フロン排出抑制法について

さて、船舶管理に関係する皆さんは、平成27年4月から「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」(フロン排出抑制法)が施行されているのはご存知ですか?
この法律により、地球温暖化とオゾン層破壊の原因となるフロン類(CFC、HCFC、HFC)の排出抑制のため、業務用のエアコン・冷凍冷蔵機器の管理者(所有者など)に機器及びフロン類の適切な管理が義務付けられました。
このフロン排出抑制法について、日本内航海運組合総連合会は、その概要や内航船舶に適用する際の運用等について、関係機関(国土交通省、環境省、経済産業省)と協議を重ね、平成28年6月22日、『フロン排出抑制法について』(日本内航海運組合総連合会 環境安全委員会事務局)を関係者に通達しております。

対象機器

フロン排出抑制法において、船舶における対象品としては、第一種特定製品(業務用冷凍空調機器)となり、エアコンディショナー、冷蔵機器及び冷凍機器のうち、業務用の機器(一般消費者が通常生活の用に供する機器以外の機器をいう)であって、冷媒としてフロン類が充塡されているものをいいます。

管理者について

原則として、管理者は、当該製品の所有権を有する企業・法人です。ただし、例外として、契約書等の書面において、保守・修繕の責務を所有者以外が負うとされている場合は、その企業・法人が管理者となります。
この基本的な考え方は船舶上の機器についても変わりはなく、当該製品を所有する船舶所有者
又は裸傭船者が管理者と考えられます。(管理者としての申請、登録等は必要ありません)

管理者が取り組む措置

管理者が取り組まなければならな措置として、まず、第一種特定製品(業務用冷凍空調機器)の適切な場所への設置・設置する環境の維持保全があります。

次に、機器の点検(簡易点検、定期点検)の実施が必要とされます。

【簡易点検】とは、全ての第一種特定製品(業務用冷凍空調機器)が対象で、以下の項目があります。

  • 異音、外観(配管含む)の損傷、腐食、錆び、油にじみ、霜付き等の徴候などの目視による点検(冷蔵機器及び冷凍機器であれば、庫内温度の確認も必要)
  • 実施者の具体的な限定なし、機器の設置環境や点検をする人の技術等に応じて可能な範囲で行うこと
  • 点検頻度は3 か月に1 回以上
  • 点検記録の作成・保存(製品の基礎情報、実施日など)

また、【定期点検】とは、第一種特定製品の圧縮機電動機の定格出力が、7.5 kW以上の機器が対象となり、以下の項目があります。

  • 機器の異音、外観検査、ガス検知器などによる冷媒漏洩検査
  • 点検方法等に関する「十分な知見を有する者」が自ら行うか点検に立ち会うこと
  • 点検頻度は、①7.5 kW以上の冷凍冷蔵機器、50 kW以上の空調機器は、1 年に1 回以上、② 7.5 kW以上50 kW未満の空調機器は、3 年に1 回以上、です。
  • 点検記録の作成・保存(製品の基礎情報、実施日、実施者の氏名、実施内容及びその結果など)

もう一つ、漏洩防止措置及び修理しないままの充塡の原則禁止があります。

フロン類の充塡回収作業について

① 今般の法改正により、管理者は第一種特定製品の整備に際して冷媒としてフロン類を充塡する必要があるときは【第一種フロン類充塡回収業者】(陸上専門業者)に委託することとなります。
② 船舶の航行中に機関士が充塡する場合、船舶を管理する事業者は所在地を管轄する都道府県へ【第一種フロン類充塡回収業者】として登録が必要となります。充塡の際には、十分な知見を有する者の確保(7.をご参照)が必要です。(機関士は十分な知見を有する者である必要があります)
従って、上記①又は②以外では、フロン類の充塡・回収ができなくなりました。

充塡・回収登録に際しての回収装置の所有

登録要件として、回収装置を所有している必要があります。充塡が可能な圧縮機器では、充塡ボンベの代わりに空ボンベを接続することで回収も可能であり、船舶に限り、圧縮機器と空ボンベで回収装置としての機能を有すると解されるとの見解が環境省及び経済産業省から示されました。

定期点検・充塡に係る十分な知見を有する者の確保

「十分な知見を有する者」とは、フロン類の性状、冷凍空調機器の構造、運転方法等の知識を有している者。具体的には、定期点検にあっては直接法・間接法による点検が、充塡にあっては充塡前の漏えい確認が適切かつ確実に実施できる必要があります。
海技士(機関)の免状保有者が「十分な知見を有する者」と認定されるためには、一部の知識(法体系等の知識)を補完する講習が必要との見解が環境省及び経済産業省から示されたそうです。
これまで海技士(機関)の免状保有者が実務を行ってきたことに鑑み、できる限り簡易な方法での講習(通信教育等)を関係機関で調整中とのことです。

フロン類算定漏えい量の報告

管理者が管理する船舶、建物等での業務用冷凍空調機器からのフロン類算定漏えい量につい
て、法人単位で報告するものです。(算定漏えい量は、フロン類を追加充塡した総量を二酸化
炭素換算した量を漏えい量とみなします)一年間(4 月1 日~翌年3 月31 日)に二酸化炭素換算で【1,000 t-CO2】以上の漏えいがある場合は、国土交通大臣への報告が必要となります。
フロン類の種類によって二酸化炭素換算した算定漏えい量は異なりますので、参考として各
フロン類の換算した漏えい量の表を添付しています。(換算表は年度によって変わり得ますの
で、毎年度環境省等のホームページで確認が必要です)

罰則として

  • フロン類をみだりに放出した場合:1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • 機器の使用・廃棄等に関する義務について、都道府県知事の命令に違反した場合:50万円以下の罰金
  • 算定漏えい量の未報告・虚偽報告の場合:10万円以下の過料

詳細資料等

フロン排出抑制法に関する詳細な内容や手引き・マニュアル等は、以下のホームページをご参照ください。
環境省地球環境局地球温暖化対策課フロン対策室

フロン排出抑制法ポータルサイト

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