201203 内航海運グループ化の魅力とそのゆくえ

羽原敬二:「内航海運グループ化の魅力とそのゆくえ」『海運』,2012年3月号,pp.18-21,2012

内航海運のグループ化に関する展望

内航海運業界が現在直面し、または抱えている共通の課題として、① 物流の効率化と業務の効率化、② 船舶の老朽化と効率性・安全性・環境性能に優れた船舶の代替建造の着実かつ計画的な推進、③ 船員不足の深刻化とハード・ソフト両面における安全性の確保、などに対処するためには、中小零細の内航事業者がグループ化し、共通する業務の一元化と船舶管理会社への共同外注化による効率化と質的向上によって問題の解決を図ることが最も適切な手段であるといえる。

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これからの内航海運ビジネスモデルの推進

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内航海運事後湯者による船舶管理事業の普及・促進策

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・新規船員資格取得促進助成金

海技士や危険物取扱などの新人船員に必要な資格の取得費用の1/2を助成する制度で、上限は1人あたり15万円。

・船員計画雇用促進助成金

新人船員を試行雇用(最大6ヶ月)した場合に助成する制度で、船員教育機関卒業生は1人あたり4万円×6ヶ月=24万円で、その他は、1人あたり6万円×6ヶ月=36万円であり、新人船員1人あたりの助成額は最大36万円である。

グループ化した内航海運事業者への支援が重点化され、零細な一杯船主がグループ化することによって、支給さえる助成額は、新人船員1人あたり最大51万円となり、船員の計画的な確保・育成にも取り組みやすくなる。

さらに、技能訓練事業としては、船員未経験者の就職を促進するため、海技士資格を取得するための技能訓練を実施している。

グループ化による将来の事業展開の可能性

(1)内航新人船員の育成

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内航海運の需要は、荷主の生産活動と物流活動の結果としての派生需要である。自らが需要を創り出せないため、価格交渉力も弱い。これまで大量の減船を行って船舶量の需給バランスの改善を図ってきたが、依然として中小零細事業者が圧倒的に多く、長きにわたり厳しい経営状態に置かれている。これらの結果、多くの内航海運事業者が新規採用を行ってこなかったことに加え、自社単独による船員育成が困難な状況にある。小型船舶の場合には、新人船員育成を目的とした実習を行う予備船員質の確保が難しいため、物理的に船員育成ができない事業がある。したがって、一般企業のように企業内研修によって安定的に社員を育成する条件が、内航海運には構造的に整備されていない。そこで、多数の内航船主が参加し、共同で船員育成の仕組みを構築することが、必要とされる。

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(2)内航船員の実践的な育成システムの構築

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(3)内航船舶管理ガイドラインの策定

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しかしながら、内航分野の船舶管理会社が行うべき業務については、これまで正確な定義や望ましい事業内容が体系的に確立されていなかった。そのために、利用者側から見て、どのような場合に、どのような目的で、どのような会社を活用すべきかなどに関して、十分な情報が提供されず、船舶管理会社の活用が進まない最大の原因ともなっていた。

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内航海運は、わが国経済活動の基幹輸送の重責を担っており、運送契約を締結している荷主からの積み荷の多くが国民経済にとって必要不可欠な重要物資である。この輸送責務と荷主の負託に応えるために最も重要なことは、積荷、船舶、および船員の安全確保であり、認識すべき最も基本的な要件である。

おわりに

日本ほど大規模な内航海運事業を有している国は世界中にない。内航海運は、治安維持のためにも、災害時の救援物資輸送を担うためにも、海洋国日本の安全保障の前提として、カボタージュ堅持のために必要なモードである。これから発生する災害および有事の際の支援活動の準備を着々と実施していることを知っている国民や政治家が、一体どのくらいいることであろうか。今こそ一致団結して、有力な内航海運ビジネスモデルの構築と活用が、本格的に推進されるべき時である。(了)

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