『座談会 ISMは内航船社に何をもたらすか』,西村充弘・大畑宗市・本山博規・山田洋,海運,No.897,pp.8-17,2002.6.
抜粋
山田 洋(p9):私どもの関係船舶は最大で699総トンで、499総トン(千トン積)が中心で乗組員が6~5人が大半です。システム作りの中で、例えDOCを取得したとしてもこの乗組員数で運用が可能であるか、従来、内航各社はそれぞれ運航管理マニュアルを所持して経験と勘をプラスして運航してきた世界にある日突然「国際ルールに添って船舶を運航管理して下さい。それがあなた方の生活を守る手段の第一歩です」と大声で言われても、あまりにも今までとのギャップが大きく、また漁船関係からの転出者が多い内航世界ではなかなか馴染まない中で運航しているのが実情ですね。なにせ書くことが嫌で船員になったと言う人が多い世界ですから。
山田(p16):何年も前から船員不足は叫ばれて来た訳でしょう。今は減船で辞めた船員さんで何とか稼働していますが、これから補充は不可能になるでしょう。今年はまだ減船があると判断しますが、この淘汰が終わり船員がはめ込まれた時、本当の船員不足に直面するでしょう。
西村 充弘(p16):船社と用船に分けると船社はまだまだ若い人が来てもらえます。特に以前の海員学校は外航船の部員養成校でしたが、いまは内航海運に求職先を絞ってきていますし、それに内航船社の経営も厳しいですから、オペレーターとしてはまだ買い手市場ですね。一方、オーナーさんは新卒者を4、5年掛けて、共育・訓練して一人前にする余裕はありません。だから、いま官・民で即戦力の船員をいかにして育てるのかの方策に取り組んでいるわけです。やはり、オーナーさんの船には若い人は来ない、雇用したくても雇用できないということで、必然的にリタイヤされた方をテンポラリーに雇って配乗するのが現状であろうと思います。
大畑 宗市(p16):我々のような平水船では船員は比較的雇用し易いんです。陸上から通えるメリットがありますから。新卒者は一、二年我慢すると一人前になるんですが、その余裕がないんです。予備員として一人前じゃないから、四人の乗組とプラス0.5人として乗ることになりますが、その0.5人の余裕がないんです。当然、最初から即戦力として4人乗りの船を3人でやれるという即戦力の人材を乗せようとします。今でも若い人を雇用し育てなければいけないということは分かっていても、現実には無理です。先ほど山田さんが言われたように若い人を雇用できるような運賃、将来船主がやっていける運賃体系でないと前に進まないですね。
西村 充弘(p16):大畑さんが言われたように乗組員のみなさんは高齢化して、自然減しています。いま船腹過剰で船が減っているので、余剰船員が生じ船がなんとか動いているという状況ですね。