放しないこと。旅客の通行その他船舶の運航のため開放したときは、直ちに閉じ得るよう準備しておくこと。
六  前五号以外の水密隔壁に取り付けた水密戸及び漁船の最上層の全通甲板下の船側の開口であつて、船内の閉囲された場所に通じるもの(舷窓を除く。)は、発航前に水密に閉じ、航行中は、作業又は通行のため必要がある場合を除き、これを開放しないこと。作業又は通行のため開放したときは、直ちに閉じ得るよう準備しておくこと。
七  貨物を積載する場所にある舷窓その他航行中に近寄ることが困難な場所にある舷窓及びそのふたは、発航前に水密に閉じ、かつ、錠前その他の開くことを防止するための装置(以下「錠前等」という。)を付すべきものにあつては、施錠し、航行中は、これを開放しないこと。
八  船舶区画規程第五十八条第二項 の舷窓の下縁が発航前の喫水線の上方一・四メートル(満載喫水線規則 (昭和四十三年運輸省令第三十三号)別表第一の熱帯域又は熱帯季節期間における季節熱帯区域に船舶があるときは、一・一メートル)に船舶の幅の千分の二十五を加えた距離に最低点を有する隔壁甲板に平行な線より下方にあるときは、当該舷窓のある甲板間のすべての舷窓を発航前に水密に閉じ、かつ、施錠し、航行中は、これを開放しないこと。
九  外板の開口で垂直方向の損傷範囲を制限する甲板より下方にあるもの(第七号及び前号の舷窓を除く。)は、発航前に水密に閉じ、かつ、錠前等を付すべきものにあつては、施錠し、航行中は、当該開口の開放が船舶の安全性を損なう状況にない場合であつて、船舶の運航のため必要があるときを除き、これを開放しないこと。
十  載貨扉は、発航前に水密に閉じ、かつ、安全装置を作動させ、航行中は、これを開放しないこと(次に掲げる場合を除く。)。
イ 船舶が離着岸する場合であつて、当該載貨扉が船舶の接岸中操作するに適しない構造のものであるために、当該載貨扉を開放する必要があるとき。
ロ 船舶が安全に錨泊し、かつ、当該載貨扉の開放が船舶の安全性を損なう状況にない場合であつて、旅客の乗降その他船舶の運航のために、当該載貨扉を開放する必要があるとき。
十一  舷門、載貨門その他の開口で隔壁甲板より下方にあるものは、発航前に水密に閉じ、航行中は、これを開放しないこと。
十二  灰棄て筒、ちり棄て筒等の船内の開口で隔壁甲板より下方にあるものは、使用した後直ちにそのふた及び自動不還弁を確実に閉じること。
②  次の各号に掲げる船舶については、それぞれ当該各号に定める規定は、適用しない。
一  船舶区画規程第二編 の適用を受ける船舶(第三号において「特定旅客船」という。)以外の船舶前項第三号、第五号及び第十号
二  船舶区画規程第三編 、第四編又は第五編の適用を受ける船舶(次号において「特定貨物船等」という。)以外の船舶前項第四号
三  特定旅客船又は特定貨物船等である船舶以外の船舶前項第八号、第九号、第十一号及び第十二号
③  第一項第七号及び第八号の舷窓並びに同項第九号の開口のかぎ又は暗証番号その他の解錠に必要な情報は、船長が保管又は管理しなければならない。
第三条の八  旅客船の船長は、国内各港間のみの航海を行なう場合を除き、水密戸、水密戸に附属する表示器その他の装置、区画室の水密を保つための弁及び損傷制御用クロス連結管の操作用弁を毎週一回点検し、かつ、主横置隔壁にある動力式水密戸を毎日作動しなければならない。
(非常通路及び救命設備の点検整備)
第3条の9  船長は、非常の際に脱出する通路、昇降設備及び出入口並びに救命設備を少なくとも毎月一回点検し、かつ、整備しなければならない。
②  前項に定めるもののほか、船長は、次の各号に掲げる救命設備については、それぞれ当該各号に定めるところにより少なくとも毎週一回点検しなければならない。
一  救命艇等及び救助艇並びにそれらの進水装置(第三号に掲げるものを除く。) 目視により点検すること。
二  救命艇等及び救助艇(国内航海船等に備え付けられているものを除く。)の内燃機関 始動及び前後進操作を行うことにより点検すること。
三  旅客船及び漁船以外の船舶(国内航海船等を除く。)に備え付けられている救命艇(船尾からつり索を用いることなく進水するものを除く。)及びその進水装置 当該救命艇を格納位置から移動することにより点検すること。
四  第三条の三第五項第二号の信号を発する装置 使用することにより点検すること。
(旅客に対する避難の要領等の周知)
第3条の10  船長は、避難の要領並びに救命胴衣の格納場所及び着用方法について、旅客の見やすい場所に掲示するほか、旅客に対して周知の徹底を図るため必要な措置を講じなければならない。
(船上教育)
第3条の11  第三条の三第一項各号に掲げる船舶の船長は、海員が当該船舶に乗り組んでから二週間以内に当該船舶の救命設備及び消火設備の使用方法に関する教育を施さなければならない。
②  前項の船舶の船長は、海員に対し、当該船舶の救命設備及び消火設備の使用方法並びに海上における生存方法に関する教育を少なくとも毎月一回(国内各港間のみを航海する旅客船以外の旅客船においては、少なくとも毎週一回)施さなければならない。
③  前項の教育のうち救命設備及び消火設備の使用方法に関する教育は、二月以内ごと(旅客船である特定高速船にあつては、一月以内ごと)に当該船舶のすべての救命設備及び消火設備について施されなければならない。
④  第一項の船舶の船長は、海員に対し、法第十四条の三 に規定する非常配置表により割り当てられた消火作業に関する教育を施さなければならない。
⑤  前各項に掲げるほか、第一項の船舶の船長は、海員に対し、当該船舶の火災に対する安全を確保するための教育を施さなければならない。
(船上訓練)
第3条の12  第三条の三第一項各号に掲げる船舶の船長は、海員が当該船舶に乗り組んでから二週間以内に当該船舶の救命設備及び消火設備の使用方法に関する訓練を実施しなければならない。
②  前項の船舶の船長は、海員に対し、進水装置用救命いかだの使用方法に関する訓練を少なくとも四月に一回実施しなければならない。
③  第一項の船舶の船長は、海員に対し、法第十四条の三 に規定する非常配置表により割り当てられた消火作業に関する訓練を定期的に実施しなければならない。
(手引書の備置き)
第3条の13  第三条の三第一項各号に掲げる船舶の船長は、当該船舶の救命設備の使用方法、海上における生存方法及び火災に対する安全の確保に関する手引書を食堂、休憩室その他適当な場所に備え置かなければならない。
(操舵設備の作動)
第3条の14  二以上の動力装置を同時に作動することができる操舵設備を有する船舶の船長は、船舶交通のふくそうする海域、視界が制限されている状態にある海域その他の船舶に危険のおそれがある海域を航行する場合には、当該二以上の動力装置を作動させておかなければならない。
(自動操舵装置の使用)
第3条の15  船長は、自動操舵装置の使用に関し、次の各号に掲げる事項を遵守しなければならない。
一  自動操舵装置を長時間使用したとき又は前条に規定する危険のおそれがある海域を航行しようとするときは、手動操舵を行うことができるかどうかについて検査すること。
二  前条に規定する危険のおそれがある海域を航行する場合に自動操舵装置を使用するときは、直ちに手動操舵を行うことができるようにしておくとともに、操舵を行う能力を有する者が速やかに操舵を引き継ぐことができるようにしておくこと。
三  自動操舵から手動操舵への切換え及びその逆の切換えは、船長若しくは甲板部の職員により又はその監督の下に行わせること。
(船舶自動識別装置の作動)
第3条の16  船舶設備規程第百四十六条の二十九 の規定により船舶自動識別装置を備える船舶の船長は、当該船舶の航行中は、船舶自動識別装置を常時作動させておかなければならない。ただし、当該船舶が抑留され若しくは捕獲されるおそれがある場合その他の当該船舶の船長が航海の安全を確保するためやむを得ないと認める場合又は当該船舶が航海の目的、態様、運航体制等を勘案して船舶自動識別装置を常時作動させることが適当でないものとして国土交通大臣が告示で定める船舶に該当する場合については、この限りでない。
(船舶長距離識別追跡装置の作動)
第3条の17  船舶設備規程第百四十六条の二十九の二 の規定により船舶長距離識別追跡装置を備える船舶の船長は、当該船舶の航行中は、船舶長距離識別追跡装置を常時作動させておかなければならない。ただし、当該船舶が抑留され若しくは捕獲されるおそれがある場合その他の当該船舶の船長が航海の安全を確保するためやむを得ないと認める場合は、この限りでない。
2  前項ただし書の規定により、船舶長距離識別追跡装置を停止した場合は、遅滞なく、海上保安庁に通報しなければならない。
(船橋航海当直警報装置の作動)
第3条の18  船舶設備規程第百四十六条の四十九 の規定により船橋航海当直警報装置を備える船舶の船長は、当該船舶の航行中は、船橋航海当直警報装置を常時作動させておかなければならない。

です。船員を雇用する方は、上記を確実に行うようにしてください。

参考サイト

法令に違反した船舶所有者を公表します(国土交通省 海事局)

船員法

船員法施行規則

  • このエントリーをはてなブックマークに追加